第177話 康太は冒険者になる:その26「遺跡攻略1:再度遺跡へ」
「さあ、今週も頑張って遺跡攻略するぞー!」
「おー!!」
御待ちかねの土曜日、早朝俺達は再び終結して遺跡に挑む事になった。
今週は月曜日も休みの3連休、これで決着付けば良いよね。
今、関東のマユ姉ぇ宅にて、フランツ君含めて全員集合したところだ。
「化学弾も大分補充しておいたよ。ショゴス居なかったらムダになるけど、念のためにね」
マサトは平日の間に、しこしこと化学弾の製造をしてくれた。
「しかし、ガスガンのグレネードランチャーを利用とは面白いものじゃのぉ」
「うん、ちょうどサイズが良かったからね」
南アフリカのアームスコー社製6連リボルバーグレネードランチャー「ダネルMGL」。
某VRMMOアニメの外伝で小さな女の子が2丁拳銃ならぬ2丁グレランしているヤツ。
それの遊戯銃ガスガンタイプを改良して持ち込んでいる。
日本じゃグレランどころか実銃は扱えないものね。
あ、アヤメさんはSIG SAUER P230JP使えるか。
「さあ、皆の衆、行くのじゃ!」
「どこでも……なドア」が開き、遺跡の空気が漏れてきた。
今度は何が待ち受けるのやら。
◆ ◇ ◆ ◇
「私も遺跡に連れて行ってくれるのか?」
フランツ君は驚く。
なお、今はマサト&チエちゃん謹製の翻訳機を用いている。
念話が吉井教授や金子先生以外お互い使えるし、先生たちは英会話できるので問題ないけど、一応通常会話が出来た方が楽だよね。
「ええ、貴方は貴重な証人、そして被疑者だけど被害者でもあるわ。そして遺跡について情報を持っている。これを生かさない理由は無いの。それに貴方アイツら見返してみたくない?」
アヤメさんは、取り調べを行っている部屋でフランツ君に話す。
「そうじゃ、フランツ殿。ここで向こうのマスターとやらを驚かせるのじゃ! 自分は生き残った上に敵を味方につけて舞い戻ったのじゃと」
チエちゃんも唆すように話す。
まあ、チエちゃんの場合は面白さ半分、フランツ君を励ます半分だろうて。
「俺はムリにとは言わないよ。危険には違いないし、一度は師匠と仰いだ人と敵対するのはイヤだろうし」
俺は無理強いはしないように話す。
なお、この会話は公安組織の建物内で行われている。
俺はチエちゃんの保護者という「名目」で一緒に来ている。
「実は、私は公安に保護となったから大丈夫といいながらも拘置所とかに送られるものと思っていた。しかし、高級ホテルまでとは言わないものの普通の部屋に宿泊させてもらった上に、衣食の世話までして頂いた。この恩義は是非とも貴方方にお返ししたい。だから、私も遺跡に連れて行って欲しい。そしてあのマスターが遺跡で何を求めていたのか私は知りたいのだ」
翻訳機の仕様の為か、硬い話し方をするフランツ君。
しかし、念話でもこういった感じだから、根は真面目な子なんだろう。
「日本でいう所の一宿一飯の恩義じゃな。よし、ワシが必ず連れて行ってやるのじゃ! さて、そうなれば準備じゃな。うん? フランツ殿、後でワシに身体を見せてはもらえぬか? もしやとは思うのじゃが、念のためじゃ」
「あら、チエさん。どうしましたか? フランツ君なら一昨日メディカルチェックは受けて異常なしでしたよ」
「ワシの気のせいでは無ければ、アレじゃな」
ん?
なんだろうね。
「チエちゃん、何がフランツ君にあるの?」
俺は意味が分からずチエちゃんに聞いた。
「それはナイショじゃ。後から教えるのじゃ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「ふう。この場所は大丈夫じゃったのじゃな」
「そうね、チエちゃん。周囲に変な気配も無いし」
「うん、ボクもそう思うよ」
「はい、アタシも異常感知しません」
俺達は「ドア」を通って前回撤退した遺跡にある建物に帰った。
ポータルユニットを回収しつつ、周囲を警戒するチエちゃん。
それにマユ姉ぇ、ナナ、コトミちゃんがサーチした結果を教える。
「そういえば、前回気配遮断したのは、どういう理屈じゃったのじゃ、フランツ殿?」
チエちゃんはフランツ君に、前回襲撃時の気配遮断について聞いた。
「あれは、オーラ撹乱呪文を使ったらしい。私は使えないのだが、少し離れていたところで監視していたらしい術者が使ったそうだ。私は事前説明でそう聞いていた」
「ほう、それはイイ事を聞いたのじゃ。つまり、あの時もう1人ワシらの戦いを見ていてフランツ殿を見捨てた愚か者が居った訳じゃな。そしてそやつが気配関係の術者、おそらくワシらが前回遺跡に入った時に察知したのもソヤツじゃろう。ワシらも気配遮断系の結界は張っておるし、それを察知できるのは強敵じゃ」
あら、じゃあ今回も既に察知していて監視の眼を飛ばしている可能性があるかも。
警戒を解いちゃダメだな。
「まあ、ワシらがこれから行う行動までは読めまいがのぉ」
チエちゃんはヒトの悪そうな表情をする。
これは、何か「イタズラ」を思いついた幼女の表情だ。
「ふふふ、襲う事を考えたのなら、襲われる事を考えるべきなのじゃぁ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「うむ、さっきまであった気配が消えた。どうしてだ!」
フードを深く被った男は水晶球を見ながら首を傾げる。
水晶球に映し出された映像から、先ほどまで感知していた圧倒的なマナ総量の存在が急に消えたのだ。
男の専門はマナ感知。
それを生かして遺跡内の敵対存在の位置を感知して排除していた。
「あのマナ総量はヴトケを足止めに使ったバケモノ達か。まさか、ショゴス・ロードまで倒してしまうヤツらだとは思わなかったが。またアイツらがこの遺跡に来たのか? しかし、どうやってアイツらはいきなり遺跡に現れたんだ? ここへは特定のゲート以外の立ち入りは不可能なはずなのに」
男は焦る。
遠くからだが、ショゴスの群れを一掃してしまうバケモノ達を見たからだ。
アイツらが来たら、マスター以外では自分達に勝ち目は無い。
「おい、早く探索を消失地点へ送れ。後、戦闘準備しつつ撤退も考えておけ。最悪、荷物を放棄して撤退するぞ!」
前回の撤退時も荷物は放置して逃げたが、幸い遺跡に戻ってみると荷物は誰も触った形跡も無く、元の場所にあった。
ショゴス達も壊滅し、ネズミすら殆ど居ない遺跡内に自分達以外に荷物を触るものなど居ない。
そう思っていたが、バケモノ共が帰ってきたのなら話は違う。
「早く準備するぞ! あ、また元に戻ったか。しかし、これは必ず調査せねば」
男は再び水晶球に反応が戻った事に安堵する。
しかし、何故一瞬消えたのか、そこが不思議だ。
「よし、1/3の人員は調査へ向かえ。絶対戦闘にはなるな、察知されたら死ぬぞ。残りは元の作業に戻れ! いつでも撤退できる準備も忘れるな」
男は一旦安堵して椅子に深く座りなおす。
調査隊がベースキャンプから離れるのを見終わった後に思う。
「マスター不在の今、あんなバケモノ相手に出来るかよ!」
しかし、男は次の瞬間、恐怖した。
「もう手遅れじゃ! この薄情モノめ!」
声と共に長い黒髪の東欧系に見える幼女が突然目の前に現れたのだ!
ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
皆様、宜しくお願い致します。