第146話 ナナは生徒会長になる:その5「生徒会長って忙しい:5」
「ふむ、この鏡が雲外鏡殿か。おい、最近また沢山人を脅かしているそうじゃが、どうしてじゃ!」
ボク達は、今2階家庭科室前の廊下に設置された姿見鏡の前にいる。
「ひぃぃ、なんで貴方様のような高位なお方がワシの前におるんじゃぁ!!」
鏡が震えながら話すのって中々見ないよね。
なお、雲外鏡サンは普通に音声会話する事が出来るの。
「ひぃぃぃ、チエ様、お助けぇ!」
怖がりの森川君、チエ姉ぇの肩にしっかりとしがみついて、その大きな身体を小さなチエ姉ぇの後ろに隠そうとしている。
「まさか、鏡が話すなんて!」
メガネを弄りながら鏡を眺める三木君。
「この鏡、けっこう映り良いから、いつも使っていたけど妖怪さんだったのね」
「かがみさん、こわがらなくてもいいよ」
マイペースなウチの乙女達。
「ねえ、雲外鏡サン。あんまり悪さしていたら、お母さん呼んでくるよ」
ボクの一言で更に震え上がる雲外鏡サン。
「ひぃぃ、真由子様まで来られては、ワシ割れてしまいますぅ。それはご容赦をぉ」
泣き言をいう鏡ってのは珍しいよね。
「なら、あんまり騒ぎになるような事しないでね」
「そうじゃ、ここはワシの家族や友人が多く通う学舎じゃ。お主が居るのは別に構わぬのじゃが、騒動になっては元も子もないのじゃ。適度に脅かす程度にするのじゃな」
「はい――!」
ボクだけでなくチエ姉ぇからの「説得」に震え上がりながらも、返答をした雲外鏡サン。
「分かってくれたのなら良いよ。ボクも雲外鏡サンの事は好きだから酷い事したくないし」
ボクもお母さんに相談できない友達の事とか雲外鏡サンに相談した事があるし、長年学校で生徒を見てきたから雲外鏡サンの意見って案外頼りになるんだ。
「騎」事件の後も、ボクを助けられ無かった事とか、「騎」の僕を学校中に作られていた事に気がつかなかった事を後から態々ボクに謝ってくれたし。
実際、アイツ相手では雲外鏡サンではムリだっただろうし、しょうがないよ。
「そうだ、ちょうどいい機会だから教えて欲しいんだけど、今この学校には他に妖怪さんや幽霊さんとかいるの? 花子サンは除くとして」
ボクは学校の事について物知りな雲外鏡サンに学校での怪事件について聞いてみた。
「うむ、自我の無い動物霊・雑霊とかは居るが、他には花子殿以外には何もおらんぞ。一応、この学校の主はワシじゃから何かあればワシに連絡があるのじゃが、今のところ何もないぞ。去年の悪魔事件とかは困ったモンじゃが」
「そうなんだ。どうもありがとうね」
「すまんのぉ、雲外鏡殿。その悪魔はワシの元同胞なんじゃ。もうそういう事は無いようにするから、安心するのじゃ!」
「チエ様、こちらこそあの際にはナナ様を守れずに、すまんかったのじゃ。では、ナナ様、真由子様には宜しく言っていただけると助かるのじゃが」
「どう致しましてなのじゃ!」
「うん、ボクは気にしてないからね。お母さんにもちゃんと言っておくね」
ふむ、そうなると音楽室はオカルトじゃないんだね。
となると、人為的な事かな?
◆ ◇ ◆ ◇
「ほう、これはカメラ穴じゃな」
チエ姉ぇは、森川君に肩車してもらい、音楽室のベートーベン肖像画を見ている。
「えー、カメラ?」
「そうじゃ、この額縁の後ろを見るのじゃ! すまんが森川殿、頼むのじゃ」
「はい、チエ様」
チエ姉ぇが森川君に手伝ってもらって、ベートーベン肖像画を額縁毎動かすと、そこには10cm四方の穴が奥行き30cm程開いてあった。
もちろん今はカメラとかは置いていないけど、カメラの置いていたらしい跡がホコリの形で分かるらしい。
「じゃ、誰かが盗撮しているの?」
「えー、誰よ。そういえば音楽室って吹奏楽部のブラスバンドの子が着替えに使うよね」
「えっち、だめ!」
「まあ、そういう事じゃな」
チエ姉ぇはボク達乙女組の意見を聞いて困った顔をしながら、スマホで証拠写真を写していた。
「そうなると、学校内部の犯行になりますね」
やっと人間相手の推理となって、出番が出たのが嬉しそうな三木君。
お得意のメガネくいっポーズをする。
「じゃあ、吹奏楽部の子に聞いてみようよ」
ボク達は音楽室内で練習をしていた吹奏楽部の子に何か変な事が無かったか聞いてみた。
「そういえば、女子が着替えをここでやっている時に、ベートーベンの眼が光るって言っていたような」
「しばらくはブラスバンドの活動無いから、今はここで着替えしていないよ」
「なるほど、今カメラが仕掛けられていない理由も分かりましたね」
三木君が手を顎において考えているっぽいポーズを取る。
「そうね、じゃここにはもう当分カメラは仕掛けられないから、今カメラがありそうなのは……」
「体育系部活の女子更衣室よね、普通。念の為にプールの女子更衣室も確認しなきゃ」
ルナちゃんが答えを言ってくれる。
まあ、普通そうなるよね。
「最悪、女子トイレとかもありそうじゃが、それは花子殿に聞いておこうかのぉ」
「そうね、じゃ先に女子トイレ行って次にプールかな」
ボクはチエ姉ぇに同意した。
「しかし、女子の着替えを盗撮とは失礼千万、我ら生徒会が犯人見つけるべきだ!」
三木君、案外熱血しているよ。
てっきり先生に言うのかと思ったんだけど。
「どうして先生に通報しないの。まあボクとしてはボク達で解決したいんだけど」
「万が一、先生の中に犯人がいたらややこしいですからね、会長」
「うん、オレもそう思うよ。そうそう運動部の方は先にオレから話を通しておくね。副会長、俺達は女子トイレや更衣室には行けないから、ここから別行動しないか?」
「ああ、そうするよ。それでは、会長、チエさん宜しくお願いします」
三木君と森川君が話を進めてくれたので、ボクはそれに乗っかる。
「うん、じゃこちらこそ宜しくね」
「宜しくなのじゃ!」
「はい、了解です」
「チエ様、オレ人間相手なら怖く無いから任せてくださいね」
さて、では女子トイレへGoだね。
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