表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第四部 功刀康太はようやく遺跡探訪して、神器争奪戦をする
164/272

第164話 康太は冒険者になる:その13「精霊術師」

「では、改めて私が、我ら遠藤家に伝わる精霊術についてご説明致します」


 気絶した運ちゃんを奥の部屋に寝かしてきた後、タクト君のお母様が俺達に説明を始める。


「私達の術の始まりは、平安時代の陰陽師(おんみょうじ)からだと聞いています。彼らの中で精霊(エレメンタル)と呼ばれる自然エネルギーを(まと)う霊体を操る者達が生まれ、そこから続いているそうです。我らの先祖が四国へ来たのは、平家に組していた為に壇ノ浦(だんのうら)の戦い前後に落ち延びたからだそうです」


 四国内には高松の屋島(やしま)、そして志度(しど)の合戦以降、落人(おちうど)として平家一門が多数逃げてきている。

 各所の山奥に隠れ里を形成していて、剣山近くの徳島県三好市祖谷(いや)もそういう場所。

 有名な「かずら橋」も追っ手を追い落とす為に、いつでも切り落とせる為に作った橋だそうな。

 安徳幼帝も各所を逃げ隠れたらしく、タクト君の地元にも幼帝が隠れていた場所がある。

 そして壇ノ浦で死なずに逃げ延びたという説が祖谷(いや)や、遠くは長崎県対馬(つしま)にもある。

 俺は、幼帝と一緒に海へと沈んだ「神剣」を使った。

 ナンにせよ、俺達と平家一門は「ご縁」があるようだ。


「一部は、高知県香美市(かみし)物部(ものべ)の『いざなぎ流』一派と合流し、また一部は京へと帰ったとも聞いています」


 「いざなぎ流」とは、高知の旧物部村(ものべむら)で伝承されている独自陰陽道。

 陰陽道の本家土御門家(つちみかどけ)とは少し違う独自形態の術だ。

 以前、魔神将(アークデーモン)(ナイト)」に(そそのか)されてカオリちゃんが作ろうとしていた「犬神」も確か「いざなぎ流」の系統の術。

 他にも「式を打つ」等の攻撃的側面が多い一派だね。


「私達の代では、すでに術の使い手も少なくなり、実質我が家以外は失伝してますね」


 きちんと理論化して伝承しないと、術とかはあっという間に失われる。

 また血族に由来する術なら、昨今の少子化は大ダメージだね。


「ワシは、ここへは入り婿だったんだよ。ワシ、風系の精霊との相性が良くて、爺さんに見込まれてね」


 そう言ってタクト君のお父様は手のひらを上に向ける。

 すると掌に風が集まり、15cmくらいの女性っぽいスタイルの「何か」が現れる。


「これが今風に言うと、風精霊(シルフ)だな。ワシら精霊術師の術は、精霊にお願いして力を使うのだよ」


「ええ、遠藤家で力を使えたのは私の代では私のみ。このままでは失伝すると心配した父がお父さんと会わせてくれたの。政略結婚だったかも知れなかったけど、私一目ぼれだったし」


 ぽっと顔を赤くするお母様、そしてそれを見て赤面するお父様。

 この夫婦も仲良さそうでなにより。

 3人も子供作っているんだから、そうだよね。


「おほん! 話続けなさい、母さん」


「あら、私ノロケちゃったわ」


 顔を両手で抑えるお母様。

 それを恥かしそうに見るタクト君達子供ら。

 昔ならタクト君、「恥ずかしい事すんな」とか言って怒っていたんだろうな。


「大丈夫じゃ! ウチの母様(かあさま)もしょっちゅうノロケておるからのぉ」


 思わずつっこむチエちゃん。


「あら、ごめんなさい。ウチの娘が話の腰折っちゃって。すいません、続きお願いできますか?」


 チエちゃんをジト眼で見てからタクト君のお母様に謝るマユ姉ぇであった。


「いえいえ、じゃあ続けますね」


 お母様は顔を真剣モードに戻して話す。


「私の家系は炎系、今風に言うと火精霊(サラマンダー)を媒介にして術を使います」


 そしてお母様の掌の上に10cmくらいの小さいけど炎で出来た龍が現れる。

 こいつは口からボ、ボっと小さな火花を吐いている。


「タっくんは、媒介者の精霊召喚(サモンエレメンタル)がうまくいかないのに、先に術を行使できたのね。それが逆にコンプレックスになっちゃったのかも知れないわ。それを私達が理解できなかったから、タっくんを追い込んでしまって、ここから逃げるような事にしてしまったの。もう遅いかもしれないけど、タっくん、ごめんなさい」


 そう言ってお母様はタクト君に頭を下げた。

 それに併せてお父様も謝った。


「すまんかった、タクト。オマエの心情を理解してやれなんだ、ワシ達が悪い」


 それを見たタクト君は、慌てて自分から謝る。


「いや、それは俺が悪いんだよ。もっとオヤジやオフクロに相談してたら良かったのに、勝手に悪い様に思い込んで逃げちまったんだから。でもな、姉御達のおかげで、もう俺怖く無いよ。出来ない自分も『自分』。だからこそ、もう何処からも誰からも逃げたりしないよ」


 すっかり晴れやかな表情のタクト君。

 ホント良かったね。


「おい、それはホントかよ。じゃあ、ウチからも逃げねーんだな?」


 すっかり良いところに口を挟むカズミさん。


「ああ、姉ちゃん! もう逃げねーよ!」


「じゃあ、ウチと勝負だ!」


 この姉弟、案外似たもの同士なのかも。

 タクト君、この間まで喧嘩っ早かったし。


「あー、お姉ちゃん、お兄ちゃん! どうしよう、どうしよう!」


 すっかりパニック状態のマヤちゃん。


「教授、これは見ものですね」

「コトミ君、他人事みたいに言うのはどうかと思うぞ」


 うん、他人事だと面白い話だけど、いつこっちに飛び火するか分からないんだけど。


「そうじゃ。オマエのツレともヤラセろや! 面白そうなメンツじゃないかよぉ!」


 ほれ、飛び火コッチに来ちゃったよ。


「あらあら、カズちゃん。またケンカなの? 怪我しないようにね」

「我が娘ながら、どうしてこう喧嘩っ早いんだろうか?」


 もしかしてお母様の方が過激なのか、遠藤家って?

ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。


皆様、宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ