第148話 ナナは生徒会長になる:その7「生徒会長って忙しい:7」
「じゃあ、どうやって犯人を捜そうかな」
ボク達は生徒会室で途方に暮れていた。
「そうですね。僕達だけでは手詰まりですね」
「おう、オレも良い手を思いつかないよ」
何か良い手無いかなぁ。
「アヤメお姉様に聞いてみては如何です? 捜査のプロですし」
「そうじゃな、ここはアヤメ殿とかコトミ殿に知恵を借りるのも手じゃ」
ルナちゃんがアイデアを出してくれた。
「うーん、警察の手を初手から借りるのもナンだけど、犯罪行為なんだから良いかな?」
「え、警察の方なんですか、相談しようって人は?」
三木君が驚く。
「アヤメお姉さんは警察庁の人だね。コトミお姉ちゃんは、従兄のコウ兄ぃと同じ大学研究室のお姉さんで情報のプロなの」
「そんな人達とお知り合いなんて、一体どういう事なんですか、会長?」
「おう、オレも知りたいな」
「そうね、話が早いのはウチに来てくれたら説明しやすいんだけど。次に皆が揃うのっていつだったっけ、チエ姉ぇ?」
ボクは説明が面倒くさいから、直接本人達に説明してもらおうと思ったの。
「確か明後日じゃな。集合は19時以降になるが良いのか?」
「どう、三木君、森川君? 簡単になら今でもある程度は話せるけど?」
「僕は構いません。森川君も大丈夫かい?」
「ああ、部活終わってからだから良いよ」
「じゃあ、お母さんに話して晩御飯も準備しておくね。大抵皆揃ってご飯食べながらの会議しているから」
「え、一体どういう集まりなんですか?」
三木君が途方に暮れているけど、まあそれはしょうがないかな。
「うん、ボクも最近良く分からなくなってきているんだけど、近隣の対魔活動報告会なのかな?」
リブラ事件以降は大きな事件が無いから、捜査会議じゃなくなっているね。
◆ ◇ ◆ ◇
「ようこそ、いらっしゃい。いつもウチのナナがお世話になっております」
「はい、こちらこそナナさんには助けてもらっています」
「お母様、オレ、いやボクも会長や会計さんにはお世話になってばかりです」
妙に緊張している生徒会男子組。
お母さんを前にして顔真っ赤だ。
「これ、皆さんで食べてください」
三木君が気を使ったのか、お菓子を持ってきてくれた。
「あらあら、お気遣いありがとうございます。じゃあ、2人とも上がってね。モアイ君、この子達はナナのお友達だから粗相の無いようにね」
お母さんの掛け声でモアイ像さんは、プカプカとリングレーザーを上に撃つ。
どうやら歓迎の祝砲のつもりらしいの。
「え、これは一体?」
「オレ、怖いんだけど」
怯える男子組。
まあ、これが普通よね。
ウチに来る面子って最近「普通」以外の人ばかりなので、この反応は新鮮かも。
「大丈夫だよ。この子達はウチの門番サンだから。あ、1号・2号も来たんだ」
ボクがお客様対応をしていると、元祖門番の狛犬1号・2号も来ちゃった。
そして同じく祝砲とばかりに小さく炎のブレスを吐く。
「あ、あ、これは??」
「う――ん」
ああ、案の定気絶する森川君。
こりゃダメだ。
「ごめん、コウ兄ぃ。ちょっと重いけど、男の子介抱してくれない?」
ボクは大声でコウ兄ぃを呼んだ、
だってボクやお母さんでは森川君を持ち上げられないもの。
「ああ、分かったよ。ふーん、この子達が生徒会でナナと一緒に仕事してくれているんだ。ごめんね、ウチ百鬼夜行だから」
怯えるのと呆れ顔両方の三木君。
まー、しょうがないか。
◆ ◇ ◆ ◇
なんとか復活した森川君もいっしょになっての晩ご飯。
ちなみに今日は「豚の生姜焼き」がメインディッシュね。
「そうですか。警察としては、いきなりは動けませんから、あくまで参考意見として聞きますね。本当なら学校から通報して欲しいんですけど」
アヤメお姉さんは、綺麗な所作でご飯を食べている。
その横ではタクト兄ぃが危なっかしい雰囲気ながらも頑張って綺麗にご飯を食べようとしている。
「ナナちゃん、それは大変だね。俺も妹を覗かれたらタダじゃすまさないな。ねえ、姉御協力してあげようよ」
「それは分かっているわよ、タクト君。今から出来る限りの手を考えるつもりよ」
タクト兄ぃ、暴れん坊だったけど最近はだいぶ落ち着いてきたし、ボクやリタちゃんには優しいの。
妹さんがボク達と同世代だって聞いたけどね。
「では、アタシが学校の教職員全員の情報を調べましょうか? 女性の敵はアタシも許せないし」
コトミお姉ちゃんは、半分面白がりながらもボクを助けてくれる。
お姉ちゃん、夏以降は妙に綺麗になった気がする。
チエ姉ぇに傷を消してもらったのが良かったのかな?
「情報や科学筋なら僕の出番だけど、今回は出番なしかな?」
「アタシの情報収集のお手伝いなら出来ますよね、マサト先輩?」
「うん、それなら出来るね」
コウ兄ぃの友人、マサトお兄ちゃん。
科学系の大学院生で、リタちゃんの魔法デバイス杖の開発者。
ウチに来るメンバーでは唯一魔力なしの人だけど、科学系ではチエ姉ぇと張り合える人。
どうも最近、コトミお姉ちゃんと仲がイイっぽい。
2人とも美男美女で良い人達だから、仲が進展したら良いなと思うのはボクの感想。
「で、ナナはどうしたいんだい?」
コウ兄ぃに聞かれてボクは答える。
「ボクとしては大事にはしたくないけど、不届きモノが学校に居るのは生徒会長として我慢できないの」
「それはすごいね、ナナ。そういえば懐かしいよね、マユさんと初めて出会った時も僕がナナと同じ中学校の生徒会長の頃だったし」
ボク、お父さんとお母さんの馴れ初めの話は、もう聞いている。
「ボク、お父さんよりも立派に生徒会長しているもん。だって、ボクお父さんみたいに気絶とかしないよ」
「えー、それ言うの。マユさん、僕の事どこまで教えたの?」
「全部教えたわよ、だってあの頃から相思相愛ですものね、私達」
あー、甘ったるいよ。
これ思春期の娘の前で言う事なのかしら。
「はいはい、毎度ご馳走様です。ノロケ話はまたね。で、皆何か解決策は無いの?」
ふと静かなのに気が付いてウチの男子組を見ると、固まっちゃっている。
「おーい、三木君、森川君。だいじょうぶ?」
2人の目の前で手を振っても反応なし。
「ダメじゃろ。ワシらの会話は一般人には『猛毒』じゃからのぉ」
チエ姉ぇはモクモクと、しかし上品に大喰らい中。
「うん、おかあさん、すきすきおーら、だしすぎ」
「そうよね、マユ母さんやりすぎだもの。それにここの面子マナ量多すぎて一般人だとマナ酔いしちゃうかもね」
到って普通にご飯を食べているリタちゃんにルナちゃん。
確かにマナ濃度は濃いし、さりげなくボクの小物達がそこいらで飛んでいるし。
「とりあえず、ご飯終わってから話しましょうね。ご飯をきちんと食べないと消化に悪いわよ」
そうか、ボクも「普通」じゃないことに慣れすぎたんだ。
怖いよね、「慣れ」って。
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