第193話 康太は冒険者になる:その42「神器争奪戦6:古のものとの交流3!」
「ヒラムさんが起きられた理由は良く分かりました。ありがとうございました。他に聞きたいことがある人は居ますか?」
俺ばかり聞いたら悪いので、他の人に質問を促した。
というか、なんかヤな予感してきたんだよね。
もしかして、ヒラムさんが注目しているのは俺?
だって、ヒラムさんの視線が妙に俺に向くんだもの。
「では、アタクシから。アタクシは、アメリカ調査隊のクロエ・リドルと申します。ヒラム様、この部屋は時間・空間制御がなされているのでしょうか? 明らかに外側から見た大きさよりも部屋の大きさが圧倒的に大きいのですが。また遺物の損傷劣化がほぼ見られません」
クロエさんがヒラムさんに聞く。
恐れをしらないというか、アニメ「堕天度」が高い上に科学重視派のクロエさん。
神話生物でもコミュニケーションが出来るならと、怖がらずに自分の研究分野に関連しそうな事を聞く。
なぜか日本語で聞いているけど、もしかして自国の研究者にあまり聞かせたくないのだろうか?
〝リドルと申すのだな。その方、その身に、……、いや今は言うまい。リドルの疑問だが、言う通りここには空間制御と収納物の保護用の時間固定が行われている。一級の神器だと、それ自体に時間固定があらかじめかかっておるがな〟
ふむ、じゃあ神剣のオリジナルは壊す事が不可能に近いんだ。
「ありがとうございました。アタクシからは以上ですわ」
クロエさんはヒラムさんに丁寧な挨拶をした後、俺に向かってきてひそひそ声で言う。
「ヒラム様ってご理解が早くて助かりますわ。それと日本語でお話したのは、貴方方へのお礼とご褒美です。ウチの研究員って全員日本語分かりますから。海兵隊はどうか知りませんけど」
そう言ってにこやかな表情で俺から離れるクロエさん。
うーん、俺の思考って表情からダダ漏れなのかな?
それとも「サーちゃん」から聞いたのかな?
「では、私から。私は日本国立考古学研究所の金子と申します。ヒラム様、この遺跡は貴方方と人間が協同して暮らしていた都市なのでしょうか? 建築物が貴方方用と人間用に分けられているように見えましたので」
〝カネコよ。ソナタの想像通りだ。この遺跡は南極に我らが移住してから建設され始めたものだ。氷河期が進行して地上では人間はおろか我らでも暮らす事が厳しくなった。そこで空間制御を用いて山脈自体を南極から分離したのだ〟
それで衛星写真とかから狂気山脈は見えないんだね。
〝そして、地下に都市を作ったのだが他の拠点とあまりに遠い。そこで作ったのがソナタ達も通ったゲートだ。地球全土に展開させており、各地点との交流を行っていた。しかし、我らには誤算があったのだ。それがショゴスの反乱だ。この地下都市建設にしょうがなく封印していたショゴスを呼び起こして使っておったのだが、いつしか彼らは更なる進化を遂げて高度な思考能力を持つようになったのだ。そして邪な人間と手を組み、我らに反乱を起こしたのだ〟
確か、何回もショゴスは「古のもの」に対して反乱を起こし、ほぼ全て封印されたと聞く。
「古のもの」は高度な科学力を持つものの、作業には向かない身体だから数多くの使役生物を作成して、作業を行わさせてきた。
ショゴスはその一例だし、人類創生にも一部絡んでいるとも。
〝ショゴスの反乱で都市機能の大半は奪われた。そして生き残った我らと人間は、この建物、ジグラットまで追い込まれたのだ〟
あら、これがオリジナルのジグラットなのね。
〝この場所を守護せねばならぬ我を除いた者達は、そこにある転送門から各所へと逃げ延びたのだ。彼らの末裔が後のバビロニア、アトランティス、ムー等の高度文明を作ったと聞く〟
あの「転送門」って「古のもの」由来なのね。
となると、デーモン関係が使っているのも、宇宙のどこかにいた「古のもの」の遺跡を利用したのかもね。
〝その際に逃げ遅れたのが、コウタ達が葬ってくれた我が同胞と人間の娘だ。彼女は、我と最初に話した幼子の末裔なのだ。そう、ナナ。彼女はキミに良く似ていたよ〟
ヒラムさんは、ナナの頭を触手で優しく撫でる。
「そうなんだ。なんかボク、アノ子を見ていて悲しくなったし、とっても気になったんだ。ボクとは何か縁があるのかもね」
ナナはにっこりと笑いながらヒラムさんを見上げる。
ヒラムさんの目はとても優しそうな感じがする。
「あーん、おねえちゃんだけじゃなくて、わたしもなでなでしてぇ」
リタちゃんはヒラムさんにナデナデを要求する。
〝はいはい。もうソナタらには敵わぬよ〟
ヒラムさん、しょうがないふうにリタちゃんも触手でナデナデしている。
口ぶり(?)は嫌そうだけど、ナナ相手同様優しい目でリタちゃんを見ている。
「ナナ、リタちゃん。良かったわね。ヒラム様、ウチの娘達を大事にして頂きありがとうございます。私は岡本真由子と申します。母として感謝します」
マユ姉ぇは丁寧にヒラムさんに挨拶をする。
〝マユコ、ソナタの娘達は実に素晴らしい。今後ともこの穢れ無き魂を守ってやってくれ。これは我からの頼みだ〟
「はい、この命に代えましても。ヒラム様にお願いされる以前に母親として娘の成長を見守るのは当たり前ですもの」
にっこりと「ヒマワリ」の笑顔をヒラムさんに返すマユ姉ぇ。
〝すまぬ、いらぬ心配であったな。我らには人間の親子という感覚がいまひとつ分からぬ時があるのだ。ソナタの思いを邪魔してはいかぬな〟
「いえいえ、種族が異なれば違いはありますもの。でもこうやってお話して、その違いをお互いに理解できれば何も問題はありませんから」
ヒラムさんの謝罪を笑顔で返すマユ姉ぇ。
マユ姉ぇの言う通り、お互いの違いを理解できれば争いは起きないよね。
周囲の海兵隊員の方々も先ほどまでの恐怖と警戒の表情を崩し、今はナナ達とヒラムさんの交流を暖かく見守ってくれてる。
「康太坊、まったくお前の家族は規格外のお人好しだな」
「ええ、それは俺も自慢出来ます」
グレイさんが凄みのある笑顔で俺達に微笑む。
その時、俺は室外に強烈な殺気を感じた。
「ナナ、ヒラムさんを守って!」
俺の叫び声と共にヒラムさんへ目掛けて室外から魔力弾が飛ぶ!
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