第149話 ナナは生徒会長になる:その8「生徒会長って忙しい:8」
「まずは、どうやって犯人が誰かを調べる事ですね。証拠物件は何かありますか?」
アヤメお姉さんがボク達に捜査のイロハを教えてくれている。
「ワシが見つけた証拠はこれらじゃ。後、ホコリのところで指紋を見つけたのじゃ!」
チエ姉ぇが発見した証拠物件・写真を提示してくれた。
しかし、いつのまに指紋採取までやったんだろうか、流石は知恵の悪魔さんね。
「では、後は学校関係者の全員の指紋採取だけど、……、現実的じゃないわよね」
「うむ、そうじゃな。となると後はワナを仕掛けるというのはどうじゃな?」
確かに今仕掛けているのをウカツに調査するのは危険。
秘密にしないと犯人に捜査している事が気づかれるもん。
だけど、今まで仕掛けていたところに再度仕掛けさせるのはアリかもね。
「すいません、僕達にも分かるように説明してもらえませんか?」
「おう、オレも良く分からないや」
「そうですね、確かに普通の中学生では難しいかもですね。タクト君は分かっているわよね」
「ああ、姉御。俺も随分と姉御と一緒に仕事したんだ。捜査のイロハくらいは分かるって」
「それなら良いわ。じゃあ、今度事件が来たらお願いね」
うむ、この2人も仲が良さそう。
歳の差がけっこうあるみたいだけど、姉さん女房になりそうね。
「事件が発生した場合、被害者・目撃者の証言、そして残される証拠物件が犯人特定に繋がります。最近では防犯カメラや車載カメラの発達で映像証拠が残されている場合も多いですね」
ドライブレコーダーって奴よね。
事故とかの場合に保険会社さんとお話しするのが便利だって聞いたわ。
「むずかしいのね、わたしのほしだと、おはなしだけでつかまえていたの」
「そうですね、日本でも江戸時代以前では証言だけで捕まえていました。江戸の町方奉行所とかになりますと、証拠も重要視されていたとは聞きますが。実際、拷問とかで証言を得ても怪しいものですしね」
そういえば、リタちゃんがアヤメお姉さんとお話するのってあんまり無かった気がする。
別に仲が悪いとかじゃなくて、共通する話題が少ないからだったと思うけど。
でも勉強になるお話しね。
「今回の場合ですと、犯人は定期的に同じ場所にカメラを仕掛けているんですね」
「うん、ベートーベンの眼が光るのはだいぶ昔からある7不思議だし」
ボクはアヤメお姉さんに答えた。
「となりますと、長年学校にいる関係者が犯人に決まりですね」
あ、そうか。
生徒だと3年で入れ替わるから、昔からカメラを仕掛ける事なんて出来ないんだ。
「でしたら、アタシが教職員の情報仕入れておきますね。最近暇だったから、面白そう」
コトミお姉ちゃんは楽しそうに話す。
まー、深刻に話してもしょうがないけどね。
「では、いつから7不思議にベートーベンがあるか分かれば逆算も出来ますね」
「それは僕達の方で調査しておきます。これなら犯人にも分からないでしょうし」
三木君がノリノリで言ってくれる。
さっきまでマナ酔いしていたっぽいけど、チエ姉ぇに解呪してもらって楽になった様ね。
「ええ、吹奏楽部には直接関係していないとは思うけど、注意してね」
「はい、多分そこは大丈夫ですね。吹奏楽部の顧問の先生は、去年赴任してきた人なので、多分無関係ですし。他の音楽の先生も長くて3年目くらいだし」
「そうじゃな。音楽室の壁の加工は随分と昔のもので、綺麗にしておったのじゃ。プールのもだいぶ使い込んだ後があるから、もしかしたら10年単位かもしれん」
チエ姉ぇが調査結果から答えをどんどん出してくれる。
ホント、3人寄れば文殊の知恵って言うけど、すごいね。
「となると、イヤな話だけど映像が表に出ている可能性も否定できないよね。ユニフォームとかの写真で画像検索しようか?」
マサトお兄ちゃんは、情報通のオトコノコとしての意見を言ってくれた。
こういうのはボクじゃ気が付かないよ。
「そうじゃな。念のためにしておくのじゃ。そういう事が無いのを祈るのじゃがな。デジタルタトゥー、それも本人が関与していないものがネットの海で漂うのは、良い気分じゃないのじゃ」
デジタルタトゥーって、確かネット上に一旦拡散した情報は削除が不可能って話だったっけ?
学校のデジタル関係の授業で習った気がするの。
怖いよね、自分の裸が知らない間に世界中に拡散されるなんて。
バカのやるバカッターは、自業自得だと思うけど。
そういえば、バカ話でテロリストが位置情報通知したままバカッターして、アジトがバレたって話あったそうね。
「で、どうやってワナ仕掛けるの? 私の時みたいに挑発するの?」
ルナちゃんは自分がチエ姉ぇのワナに嵌っただけに興味津々だ。
「え、松本さん、何やったの?」
森川君はびっくりしている。
「前に言わなかったっけ? 私、蜘蛛女だったって。その時にマンマとチエ姉さんの挑発に乗って捕まっちゃったの。でも、おかげで家庭状況は改善されたし、お友達も増えたし、生徒会役員までやれているんだもの。感謝しかないの」
ニッコリなルナちゃん。
「そうだったんだ、良かったね、松本さん」
「ルナで良いよ、和也君」
「おう、ルナちゃん」
あれ、案外良い雰囲気じゃないの?
まあ、人見知りだったルナちゃんが男の子と仲良くするのはイイ事だね。
「うぉほん、さあ策の事じゃな。仕掛けるとしたら、音楽室じゃな。あそこにもう一度カメラを仕掛けるように仕向けるのじゃ。そうじゃな、またブラスバンドのイベントがあるから音楽室で着替えをするという話をするのはどうじゃ?」
ほんわかムードを壊さないように気を使うチエ姉ぇ。
ふむ、現場を押さえて現行犯逮捕って事ね。
「ならイベントを作らないとね。となると、生徒会でイベント作らない? それなら不自然じゃないし」
ボクはピンと思いついた。
「そうですね。それなら不自然じゃないし、実際に皆に楽しんでもらえるイベントにしたら一石二鳥ですね」
三木君も賛成の様だ。
「学校でのイベントなら着替えるのも音楽室でおかしくないし、策としては良いよね。なら次はイベントの内容ね。うわー、面白そう」
ルナちゃんも楽しそうで何より。
「確か今度市内の音楽祭にブラスバンドが参加するそうだから、それの壮行会兼プレイベントってのはどう?」
案外情報通の森川君、実に良いアイデアを出してくれた。
「うん、それ おもしろいね」
リタちゃんも喜んでくれて良い感じ。
「うん、それなら吹奏楽部の子達も喜んでくれるよね。ヨシ、その案でいこー!」
「ナナ、良いアイデア浮かんだようだね。俺の出番必要無さそうだけど、大丈夫?」
コウ兄ぃは心配してボクに聞いてくれる。
「うん、大丈夫だよ。第一コウ兄ぃ、論文の方大丈夫なの?」
「う、それはそうなんだけど……」
「そうですよ、先輩。アタシ資料纏めましたけど、有効に使っていますか?」
「あ、えーっと……。はい、大人しく論文書いてきます」
コトミお姉ちゃんにツッコミ喰らって大汗を書くコウ兄ぃ。
もうちょっとで夢の考古学者への一歩進めるんだから、コウ兄ぃには頑張って欲しいもん。
「ボクは大丈夫だから、コウ兄ぃは自分の『戦い』頑張ってね!」
ボクはニッコリと笑みをコウ兄ぃに返した。
「ありがとう、ナナ」
コウ兄ぃは、いつもの様にボクの頭の上に手を置いてガシガシと撫でてくれた。
コレ、子供扱いされている気もするけど、ボク大好きなんだ。
ね、ちょっと頼りないけどカッコイイボクの王子様。
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