第147話 ナナは生徒会長になる:その6「生徒会長って忙しい:6」
「ここには、男の人が来た事が近頃はないのじゃな?」
〝うん、そうなの〟
「じゃあ、女の人でも変な機械とか持って来た事もないのかのぉ?」
〝きかい ってなに? みんな、ちいさなふくろ はもってくるけど、それだけだよ〟
今、ボク達乙女組は1階の女子トイレに居る。
ここは職員室にも近いし、一番大きなトイレなので使用する人も一番多いの。
ふむ、男性は来ないし、女性も小物要れとかエチケット袋以外は持ってきていないと。
「そうか、ありがとうなのじゃ。ところで花子殿は寂しくないかのぉ。良かったらワシが花子殿をここから動けるようにするから、ワシのところに来ぬか?」
〝ありがとう、おねえちゃんたち。わたし、おかあさん に あいたいから、もうちょっと ここにいるね。でも、ときどきあそびにきてくれると、わたし うれしいな〟
「そうか、ワシの方こそ無理を言ってすまんかったのぉ。おお、また遊びに来るのじゃ!」
「うん、わたし も またくるね」
チエ姉ぇとリタちゃんが花子さん、いや花子ちゃんと話している。
花子ちゃん、今はまだなんとか思考を維持しているけど、ずっと孤独でいたら悪霊化しちゃう危険性もある。
過去の思い、「お母さんと会いたい」という自縛をしているから、女子トイレから動けないんだ。
といって、現実の事、花子さんが亡くなって70年以上経っているから、お母さんが「こっち」に居ない事を彼女に言っても理解されないだろうし、最悪花子ちゃんの自我が崩壊したらそれまで。
だから、今は孤独にならない様、自我を維持できるようにお話できるボクとかがお話してあげて、いつかは訪れるだろう成仏へ送っていってあげる様に願っている。
「可哀想な子なんだけど、私達はあの子に何がしてあげられるのかなぁ」
ルナちゃんが、涙を拭いつつ小声でボクに話す。
「そうだね、ルナちゃんが良かったら時々お話してあげたら良いよ。花子ちゃんが自分で成仏できるように、それまで正気で居られるようにね」
自縛霊は、花子ちゃんみたいに善良なら良いけど、自分に起こった災いを分かってくれる相手に与えようとする悪霊寸前のモノも多い。
そういう霊には、話しかけるのは危険だね。
最悪分かってくれるからと呪縛されたり、憑かれたりもするから。
「一応言っておくけど、ルナちゃん。花子ちゃん以外の自縛霊には勝手に話しかけないでね。危険なヤツも多いから」
「うん、それはチエ姉さんやマユ母さんに随分と教えられたから分かっているよ」
そうそう、最近ルナちゃんはお母さんの事を第二のお母さんという事で、「マユ母さん」って呼んでいるの。
お母さん、「マユ母さん」って呼ばれたとき、すっごく嬉しそうだったね。
◆ ◇ ◆ ◇
「ここにも何か仕掛けられた跡があるのじゃ!」
今はプールの女子更衣室、チエ姉ぇが早速覗きの痕跡を発見してくれた。
ブロックを積み上げて鉄骨で強化しているウチの更衣室。
これも緊急の増築で追加工事で作られたんだとか。
「ブロックの隙間にピンホールがあるのじゃ。そこに何か細いモノを何回も通した痕跡があるのじゃ。多分、赤外線ピンホールカメラじゃな」
こういうハイテク機器にはボク詳しくないから、何でもござれのチエ姉ぇが居てくれて大助かりね。
「なら、今も使用されている運動部の女子更衣室には、まだカメラが仕掛けられていてもおかしくないの?」
「そうじゃな、おそらくはな。ただ、これだけ広範囲に高価なカメラを仕掛けるのじゃ。犯人は単独犯じゃないかもしれんし、教師の可能性も高いのじゃ!」
そうなると事態は大事になるのね。
どうしよう、こんな事件ボクの手に負えるんだろうか?
なんかとっても不安になってきたの。
「チエ姉ぇ、どうしよう。ボクじゃどーにも出来ないかも」
チエ姉ぇは、困ってしまったボクを慰めてくれた。
「大丈夫じゃ、ナナ殿。ナナ殿にはワシを含めて多くの味方・仲間がおる。警察にもコネがあるんじゃから、やるだけやれば良いんじゃ!」
「うん、おねえちゃん。わたし も おてつだいするよ!」
「ナナちゃん、今度は私が助ける番だよ。任せておいて!」
チエ姉ぇだけでなく、リタちゃんやルナちゃんもボクを励ましてくれる。
「皆、ありがとー!」
ボクは思わず、皆のところに飛び込んでハグをしちゃった。
「おうおう、泣かんでもいいのじゃぞ」
チエ姉ぇがヨシヨシしてくれる、そしてリタちゃんやルナちゃんはヒシってハグし返してくれた。
ボクって本当に仲間に恵まれているよね。
◆ ◇ ◆ ◇
「三木君、森川君、そっちはどうだったの? こっちはカメラを仕掛けた跡は見つけたの」
ボク達は一度生徒会室へ集まった。
「ええ、こちらは柔道部を調べましたが、発見は出来ませんでした」
うん、まあ悲しいかな華やかさでは劣る柔道部が、覗き犯から放置されるのはしょうがないかな。
「他の部活には、いきなり覗き犯捜査だって行くと話が大きくなりそうだから、今日はやめておいてね」
「そうですね、犯人に感づかれてもイヤですしね」
「しかし、どんなヤツなんだろう? 覗きなんてやるヤツって」
憤慨気味の生徒会男子組。
「うむ、お主らオトコなら少しは分かるのでは無いかな? ワシは、知識としては思春期の性欲というものは知ってはおるがな」
チエ姉ぇは、ボクとかでは聞きづらい事を男子に聞いてくれた。
女子中学生が男子に「性欲」なんて聞けないよぉ。
「正直言えば、僕も興味が無いとは言えません。僕も健康な男子ですから女子に興味はあるし、裸も見たくないとは言いません。でも卑怯に同意無く女子の裸を見るのと、納得してお互いに見合うのとは違うと思います」
「おう、オレも同意見だね。そりゃ女子の裸はオレも見たいよ。でも正々堂々見ないとね」
「うむ、良い意見じゃ。お主らの年齢なら『色々』やって性欲の発散もせねばならんしのぉ」
「それって『オカズ』って奴? 私の裸も誰か使っているのかなぁ?」
「おかず とか せいよく ってなに? おねえちゃんたち、わたし にも おしえて?」
うわー、ボクじゃ恥かしくて「そこ」まで言えないよぉ。
案外、ルナちゃん耳年間なんだぁ。
リタちゃんにはボクから教える必要あるのかなぁ。
「うむ、リタ殿。後でワシや母様から教えるのじゃ!」
よし、任せたチエ姉ぇ。
因みに男子組は赤面状態だし、妙に腰周りの雰囲気がおかしい。
えーっと、「そういう」事なんだろうか。
誰の「裸」、想像したんだろう?
まあ、ボクのじゃないよね、多分。
チエ姉ぇの悪魔形態かな、男子の視線はチエ姉ぇに向いているし。
あれだけ巨乳美人さんじゃね。
ボク、お母さんみたいに「大きく」綺麗になれるのかなぁ。
コウ兄ぃ、ボクみたいに「小さい」ので良いのかなぁ。
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