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功刀 康太の遺跡探訪、時々お祓い ~女難あふれる退魔伝~  作者: GOM
第四部 功刀康太はようやく遺跡探訪して、神器争奪戦をする
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第157話 康太は冒険者になる:その6「狂気山脈の地下都市!」

「そして中に踏み込んだ作業員は、『テケリ・リ!』と叫ぶ粘液状の生物に飲み込まれたのです!!」


 金子先生は、恐怖を貼り付けた表情で語る。


「それは、真っ黒くて玉虫のような虹色に光っていました。粘液の中に多くの眼が浮かび上がっていて……、ああ、怖い!」


 金子先生は、両手で身体を抱え縮こまって全身をガクガクと震わせている。

 これは、恐怖で精神が壊れそうになっているんだ。

 このままでは不味い、早く治療をしないと!


 そう俺が思ったとき、マユ姉ぇの呪が聞こえる。


「オン・マカ・キャロニカ・ソワカ! 観世音清心呪!」


 それは十一面観世音菩薩の呪。

 十一面観世音菩薩は、人の心に寄り添って癒やされない痛みを持つ心を強力に鎮め、浄化と同時に慈悲の力で抱きしめてくれる観音様。

 そのお力を使った呪には、強力な静心(サニティ)の効果がある。

 マユ姉ぇは、金子先生に寄り添い呪を唱えながら、先生の背を優しく撫でていた。


「ああ、なんですか、このお力は?」


 金子先生は、涙を流しながらマユ姉ぇの顔を見上げる。


「これは十一面観音様のお力ですわ。先生、もう大丈夫ですよ」


「ああ、貴方こそ観音様では無いですか」


 思わずマユ姉ぇの手を両手で覆うように握る金子先生。

 まー、確かにマユ姉ぇ綺麗で慈愛溢れるから、そう見えてもおかしくは無いね。

 中身はオタクだけど。(笑)


「おう、ワシ以外に拝まれるのを、やっと見れたぞ。うむ、これは良い眺めじゃ。母様(かあさま)、良かったのぉ」


 いつも拝まれているのを茶化されるチエちゃん、ここぞとばかりにマユ姉ぇをからかう。


「もう、母親をバカにするんじゃありませんよ」


 と、口調は怒っていながらも、表情は「ヒマワリ」のような笑顔のマユ姉ぇ。

 しかし、磨り減ったSAN値(正気値)を一発で回復させるとは、流石。

 俺も修行して治癒系は覚えておかないとね。


「さあ、もう大丈夫ですよね。お話、続けられますか?」


「はい、申し訳ありません。実は、調査隊や工事担当者にも同じように凶荒状態になった者が多数いまして、もし宜しければ救ってやって欲しいのです」


 まあ、SAN値チェック失敗したら、そうなるよね。

 俺はもう慣れたから、少々の事だとSAN値チェックしなくて済むけど。

 というか、日常の女難の方がSAN値に悪いんですけど。


「はい、それは探検に参加するしないは別として、お受け致しますわ」


「ありがとうございますぅ」


 ますますマユ姉ぇを崇拝しちゃう金子先生であった。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」


 金子先生は、もう固い表情をしていない。


「その粘液状の怪物に襲われて、逃げ帰ったのが最初の『門』の起動時です。幸い、その後門から怪物が出てくる事も無く、しばらくすると門は閉まりました」


 ふむ、開くのは時間制限付きなのかな?


「次に開いたのは我々が調査中の事です。既に情報を知っていたので無闇に『門』内に突撃する事も無く、カメラ付きドローンを送りました。その映像がこちらです」


 再びタブレットを回し見する俺達。

 どこか(いびつ)で人間が作ったとも思えない遺跡都市。

 しかし、一部大通りに並ぶ家屋は後から作ったのか、他の巨石建築物とは違っている。

 これ、ローマンコンクリートか漆喰(しっくい)かな?

 壁が白く塗られていて、石そのものでは無い。


 今のモルタルコンクリート、実は100年くらいしか構造を維持できない。

 表面から空気中の二酸化炭素を吸って内部のアルカリが中和(中性化)されて、じきに内部の鉄筋まで錆びてしまい、構造が維持できなくなる。

 またコンクリートに含まれる塩分や潮風もコンクリートには良くない。

 中の鉄筋が錆びて、コンクリートが割れて鉄筋が剥き出してしまう「爆裂」という現象は良く見られるよね。

 そうそうコンクリートに鉄筋を入れる(鉄筋コンクリート:RC)のは、コンクリートは圧縮には強いけど引っ張る力に弱い、鉄筋は逆で引っ張る力に強いから混ぜて使うと強くなるからなんだって。


 しかし、ローマ帝国で用いられたローマンコンクリートを使った建築物は今でも健在だ。

 レシピはある程度分かっているものの、ローマ帝国滅亡後にロストテクノロジー化したのが、このローマンコンクリート。

 今も研究中で、近いものとしてジオポリマー系コンクリートが研究中らしいと、以前マサトに聞いた。


 漆喰は消石灰(水酸化カルシウム)を使ったもので、土壁の表面に塗って防水・防火能力を持たせる。

 これも、耐久性はコンクリートには劣るものの、吸湿性に優れているしエコだからと近年見直されているそうな。


「先生、この大通りの家は他の物と大きく違いますね。ローマンコンクリートか漆喰に見えます。もしかして建設された年代、いや作った『モノ』が違いませんか?」


 俺は、先生に疑問を質問してみた。


「キミは古代建築にも詳しいのかね? ああ、私もそう思っている。他の遺跡は、人間が住むには向かない形状をしている風だから」


「それはそうじゃな。そこは元は『(いにしえ)のもの』と呼ばれる人類以前に地球に()った知的生命体が作った都市だからのぉ」


 意外な事に、チエちゃんから答えが出る。

 俺は、その種族の名前を知っている。

 「アル」との戦いをする関係で、「邪神(クゥトルー)神話体系」の魔物・邪神達について学んだから。


「じゃあ、ここは狂気山脈にある地下都市なの?」


「おそらくはそうじゃろう。だからショゴスが出てくるのも納得じゃわい」


 なんと「門」は南極にあると言われる狂気山脈地下都市に繋がっているとは!

 そして、地下都市と「聖櫃」の関係はどうなっているんだ?



ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。


皆様、宜しくお願い致します。

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