第163話 康太は冒険者になる:その12「四国山中での団欒」
「すまんかったのぉ。コイツが、あんまりに情けない格好じゃったから、ついやってしまったわい」
今は、タクト君の実家の中。
四国山中の家という事で、どんな家かと思っていたら、到って普通の家屋。
まあ、結構大きい家だけど。
電気、水道、電話はちゃんと通じており、どうやら近年リフォームとかしたらしく、綺麗な一軒家だ。
もちろん下水は無理だから浄化槽処理だし、都市ガスなんて無理でプロパンガス使用。
それと、ネット用の光回線までは無理だったようで、携帯回線経由のWifiを使っているんだそうな。
一応、ここも4G回線は通じるし。
その家の広間にて、俺達はタクト君の家族から「お接待」を受けている。
この広間、日本家屋っぽく畳敷きで床の間もある。
そして20畳以上ある様で、俺達11人+運転手さんが入っても狭さを全く感じないくらい広い。
「お姉ちゃんが、みっともない姿見せて、ごめんなさい」
大きな背を屈め、短いポニーテールをぴょこぴょこして俺達に謝りながらお茶を配っているのが、タクト君の妹さん、マヤちゃん。
160cmを越えるくらいの長身で「胸」も結構ありスタイルも中々。
これで中学1年生、リタちゃんと同い年なんだから、びっくり。
お茶を頂くけど、タクト君が自慢するだけの事はある美味しさ。
旨味というかコクが違うね。
「何がみっともないじゃ! 逃げたタクが悪いに決まっておるじゃろ?」
座敷上座に近い場所で、プンプン顔でタクト君を睨んでいる彼女、カズミさん。
身長148cmの上、童顔おかっぱ髪でバストも……、な彼女。
つい少女と言ってしまったけど、タクト君より2つ年上の立派な成人女性なのだ。
という事は、カズミさんはカレンさんの一つ下、コトミちゃんと同い年か。
シンミョウさんが、タクト君と同い年だし。
「あらあら、いいじゃないの。タっくん、せっかく立派になってお友達を連れて帰ってきてくれたんだから」
娘と一緒になってお茶を配っているタクト君のお母様、子供達の年齢からしたらおそらく四十路半ば以降といったところだろうけれど、150cm強の小柄な感じの童顔で三十路半ばくらいにしか見えない。
カズミさんは、この人の遺伝が強いのかもね。
「ガハハ! そうじゃろ! それも、お国のお役になっているそうなら、いいじゃないか」
上座に座っている髭面の豪快そうな長身の男性が、タクト君達の父君。
お母様よりも大分年上っぽく見えるね。
しかし、この気持ち良さそうなご両親から、拗ねていた頃のタクト君が想像できないや。
「そうだ、タクト! おまえ、火精霊の召喚に成功したのか? 大分火炎コントロールがうまくなったとは聞いているけど」
「後もう一歩って感じだよ。でも、昔よりは『何か』掴んだ感じはするから、今回の探検中に絶対モノにして見せるぜ!」
「そうか。でも『出来ない自分』を認められるなんてオマエ、凄く成長したんだな。良い師匠達に巡り会えたようでワシも安心したぞ」
タクト君は、屈託無く自分がマダ未熟なのをお父様に説明している。
そしてそれを喜んで聞いているお父様。
おそらく以前だと、タクト君は出来ない自分を拗ねて暴れていたんだろう。
「ああ、姉御や兄貴、姉さん、お母様に妹分達に色々教えてもらったからな」
笑って俺達を見るタクト君。
ホント、最初敵として会ったころの「荒さんだ眼」とは大違いだよ。
「皆様、この愚息が沢山ご迷惑をおかけしたかと思いますが、ここまで立派にして頂き、誠にありがとうございました。出来ましたら、これからも宜しくお願い致します」
お父様は、一旦上座に座った座布団から立ち上がり、畳の上に直接座って俺達に向いて深く頭を下げた。
「いえいえ、良いんですよ。って私が言って良いんですよね」
つい返事をしてしまってから確認するマユ姉ぇ。
「はい、どうぞ。真由子さん」
苦笑しながら返事するアヤメさん。
そりゃ立場上、アヤメさんが保護者だものね。
「アヤメちゃん、保護者の台詞取っちゃってごめんなさいね。さて、お父様。タクト君、まだまだなところは依然ありますが、その分伸び代は十分ありますし、ここ半年でも術がずいぶんと上達したと思います。ですが、私の専門は真言呪術で精霊術には詳しくありません。出来ましたら、私達にご教授願えたらと思います」
「貴方が岡本真由子さんですね。息子が随分と失礼したそうで申し訳ありません。精霊術に関してですが、実はワシもそう詳しくは無いんですよ、特に火炎系は。ウチのが本家本元ですから、聞いてやってください。オイ、すまんが頼むよ、母さん」
あれ、このパターン最近どこか聞いた事があるような。
「はいはい、しょうがないですわね。では、私がご説明しますね。我ら遠藤家に伝わる精霊術について」
「すいません、もしかして私って場違いな処に入っちゃったのでしょうか?」
お母様の話を聞いて、びっくり気味の運転手さん。
自分が知らない世界に首つっこんでしまった事に気がついてしまったらしく。
「あら、ごめんなさいね。もうお察しだと思うんだけど、私達、いわゆる『魔法使い』なの」
そうマユ姉ぇが言うと、
「うん、そーだよ!」
そう言うと同時にナナは小物飛ばすし、リタちゃんも光珠を飛ばして「光のダンス」をする。
「うーん!」
そして、理解の範疇を超えちゃった運ちゃんダウン。
「あらあら、大変!」
おい、大変にしちゃったのってマユ姉じゃないの?
全く困ったもんです、ハイ。
マジで新宮茶は絶品です。
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