第152話 康太は冒険者になる:その1「やっぱりどこかおかしいゾ?」
これより、新章の開幕です!
物語は更に壮大、かつ面白くなっていきます。
毎日更新頑張りますので、乞うご期待を!
俺達が苦労の末にたどり着いた遺跡最深部に眠る石造りの祭壇。
そこに、まるで「王選定の剣」のように突き刺された剣とも杖にも見える不可思議な神器。
「ソレ」は叫ぶ。
「新たなる我が主となるものは誰ぞ!」
五つ巴になる神器争奪戦が、今始まる!!
◆ ◇ ◆ ◇
「康太よ。よくぞ、ここまで我が家に伝わる秘宝を使いこなした! その上、神剣まで扱うとはアッパレじゃ! 流石は我が孫じゃ!」
10月初旬、俺達は今マユ姉ぇの実家、秋山家に来ている。
リブラ戦から約1月、俺の体調も完全復活。
課題だった修士論文も大詰め部分が書きあがり、今は誤字脱字チェック中。
吉井教授の見立てでは多分OK、家庭の都合で今年度いっぱいで大学を退任される研究員の方がいらっしゃって、欠員に俺をどうかという話も来ている。
これで、俺も夢の考古学研究者の仲間入りが出来そうだ。
まあ、次は博士論文が待っているんだろうけどねぇ。
で、さっき俺を褒めてくれたのが、俺やナナ達の爺さんにしてマユ姉ぇやカツ兄ぃのお父さん、秋山 正蔵。
70代半ばにしては背筋もシャッキリ。
短めの白髪と白い顎鬚、作務衣が似合うジジイである。
霊能力者を多数輩出してきた秋山家の当主、威厳たっぷりタイプかと思うが、実際には子煩悩、孫煩悩。
長男を幼くして亡くしている反動か、とことん子供達に甘い。
今も、すごく威厳あるっぽい台詞を言っているんだけど、絵面がそうなっていない。
「ナナや、もっと奥に座るんじゃ。2人が入れないぞ。リタちゃん、遠慮しなくていいんじゃ。チエちゃんもこっち寄るんじゃ!」
孫娘3人をあぐらをかいた膝の上に座らせようと、無茶を言っている。
「おじーちゃん、もうボクやリタちゃんは大きいんだから3人同時はムリだって」
「おじいちゃん、ありがとう」
「お祖父様、ワシ嬉しいのじゃ!」
まー、3人とも喜んでいるから良いか。
「おう、康太。羨ましいか? これはジジイの特権じゃ! 老い先短いオレが楽しんで何が悪いんじゃ! 羨ましいなら、お前も嫁さん捕まえて励んで子作りするんじゃ!」
あー、じじい本性出したか。(笑)
どこが老い先短いんだか、まだまだ10年は楽勝って顔しちゃって。
爺さん、由緒正しい霊能力者輩出の名家の当主という仮面を外せば、ただのファンキーじじい。
どうやら秋山家のオタク系気質は爺さんからの遺伝らしい。
「あらあら、貴方。羨ましい事。ねえ、皆。私のところにも来てくれない?」
「はーい、おばーちゃん」
「うん、おばあちゃん」
「おう、お祖母様!」
3人娘は、声の主の方へ飛んでいく。
その主こそ、真の意味での秋山家当主、秋山 歌子。
俺達の祖母、婆ちゃん。
実は、爺さんは婿養子で秋山の名を継いでいる。
家系に伝わる霊能力は殆ど婆ちゃんからの遺伝、どうもマユ姉ぇ以上の逸話持ちらしいんだけど、恥かしがって孫達には全然教えてくれない。
マユ姉ぇに聞いたら、ごにょごにょ言って誤魔化していたら、相当のモノの様な気がする。
婆ちゃんは爺さんの一つ年上の姉さん女房。
今も矍鑠として近所の奥様方を集めてお花やお茶会なぞやっている。
美人というよりカワイイおばあちゃんタイプ、年齢が読めないのは娘のマユ姉ぇと同じかな。
「おいおい、ウタさん。オレから孫を取るんじゃないよぉ」
孫娘を全部取られた爺さんは文句を言う。
まー、たった一言で奪われちゃしょうがないかな。
「なら、そこにも孫がいるでしょ。コウちゃん、お爺ちゃんを構ってあげてね」
婆ちゃんにそう言われたらしょうがない。
「爺さん、俺お相手しようか?」
「えー! もう20歳越えた男の孫なんて可愛げも無いのに。オレは女の子がいいんじゃ!」
「駄々捏ねるんじゃありません! 正蔵さん、貴方コウちゃんに伝える事があるってずっと言っていたでしょ。いつまでも元気じゃないんだから、そろそろ口伝のワザ教えてあげたらどうなの?」
え、それはどういう事?
「お父さん、霊能力よりも剣術派なのよ。それでお母さん惚れさせたって言ってたわよね?」
「おい、真由子や。それを今言うんじゃない。お父さん恥かしいじゃないか」
婆ちゃんの方を見ながら赤面する爺さん。
この夫婦も仲が良い事だ。
「そうなの、婆ちゃん?」
俺は婆ちゃんに直接聞いてみた。
「そうねぇ。確かに正蔵さん、若い頃はカッコ良かったわよ。まさか、変な趣味持ちだとは結婚するまで知らなかったけど」
「オレの刀剣趣味の何処が悪いんだ! 刀剣なんて今や若い女の子にも人気なのにぃ。それにウチの納屋つーか魔窟にもまだ刀剣あるんじゃないかよ!」
おい、ジジイや。
刀剣女子までチェックしているのかよ!
やはりオタクの血は薄まらず、濃くなるばかりなんだねぇ。
「いつものヤツでまだ納得していないんですか? それだって重要文化財級ですのに」
「うー、そりゃ今のは絶品だよ。でも他のも見たいんだもん」
だだコネじじいは、可愛くないぞ。
「じゃあ、後で蔵を開放しますから、コウちゃんにワザ教えてあげてね」
「ありがとう、オレますますウタさんの事好きになっちゃうぞ!」
真っ赤になってしまう婆ちゃん。
「もー、いい歳して何言っているんですか。ホント恥かしいお爺ちゃんですねぇ」
「おじーちゃん、やるねぇ」
「おじいちゃん、おばあちゃんのこと、すきすきね」
「うむ、幾つになっても夫婦仲良いのは素晴らしいのじゃ!」
孫娘達に茶化される仲の良い老夫婦。
俺もこんな感じになりたいなぁ。
「マユさん、僕達もこんな風に歳取りたいね」
「ええ、だからコウちゃん早くどっちかに決めてね」
えー、なんでそこで俺の問題に成り変るの?
マユ姉ぇの中では、ナナかリタちゃんが俺の嫁候補決定なのかよ!
でも、チエちゃんルートは無いよね。
「ん、ワシならコウタ殿こそ大歓迎じゃが?」
だからチエちゃんまで出てきて、話を混がらさせないでよねぇ!!
「ほう、そういう事か。従兄妹同士は結婚可能じゃからのぉ。孫同士が結婚というのも面白いのぉ。オレ、長生きしなきゃな」
だから、じじい。
話をそっちに持っていくんじゃねー。
「皆、俺の意思を無視して話進めないでよぉ」
「ボクはコウ兄ぃなら良いよ。というかボクお嫁さんにして!」
もう無茶苦茶な話になってしまう秋山家であった、まる。
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