第169話 康太は冒険者になる:その18「地獄の一丁目!? ショゴス遭遇戦」
今、俺達は「門」から入ったすぐの処にいる。
案外、簡単と「門」が開いて俺達は遺跡内に入れた。
「思ったとおりじゃな。コウタ殿の『石』がキーになると思ったのじゃ!」
チエちゃんが言う様に俺の持つ「次元石」が「門」と反応して異界への扉が開いた。
「しかし、殺風景じゃなぁ。石づくりの建物はどこか歪んでおるし。真っ暗で遠くまで見通せん。それに妙な波動がしとるせいか、気配探知がマトモに出来んわ」
チエちゃんが愚痴るが、確かに遺跡全体にこもる「雰囲気」の為に俺も気配探知が出来ない。
「え、チエ姉ぇでも分からないの? ボク分かるよ。あそこの影にヘンなのいるよ」
「ええ、ナナちゃんの言う通り、アタシにも分かります。皆さん、もうすぐ影から出てきますから、戦闘準備お願いしますね」
ナナとコトミちゃんは、この異空間においても気配が分かるらしい。
実に頼りになるね。
「ということですので、金子先生達は絶対シンミョウちゃんの防御結界から出ないで下さいね」
マユ姉ぇも光兼さんを抜いて戦闘準備。
俺も三鈷杵を起動する。
「皆さん、着ている服や防具は見た目以上の防御力はありますが、あくまで補助。無闇に敵につっこまないで下さいね」
マユ姉ぇが説明した通り、俺達はがっちりと防御服を着ている。
チエちゃん迷宮を攻略する時に着ていた衝撃吸収防弾防刃ジャージにセラミックプレート入りマルチポケット付きチョッキ、フラッシュライト付きスポーツヘルメット、そして対刃加工された強化プラスチック製篭手に脛当てに防刃手袋。
俺は愛用の鎖篭手に「力」を込めていつでも戦える準備をしていた。
他の戦いなれたメンツは大丈夫そうだけど、金子先生と御付の2人は震え上がっている。
「おい、マヤ! 気合入れろよ!」
「うん、お姉ちゃん!」
遠藤姉妹も今回が初陣、かなり緊張している風。
「姉ちゃん、マヤ。安心しろや。俺はともかく皆強いぞ! 観戦するつもりでいろや」
タクト君が姉妹を励ますように軽口を言う。
「おい、タク! ここで何も出来なきゃウチの名が廃るんじゃ! ウチが怖がっているとでも言うのか?」
さっきまでガチガチだったカズミさんは、タクト君に威勢の良い言葉を吐く。
うん、良い傾向だね。
「皆さん、来ますよ。さあ、アタシも戦闘参加は初陣。いきますよー!」
コトミちゃんは気合いれてタイル九十九神を展開する。
「テケリ・リ! てけリ・り!」
コトミちゃんの宣言と共に、石造りの建物の影から黒い粘液状の生物が「叫び」ながら出てくる。
そしてソレは虹色に輝きながら、表面に沢山の「眼」を作り俺達を見る。
「ひぃぃぃ!」
金子先生達はお互いを抱き合いながら怖がる。
俺も一瞬恐怖を感じそうになるも、考えてみればコンなヤツ俺達の敵じゃない。
うん、殲滅しましょ。
「行きます!」
マユ姉ぇの宣言と共に俺達の攻撃が始まる。
俺は呪の準備をしようと思ったところ、俺達前衛組の後方から何かが沢山俺達を飛び越えてショゴスへ向かった。
ちゅどーん!!
爆風が終わった後に残るは、さっきまでの威勢がどこにいったのか、弱弱しく叫ぶショゴス。
「てけ……り・り?」
「もう一発じゃ!」
チエちゃんが叫んで、漆黒の虚無球を連打する。
きゅいきゅい!
土煙が消えた後には、もう何も残っていない。
「うむ、このメンツじゃと一瞬じゃな。化学弾ランチャーの出番無しじゃな」
えーっと、俺出番なし。
確かショゴスって火炎攻撃耐性あったんだよね。
それにしては、遠藤姉弟妹の火炎連打が効いていたけど。
「マヤ。オマエの火力なんじゃい! アヤツがあっというまにボロボロやないか?」
「えー、お姉ちゃんの槍も大概だよぉ。燃やすじゃなくて蒸発させるんだもん」
「俺の爆熱も見てたのに、なんか言ってよ姉ちゃん?」
「う? タク、オマエのはマダマダ。もっと熱を一箇所に纏めろや。ああいう燃やせ無いヤツは燃やすんじゃなくて蒸発させるんだよ」
タクト君もいい加減強くなっていたと思うのに、姉妹の火力は侮れず。
マヤちゃんの不死鳥、その羽ばたきから生み出される「炎の羽」は、火炎では無くて最早プラズマの粋まで加熱されており、ショゴスを燃やすことなく散弾のように多くの穴を穿つ。
カズミさんの「槍」もタクト君相手の時の手加減モードじゃなくて本気モードなら、こちらも「プラズマランス」。
ショゴスの身体に一撃で大穴を開けていた。
ちなみに遠藤姉弟妹、ランチャー持ってたのに緊張でテンパちゃったからか、いつもどおりに火炎攻撃しちゃったんだけど、予想以上の火力だったのでショゴスにも効果あり。
まあ、結果オーライという事で。
「え、え??? 皆さん、一体何をしてあのバケモノを倒したんですか?」
金子先生は眼を白黒させて俺達に聞く。
「なーに、全員でワザ叩き込んだら効果半減を無視して倒せた訳じゃ。様はゴリ押しでいけるという事じゃな」
チエちゃんは「無い」胸を張り、いつものドヤ顔。
うん、戦略戦術なんて関係なく、力押しゴリ押しで敵を倒す俺達。
邪神級の相手じゃないのなら、こうなるんだね。
「準備しておいた化学兵器がムダになっちゃったね」
俺はチエちゃんに聞く。
「カズミ殿達がおったおかげじゃ。実に良い助っ人達じゃな」
「うんうん、褒めて褒めて! ウチらスゴイじゃろ、チエさん」
チエちゃんに褒めてもらって嬉しそうなカズミさん。
「ねえ、先輩? アタシの事も褒めてよ。アタシが居なかったら奇襲喰らって全滅だったでしょ?」
コトミちゃんが俺の事をヒジで突っつきながら話す。
「うん、ありがとうね。じゃあ、これからも宜しくね」
俺はコトミちゃんの頭をヘルメット越しにヨシヨシする。
「あー、ボクも分かったのにぃ。それにレーザー一杯撃ったんだよ。ボクもヨシヨシして!」
「おにいちゃん! わたしも、いっぱいうったよ。だから、よしよしして!」
ナナとリタちゃんが俺の元に飛んでくるので、しょうがなく両手でヨシヨシする。
「キミタチ、ホントに凄かったんだねぇ」
金子先生は呆れた風に言う。
御付の2人も青かった顔が赤くなって興奮している。
「そうじゃ! ワシらは無敵のお人好しなお節介焼きじゃ!」
ホント、無敵なら良いよね。
でも、そうじゃないのは、チエちゃんも分かっているんだろうよ。
何かイヤな予感もするし。
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