第182話 康太は冒険者になる:その31「遺跡攻略6:海兵隊、幼女達に困惑する!」
「一体、どういう事か、説明してくれるんだよなぁ」
米軍海兵隊武装偵察部隊第六武装偵察中隊の隊長さんが吼える。
そりゃ、幼女達に部隊全滅されましたでは、上に報告説明が出来ない。
怒るのも当たり前だ。
「まあ、そう怒るではないわい。比較的穏便に事を収めたのじゃから」
今、俺達は米軍の遺跡内ベースキャンプに来て、説明をしているところだ。
俺は、チエちゃんの御付兼保護者名義で隊長さんと面会中。
なお、騎士団の方々にはフランツ君と朧サンが対応中。
やっかいな師範代理だけ拘束したまま、他の方々は朧サン謹製八門遁甲迷宮内のサロンにて接待中。
鍛え上げられた執事としての能力を全開中との事。
まー、向こうは任せておきましょうか。
「どこが穏便だよ。フォース・リーコンを誰も殺さずに完全に無力化できる軍が世界の何処にいるんだ!」
隊長さん、Greyson Martin大尉は大声で叫ぶ。
なお、グレイさん日本の沖縄在住海兵隊部隊に長期間居たので、日本語は堪能。
今も態々俺達の為に日本語で話してくれている。
「ここにおるのじゃ! のう、ナナ殿、コトミ殿」
「えへへ、オジさん、ごめんね。ボク、手加減したんだけど、誰か怪我しなかった?」
「すいません、皆様には出来る限り怪我させたくなかったんですけど、大丈夫でしたか?」
幼女に紹介されて前に出てくる少女と娘。
「おい、マジかよ」
あっけに取られ、開いた口が閉まらないグレイさん。
そりゃ世界最強クラスの偵察部隊が女の子達に完敗するのは、想定外だろうね。
「すいません、隊長。もしかして私達は彼女たちに負けたのですか?」
日本語の聞き取りがやっとの副官さん、グレイさんに聞く。
「Yes! ああ、このお嬢さん方にウチのツワモノ共が完敗したんだよ」
もう呆れ顔のグレイさん。
「おう、案外簡単に信じたのじゃな? もう少し疑うと思うたのじゃが?」
チエちゃんは不思議そうな顔をする。
「だって、アレ見たら信じるしかないじゃないかよ!」
グレイさんの目線の向こうでは、ある意味恐ろしい光景が見えていた。
「あらぁ、もっと強い人居ませんかぁ」
マユ姉ぇ、米軍の人にオバサン発言されたのが気に食わなかったのか、勝負を挑んで、それからが阿鼻叫喚。
何人もの屈強な兵士達が、続々と宙を舞っている。
見た目、アラサーだし日本人だから実年齢は向こうには分からないはずなんだけど、ナナ達の母親って言ったからバケモノの母親=超バケモノと理解されたらしく、絶対すごい年齢だと思われたというのは、後にノされた兵士の方々から聞きました。
「おーい、ウチの相手もしてくれんのか?」
「おねえちゃーん、やり過ぎだよぉ」
アッチでは、カズミさんが出番が無かったストレス解消に大暴れ。
大した火傷じゃないけど、幾人もの兵士達が焦げて転がっている。
ただ、見た目幼女にやられたためか、幸せそうな顔で転がっているのは、恐ろしや。
「はい! 二連撃! で、ちょいと」
「姉御、すごーい!」
「うぉぉ!!」
アヤメさんはアヤメさんで、沢山のギャラリーを前に剣舞をしている。
今、床に立てた長さ1.5m直径15cmくらいの丸太を、居合いからの斜め切り上げ、逆袈裟切りで、切られたはずの丸太がそのままになっているのを、ちょいと指で押したところ。
すると、丸太が見事3つに分解したを見た兵士の方々が歓声を上げた。
アヤメさん、和風美人だから剣舞見せたら映えるんだよなぁ。
「いっくよ!!」
リタちゃんはエルフ耳さらして、光のダンスショー中。
沢山のお兄さん方が、リタちゃんの可愛さに全員撃墜されている。
「ま、まあ信じてくれたのなら助かります。俺達としては米軍の方々と喧嘩する気は毛頭ありませんから」
俺はマユ姉ぇ達バケモノ共の所業を見ないようにして、グレイさんに話す。
なお、カレンさん達は吉井教授の警護で、米軍が連れてきた学術調査隊との面談に同行中。
「しかし、何でお前たちは敵対していたはずの騎士団とやらを助けたんだ? オレ達と喧嘩しないのは分かるが、敵を助ける意味が分からん」
グレイさんは俺達を不思議そうに見る。
軍人さんの思考としては、それが普通だよね。
「それは言うたじゃろ。ワシらは『お人好しのお節介焼き』じゃと。このコウタ殿を筆頭にワシらは人命優先を通してきたのじゃ。それが結果として、これだけのツワモノが集う仲間になったのじゃ」
チエちゃんは、グレイさんを大きな目でじっと見る。
「そりゃ、甘いといえば甘いのじゃ。じゃが、出来る事をせずに無視放置するのは気分が悪いのじゃ。まずは話しおうて、それでもダメというのなら戦う事はやむを得まい。その中で命のやり取りをするのもしょうがないのじゃ。しかし、話し合いも無しに戦うのは違うのじゃ!」
「ほう、それが大量殺人をしたテロリスト相手でもか?」
グレイさんは、説法をしたチエちゃんに凄む。
「テロなぞして向こうが話す気が無いのなら、しょうがないのじゃ。被害が出る前に倒すのじゃ! まあ、簡単には殺さぬがな。司法でみっちり調べて、その上で死刑でも何でもするのがイイのじゃ! そういう悪党は、殺してくれというまで、とことん虐めるに限るのじゃ!」
「俺も基本同意見です。簡単に殺して、己が犯した罪から逃げられては、被害者の無念は消えません。また次の犯罪者発生を防ぐ意味でも、事件を完全に調査する必要はありますし。死んだ人間は情報を吐きません。あと、悪党は罪の意識に苛まれてから死んで頂かないと」
俺はチエちゃんに続いて意見をグレイさんに述べた。
グレイさんは、その傷だらけの強面で俺達を睨む。
しかし、次の瞬間一転して破顔する。
「うははは! オレ相手によく言った! ボウズ、それにお嬢ちゃん、己の信じる道を進むがいい! 第一、お嬢ちゃん達が手加減してくれなかったら、オレ達こうやって話せていなかったんだ。そういう意味ではセイカイだよ。うわははは!」
さっきまでの強面とは大違い、笑いが止まらないグレイさん。
「あら、隊長が気に入ったんですね。少年、少女、良かったですね」
副官の方が俺達を褒めてくれる。
けど、やっぱり白人種から見たら日本人は幼く見えるんだよね。
「すいません、俺これでも今年24なんですけど」
「Oh Sorry.ごめんなさい、日本人の年齢は分からなくて」
「まー、ワシの年齢は絶対誰も当てられないがのぉ!」
ここで調子に乗るチエちゃん。
後の展開が簡単に想像できるんだよね。
「じゃあ、お嬢ちゃんは一体幾つなんだい? 凄く賢いけど、小学生だよな。えらく古い言い方しているし、妙に偉そうだけど」
グレイさんは一般的な答えを言う。
うん、それが当たり前。
「ぶぶー! ハズレじゃ! ワシは、御歳1000歳越えの乙女デーモンじゃぁぁ!」
そして悪魔形態に変化するチエちゃん。
「うわぁぁぁ!!!!」
はい、毎度の事件発生しましたとさ。
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