表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第四部 功刀康太はようやく遺跡探訪して、神器争奪戦をする
158/272

第158話 康太は冒険者になる:その7「化学兵器って怖いね!」

「じゃあ、ここは狂気山脈にある地下都市なの?」

「おそらくはそうじゃろう。だからショゴスが出てくるのも納得じゃわい」


 俺の問いに、チエちゃんが答えてくれる。


「狂気山脈とは?」


 金子先生が聞いてくる。


「それは邪神(クゥトルー)神話体系に出てくる場所じゃな。南極を横断する先カンブリア期の古い粘板岩で形成された、標高1万3千メートルの山脈じゃ。というても、実際に南極にはそんなモノあるまい。おそらくは空間の位相をずらした所にあるのじゃろうて」


 チエちゃんは、名の通りその博識を示す。


「そこは、先史文明を構築した植物と動物を併せた生物『(いにしえ)のもの』と邪神達が跋扈(ばっこ)し戦った地じゃな。長い間の戦いで邪神達の大半は眠りについたものの、『古のもの』も生物として進化の行き止まりに行き着き、大半は眠りについたと聞く。そして彼らが創造したのが使役生物ショゴスじゃな」


「あのスライムみたいなのが、そんなバケモノだったとは」


 金子先生は驚愕する。


「スライムというても、本来ドラクエのような可愛げは無いのじゃ。古典のD&Dでは物理攻撃を無効化、武具を酸で溶かし、窒息攻撃をする強敵じゃぞ!」


 チエちゃんは、オタク知識を披露する。


「ええ、実に手ごわい相手でした。そのドローンでの探索時に1匹の怪物が門から出てきたのです」


 それで、金子先生はショゴスの姿を良く知っていて、SAN(正気)値を削られたんだね。


「念のために重機で門を囲っていたので、いきなり人間が襲われるような事は、ありませんでした。しかし、全長4m程の粘液体は非常に手ごわく、ショベルカーでも押しつぶせませんでした」


「そうじゃろ、物理攻撃、後は火炎・電撃に耐性があるのじゃ!」


「よくご存知で。そのとおり、火炎放射をして焼こうにも全く燃えませんでした。キミは、一体何者ですか? その博識に雰囲気、とても普通のお子さんには見えないのですが」


 金子先生は、ようやくチエちゃんが普通でないことに気が付く。

 まあ、悪魔形態見せたとか呪文使ったとかじゃないから、言動だけでタダモノじゃないのに気が付くだけでもすごいよね。


「ワシの正体は、また後で教えるのじゃ! さあ、でどうやって退治したのじゃ? まさか逃がしたとは言うまい?」


 チエちゃんの興味はショゴスへの対処法へ移っている。

 ワクテカ状態で金子先生の答えを待っているね。

 しかし、確かに戦う以上、敵の情報は重要だ。

 やっつけられるのなら、その方法を知れば戦闘が有利に動ける。


「はい、なんとか仕留めました。もうお手上げでどうしようと思ったとき、工事関係者がヤケになって工事用接着剤のビンを投げつけたんです。そうしたら怪物は苦しみだしまして。後から調べたら瞬間接着剤だったそうです」


 瞬間接着剤は、シアノアクリレートが主成分で周囲の水分で重合化して固まる。

 だから生物との相性は抜群、医療用として縫合剤に用いられるぐらいだし。

 そして、ショゴスは無敵生物といえど、所詮は水分を多く含む有機生命体。

 いかなショゴスでも、化学反応には勝てないのね。


「それを見て、工事現場にある化学物質を化け物にどんどん叩き込みました。効果が一番あったのは、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)でしたね」


 うん、強アルカリの前ではタンパク質は無力だ。

 ショゴスは全体に眼を生やすくらいだから、いわば全体が角膜で覆われているみたいなものだ。

 そこに強アルカリでは、ひとたまりもあるまい。

 マサトには、口がすっぱくなる程言われたよ。

 強アルカリを扱うときは、防護メガネしないと角膜が腐食されて失明するぞって。


「最後に弱りきったところに、生コンぶち込んで固めました。サンプルは『国』に送ったので、もっと解析が進んでいるかもしれません」


 トドメに強アルカリの生コンで埋められるとは、実に哀れ。

 まるでヤクザの必殺技だもん。

 無敵生命も、化学と工事業者には勝てないのね。


「ふむ、実に面白い結果なのじゃ。無敵とも言われるショゴスが化学攻撃には弱かったのじゃな。酸は自分で出しそうじゃが、アルカリや瞬着相手では勝てぬと。マサト殿、今度は対ショゴス武器の開発じゃ!」


「うん、さっそく構想を練るね」


 こういう時に、ウチの科学班は実にあてになるね。


「あるかり ってがっこうで ならったよね、おねえちゃん」

「うん、水酸化ナトリウムとかね」


 やっと自分が分かる話題になったので話しに加わるナナ達。


「じゃあ、わたし も あるかり じゅもんこうげき、おぼえなきゃ!」


 おい、それって怖いぞ。

 人体デロデロになりそう。


「リタちゃん、多分凍結攻撃も効くから、危ない術の開発は注意してね。アルカリ雲(アルカリクラウド)の術に巻き込まれたら、人間なんてひとたまりも無いから」


「うん、きをつけるね。おにいちゃん!」


「そうじゃな。絶対零度でもおそらくショゴズは死ぬじゃろうて。最悪でも無力化は確実じゃ」


 チエちゃんも同意見のようで、一安心。

 少なくとも凍っている間は、活動不能だろうしね。

 アルカリクラウドなんて出来たら、対人戦で死者バンバンですもの。


「一体、キミ達は何者なんですか? 『国』からは頼りになるとは聞いていますが?」


「ワシらか? そうじゃなぁ、言うなれば『通りすがりの、お人好しなお節介焼き』じゃな!」


 うん、その通りだね、チエちゃん。

ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。


皆様、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ