第166話 康太は冒険者になる:その15「雨降って地固まる?」
「すまんかった。ワシ手加減したつもりじゃったが、やりすぎたのじゃ!」
今は、タクト君の自宅広間。
チエちゃんが、カズミさんに謝っている。
そりゃ、いくら無傷で終わったとしても上空数百メートルまで一気に打ち上げられたら大変だもの。
「タクト、オマエの師匠達ってバケモノ揃いかよ。ウチ、いい加減自分に自信あったけど、そんなのどっかにいったぞ!」
謝られているカズミさん、涙目で不機嫌そうにタクト君に文句を言う。
うん、言いたくなるのも分かるけど、俺弱いからバケモノじゃないもん。
「姉さんやお母様は別格としても、姉御や兄貴もだし、小さな子達も俺よりずいぶんと格上だよ」
うんうん、マユ姉ぇやチエちゃんは別格。
カズミさん、俺達を煽った罰なのかチエちゃんにより空へ打ち上げられちゃった。
後から聞くと、爆発ではなくて斥力場、つまり重力と反対の弾く力をカズミさんの足元に発生させて、地面ゴト上に打ち上げたのだとか。
爆発じゃないからカズミさんは怪我しないし、足元ごと打ち上げられたから逃げようも無い。
しばらく「空中散歩」をさせた後、魔神将形態に変身したチエちゃんが空中キャッチ、無事にカズミさんを回収した。
ええ、悪魔形態を見た遠藤家の皆様は、あっけにとられてましたけど。
「おい、まだバケモノ居るのかよ?」
カズミさんは、青い顔をする。
お父様も一緒になって怖がる。
「カズちゃん、女の子達にバケモノ呼ばわりはダメでしょ」
お母様は娘を嗜める。
「でも、本当にお強いなら見てみたいわ」
うん、このお母様もバトルマニアっぽいや。
「えーっと、一応人外なのはチエちゃんと今ここには居ないけど御付の朧サンだけかな。後は、ちゃんと人類だよ。地球人類じゃない人もいるけど」
俺はフォローする。
「はい、私を呼びましたか?」
すかさず空間跳躍してくる朧サン。
場の空気読みすぎというか、このヒト出待ちして無いですか?
「おう、朧よ。準備できたのか?」
「はい、我が主。ご自宅の『門』、準備完了でございます」
もちろん眼を白黒する遠藤家の方々。
「あ、申し訳ありません、遠藤家の皆様。私、チエ様に使えし執事上位悪魔の朧と申します。今後とも宜しくお願い致します」
華麗に挨拶をする朧サン。
コイツ、絶対狙って行動しているぞ。
「えーっと、タクト。オマエ、よくこんなところで修行していて命あったな」
冷や汗かきながら言うお父様。
「まあ、何回か危ないときはあったけどな、親父」
タクト君、あらぬ方向を見て話す。
うん、危ないとき多いものね。
「あら、さっきの話だと宇宙人いるの、お兄さん? 私、宇宙マニアなの!」
マヤちゃんが、ここで俺の話に食いつく。
ここ四国の山奥では、綺麗に夜空が見える。
そこに住むマヤちゃんが、宇宙について興味を持っても不思議じゃないよね。
「それは、本人から話して貰おうか。良いよね、リタちゃん」
「うん、おにいちゃん。はじめまして、わたしは『おかもと りた』です。ほかの ほしから ちきゅうに きて、おにいちゃんに たすけてもらったの」
リタちゃんは幻影呪文を解除して、エルフ耳を見せた。
「えー、エルフ! リタちゃんっていうの! かっわいい!」
マヤちゃんはリタちゃんの手を握り、キラキラとした眼をする。
「マヤ、リタちゃんはお前と同い年だから仲良くしてやれよ」
タクト君は、お兄ちゃん顔してマヤちゃんと話す。
マヤちゃんが居たから、タクト君はナナやリタちゃんに優しかったのね。
「えー、そうなの! 良かったら友達になってくれませんか?」
マヤちゃんは大きな背を屈めてリタちゃんに話す。
「うん、いいよ。まやちゃん!」
いつもの撃墜数大量な笑顔で話すリタちゃん。
「ありがとう! 私もリタちゃんって呼んで良い?」
はい、ずきゅーんと撃墜されました。
横でお父様やお母様も撃墜されてますね。
2人とも、ほんわかとした顔しているよ。
カズミさんは、少しぎょっとしているけどね。
「うん、いいよ! そうだ、おねえちゃんとも おともだちに なって!」
リタちゃんはナナを紹介する。
「ボクは岡本奈々、リタちゃんのお姉ちゃんなの。マヤちゃん、宜しくね!」
ナナは「お姉ちゃん」ぶって、しっかりとマヤちゃんの手を握る。
まあ、目はマヤちゃんの大きな「お胸」に行っているけど。
それはしゃーないよね、自分より年下なのに豊満なモノ所有しているの見ちゃったら。
「はい、ナナお姉さん。宜しくお願いしますね」
◆ ◇ ◆ ◇
しばらく、俺達が宴会芸風にワザを見せて盛り上がった後、チエちゃんはタクト君実家の庭を借りて何かの準備を始めた。
「チエちゃん、それさっき言っていた『門』の準備?」
俺は、庭に座って機器を設置しているチエちゃんの横に座って聞く。
「そうじゃ。ここにポータルを設置して実験をするのじゃ! 既にマサト殿の自宅との間で実験済みじゃが、100km以上離れたここで再度実験じゃ」
チエちゃんは地面に直径10cm円盤状のユニットを埋める。
「マサト殿、聞こえるかのぉ? 起動実験スタートじゃ!」
チエちゃんはスマホでマサトと連絡しているらしい。
円盤ユニットが光ると、その上に「玄関」が現れる。
「あ、これウチの庭に置いてある『門』だね?」
ナナが俺達のところに覗きに来る。
「そうじゃ! もうすぐ『扉』が開くのじゃ!」
そして扉が開いて一瞬光が溢れる。
「やっほー、ナナちゃん!」
『扉』の向こうには、ルナちゃんが居た。
「ルナちゃん! あれ、今日ウチに来てたんだ」
「うん、だって門が繋がったら、私もソッチ行けるんだもん」
楽しそうにしているルナちゃんの顔が見えるけど、これ映像だけじゃないよね。
「さて、まずはワシが実験台になって通るかのぉ。もし急に『門』が閉じても、ワシなら死なぬし、こちらにも瞬間移動で戻れるしのぉ」
そう言って、チエちゃんはヒョイと扉の中に飛び込んだ。
もちろん無事、チエちゃんは扉の向こうへ到着した。
「マサト殿、実験成功じゃ! これで今後はユニット設置すれば、どこへも行き放題じゃ!」
「うん、僕も嬉しいよ。しかし、各ユニットをMACアドレスで管理して繋ぐなんて、スゴイ事思いつくんだね」
マサトが扉の前に来て、チエちゃんと何か高度な技術会話をしている。
俺、ITとかは門外だから分からないぞ。
「そうせぬと、最悪ワシの同族共が悪用する事もありうるからのぉ。まあ、リタ殿の母星殴り込み時には、向こうの『門』ハックするのじゃがな」
うむ、実に頼りがいがある科学班だよ。
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