第178話 康太は冒険者になる:その27「遺跡攻略2:騎士団への強襲その1!」
「さて、こっちから騎士団とやらのベースキャンプを襲うのじゃ。襲うものは襲われるのじゃ! フランツ殿、ここからお主がおったベースキャンプは遠くはないのじゃろ?」
「ああ、ここからなら2km程度だと思う」
「ふむ。では、ここはワシと母様、カレン殿、コウタ殿で強襲じゃ! フランツ殿も付いてくるのじゃ! 残りの皆は、ここで待っておるのじゃ。ワシの作った別位相空間で待機しておるのじゃよ。朧よ、後は頼むのじゃ!」
「御意!」
チエちゃんはノリノリ。
どうやら「暴れん坊」な将軍様が出来るのが嬉しいらしい。
「あー、イイなぁ、チエ姉ぇ、コウ兄ぃ! ボクも暴れたいのにぃ」
「うん、わたし も あばれたいの」
ナナとリタちゃんが羨ましがる。
「ナナ殿、お主の術は対人無音戦には不向きじゃ。リタ殿に到れば過剰火力じゃ。モチはモチ屋。対人戦得意なメンツで襲った方が確実じゃ。どうせ皆殺しにもせぬし。全員殺して良いのなら、最初からタクト殿にでも火炎の雨降らしてもろうた方が早いのじゃ。そうはしたくはなかろう、フランツ殿」
一度は仲間として一緒に働いた人たちを襲うんだ。
殺す事には抵抗があるだろう。
俺も人殺しはしたくないし、ナナ達には絶対させたくない。
「ああ、出来るだけ穏便に済ませて欲しい。私からもお願いする」
フランツ君は俺達に頭を下げる。
「はい、安心してね。私も出来る限り手加減するわ」
マユ姉ぇの手加減って、ビル爆砕が一部屋破壊レベルだもの。
少し心配。
「それじゃ、ナナ。こっちの事をお願いね。何があるか分からないし」
「うん、コウ兄ぃ。まかせてちょーだい! この生徒会長のボクが居ればだいじょーぶい!」
ぶいサインをしながら笑うナナの笑顔に、俺達は安堵して戦いに向かった。
◆ ◇ ◆ ◇
「ああやって俺達の事を把握していたんだね」
「そうじゃな。どうやら手連と言えそうなのは、コヤツくらいじゃ。フランツ殿、こいつじゃな。お主の言っておった監視役は?」
「ああ、間違いない。コイツ、師範代理だ。今、向こうに行った奴らは戦闘術者も居たが、大丈夫か?」
フランツ君は、まじまじと男達の顔を見て教えてくれる。
ナナ達の心配もしてくれるのは、嬉しいね。
「大丈夫じゃ。朧の『八門遁甲結界』内に自分から閉じこもれば、邪神クラスの空間制御術を使えねば絶対安心じゃ」
今、俺達はチエちゃんが作った位相別世界気泡内から騎士団のキャンプの様子を眺めている。
「そういえば、さっきの一瞬の気配消去ってワナ張ったんだよね」
「うむ、そうじゃ。ああやればイヤでも監視に赴かねばならんからのぉ。因みに今向こうで魔力放出しておるのは、影分身じゃ!」
チエちゃんは、自慢げに「無い」胸を張って解説してくれる。
防御にも攻撃にも使える次元反転鏡像分身を今回はデコイに使ったという訳だ。
「さて、キャンプから人が減ったし、CPからもコヤツ以外消えたのじゃ。ではやるかのぉ」
「おー!」
「穏便にお願いします」
「はい、出来うる限り」
「多分、出来ると思うのだけど。私頑張るわ」
うん、1人怖い人いるね。
死にはしないと思うけど、ごめんね。
マユ姉ぇに倒される人達。
◆ ◇ ◆ ◇
「マスター不在の今、あんなバケモノ相手に出来るかよ!」
男が愚痴るけど、もう手遅れなんだよ。
「もう手遅れじゃ! この薄情モノめ!」
そう言いながらチエちゃんは次元気泡を消して、実空間へ俺達と一緒に現れる。
男が何か反応をする前に、俺は瞬動法で男に向かって踏み込み、全力の突きを男の肝臓があるであろう部分へ向けて放つ。
もちろん剣ではなく三鈷杵の柄で。
そして放つ、弱電版の帝釈天雷撃波を。
「ぐぅぅ」
一瞬男は唸るも、その場に倒れ臥した。
「カレンさん、羂索を!」
「はい。コウタさん」
あっというまに、男は口までカレンさんが術で出した羂索で「ぐるぐる巻き」。
舌かまれても、叫ばれてもイヤだしね。
「さあ、次に行くのじゃ! 気分は、『影の軍団』じゃな!」
チエちゃんは、忍者アクションで有名な時代劇の名前を出す。
「コウタ、チエさんは何を言っているのだ?」
フランツ君は首を傾げる。
「また後で教えてあげるよ。まずは出来るだけ無音無力化していこうね」
ノリが分からないフランツ君。
アメリカ人の若者に時代劇のノリを理解してくれというのはムリだよね。
というか、古今東西のオタク的ネタを押さえている悪魔が異常。
こういうのも一種の「堕天」というのだろうか。
宇宙人を「堕天」させた娘も身近にいるけど(笑)。
◆ ◇ ◆ ◇
それからは、チエちゃん大暴れ。
俺も存分に殴り倒したし、カレンさんもバッタバッタと薙ぎ払う。
マユ姉ぇはおっかなびっくりだったけど、攻撃喰らった相手は一瞬で意識を刈り取られていた。
彼らの手足が変な方向に曲がっているのは、見ないことにします。
後で治療してあげるから、勘弁ね。
「ああ、良かったわ。生きているのね。どうも私手加減苦手だから困るわ。今度対人専用の非殺傷技開発しなきゃ」
ピクピクしている犠牲者を診察するマユ姉ぇ。
はい、頼むからそうしてください。
さもないと、いつも対戦している俺の命が危ないです。
何回も死にそうになったんだもの。
「ええ、そうして頂けると良いかも。シンミョウも怖がっていたし」
一度、カレンさんもマユ姉ぇと手合わせしていたけど、簡単に吹っ飛ばされていたし。
「そうじゃ、母様の手加減は死なないというだけじゃから。ワシも怖いのじゃ」
精神波攻撃で滅びそうになったチエちゃん、いまだにトラウマかかえているらしい。
「コウタ。あの女性マユコは、そんなに強いのか。確かに団員が全員一瞬で倒されているが、悪魔のチエさんが怖がる程とは」
「フランツ君、一つだけイイ事教えてあげるよ。マユ姉ぇに年齢関係の事は絶対言わないでね。言った相手、必ず死ぬか死にそうになったから」
うん、嘘は言っていない。
「騎」や「リブラ」は死に、中村警視やタクト君は死にそうになったんだから。
ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
皆様、宜しくお願い致します。