第191話 康太は冒険者になる:その40「神器争奪戦4:古のものとの交流1!」
「おい、ナナちゃん! どうしてソイツが俺達やキミに何もしないって言えるんだ? 何か証拠でもあるのかよ?」
グレイさんは部下達に問題を起こした海兵隊員を渡しながら、「古のもの」を庇うナナに聞く。
もちろんいつでもナナを助けられるように警戒しながら。
なお、問題の海兵隊員さんは、マユ姉ぇが預かって治療を開始した。
マユ姉ぇがナナを信用して、自分はSAN値が磨り減った兵士の治療をし始めたんだ。
なら何も問題は無い、ナナは大丈夫だろう。
俺は、戦闘形態を解除した。
チエちゃんもマユ姉ぇの様子を見て安堵したようだ。
「大尉、まずはナナの話を聞きましょう。それに『古のもの』サンに敵意が無いのは確かですよ。第一、普通こんな事をしている間にまずナナが襲われますから」
俺はグレイさんに落ち着くように話す。
「康太坊、本当に大丈夫なんだよな。オレはお前や真由子さんが泣くところは見たくないし、ナナちゃんが傷つくのはモット見たくないぞ!」
グレイさん、俺達が部下じゃないので危険な命令だす必要がないからか、かなり親身に心配してくれる。
「まーてぃんたいちょうさん、だいじょうぶだよ。おねえちゃんと このこ、さっきからおはなし してるよ。わたしも おはなししたけど、だいじょうぶだよ」
リタちゃんはグレイさんを安心させるように話す。
「うん、ボクさっきからこの子とお話しているの。この子の首見てあげて? 昨日葬った子の首にも同じ首飾りあったでしょ?」
よく見ると「古のもの」の首らしき球根状のものにネックレスが巻かれている。
簡素な作りだけど、間違いなく人間が作ったであろう物が。
そしてそれと同じ物が、昨日葬った「古のもの」と女の子の遺体の首にも巻かれていたことを俺は思い出した。
〝我の同胞を丁重に葬ってくれたのはソナタ達か。ならば、先ほどの無礼は見無かった事にしよう。そこなる少女の愛に感謝するのだな〟
強烈な念話が聞こえる。
それは「古のもの」から放たれていた。
「そんなに仰々しく話さなくてもいいよ。ボク、キミの事信じているし。だってキミも人間嫌いじゃないんでしょ。じゃないと、女の子とお揃いのネックレスを今もしていないよ」
ナナは「古のもの」の方を見ながら話す。
流石ナナというべきであろうか、「古のもの」とちゃんとコミュニケーションをしている。
〝おい、そう言うでない。我の威厳というものが無くなるではないか。これだから人間の少女は手に負えん〟
あれ?
「古のもの」がナナに困っている?
触手の動きが妙にうねうねしている。
外見は怖いんだけど、なんか動作が可愛いぞ。
「いいじゃないの。ボク、キミともお友達になりたいし。これでキミはボクの宇宙人友達第2号、いや今はリタちゃんは妹だから第1号だね」
「おねちゃんのおともだちなら、わたしとも おともだちだよね? おなじうちゅうから きたひとどうし、なかよくしようよ」
ナナに加えてリタちゃんが「古のもの」に寄り添って話す。
それにタジタジとする「古のもの」
〝おぬし達、我が怖く無いのか? 我はおぬしらなぞ簡単に殺せるのだぞ?〟
あ、その台詞聞くの2回目だ。
「『古のもの』殿、その2人を理詰めで説得するのはムダじゃ。ワシも以前同じ台詞言うたら無視されて、今では2人の姉じゃ。観念するのじゃぞ」
チエちゃんは笑いながら「古のもの」に近づき、触手に手を近づける。
「握手は分かるのじゃな? さて、ワシとも握手じゃ」
半ば強引に小さな掌を「古のもの」に近づけるチエちゃん。
しょうがなくそこに触手を近づける「古のもの」。
手を触れた瞬間、「古のもの」はピクっと体を震わせた。
〝お主、人間では無いのじゃな? そうか、理解したぞ。この2人の少女に捕まった時点で我の負けじゃな。さあ、人間達よ。何でも聞くが良い、我が答えられる範囲で答えよう〟
触手と羽を広げて無抵抗だというを示す「古のもの」
これを見たグレイさんは観念する。
「おい、康太坊。お前の妹達はスゴイな。人類以外でも味方にしちゃうんだから。そうか、それは今更か。チエちゃんもそうだもんな。はっはは!」
豪快に笑うグレイさんを見て、海兵隊の方々は戦闘体制を解除する。
「姉御、俺凄いものみたのかな?」
「そうね、私も信じられないかも」
タクト君とアヤメさんは、鳩が豆鉄砲食らったというような呆れ顔。
「もう今更だから感動も感心もしないのは、SAN値が削れているのかなぁ。シンミョウ貴方どう思う?」
「私としてはぁ、お友達が増えるのはイイ事だと思いますよぉ」
尼僧組は、もはや呆れるポーズすら放棄している。
「お姉ちゃん、私何見ているんだろう?」
「ウチに聞くなよ。叔母様一体何が起きているんですか?」
遠藤姉妹は、もう理解不能な様子。
「ウチの娘達って素晴らしいでしょ! ちゃんとお話できるのなら、姿形は関係無いのよ。はい、貴方。もっと精神を鍛えるのよ! 見た目だけで判断しちゃダメよ」
マユ姉ぇは治療の終わった兵士の背中をバーンと叩きながらナナ達の方へ歩み寄った。
海兵隊員のおにーさん、別の意味でマユ姉ぇを見て怖がっているのは気のせいか?
「吉井先生、一体何が?」
「金子先生、真由子さん達と一緒に居たら、こんなの日常茶飯事ですから慣れてくださいませ」
「ええ、先輩達は規格外ですものね」
吉井教授、もう説明すら放棄している。
コトミちゃんも呆れを通り越して、興味深い目で「古のもの」を見る。
クロエさん達アメリカチームはもっと理解不能らしい。
キリスト教的には、邪神や神話生物の存在は納得できないらしいからね。
まあ、クロエさんだけは、
「映画『ET』かしら? それとも『ナウシカ』?」
と、アニメオタクっぽい雰囲気で感動していたけど。
その身に「サーちゃん」を宿すクロエさんなら今更かもね。
「なんで、神話生物と仲良く出来るんだ? 私にはりかいふのーだぁ!」
フランツ君、完全に混乱している。
今までの教えを全否定する光景だもの、しょうがないよね。
でも、俺達の仲間でいるなら理解して欲しいな。
「ということですので、お話聞きましょう。『古のもの』サン、宜しくお願い致します」
俺は「古のもの」サンに頭を下げた。
後に俺は「狂気の山脈にて」を読み直して、ある一文に書かれていた事を納得した。
そこには「古のもの」について書かれていた。
「何であれ、彼らは人間だったのだ」と。
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