第143話 ナナは生徒会長になる:その2「生徒会長って忙しい:2」
「えっちゃん、詳しく教えてくれる?」
「うん、ナナちゃん」
ボク達は、放課後にメール発信者の倉敷 悦子、えっちゃんに直接聞き込みに来た。
「ワタシ、最近変な噂を聞いたの。学校の7不思議を全部知った人は大変な目にあって地獄へ行くって。そんなのタダのオカルトで根も葉もない噂と思っていたの。でもね、魔の階段とかで怪我人が出たの見たし、音楽室で誰も居ないのにピアノの音を聞いた子が入院したって聞いて怖くなったの。ナナちゃん、オカルト詳しかったよね。ワタシを助けて!」
学校に伝わる7不思議。
年々微妙に変わっていくのだけど、今は以下の7つね。
1:動く理科室の人体模型
2:恐怖の階段
3:眼が光る音楽室のベートーベン
4:魔の鏡
5:トイレの花子さん
6:美少年の悪魔
7:イジメっ子を吊るす蜘蛛女
このうち、6、7はボクらが当事者。
6はボクと学校で戦った内藤先輩こと魔神将「騎」。
そして7が蜘蛛女としてイジメと戦ったルナちゃん。
また、花子さんや魔の鏡にも心当たりがありすぎ。
だから、7つの不思議と地獄うんぬんが全く関係ないのはボクらが一番良く知っているの。
「えっちゃん、大丈夫だよ。7不思議はえっちゃんに悪さしないよ」
「そうよ、悦子さん。私が絶対大丈夫って保証するわ。絶対、もう蜘蛛女は出ないから」
妙に力を込めて蜘蛛女の出現を否定するルナちゃん。
当事者なだけに、自分がワルモノ扱いされるのはイヤだろうね。
「本当? ワタシ大丈夫なの?」
「うん、ボクが保障するから。で、えっちゃんは何と何を見たの?」
涙ぐむえっちゃんにボクは7不思議の何を見たのか聞いた。
「人体模型と、階段と、ベートーベン、鏡に悪魔なの」
えっちゃんが「騎」にボクを教えておっかけっこになったから、「騎」を見ていてもおかしくないよね。
「人体模型が動くのを見たの?」
「うん、手足が風も無いのにプラプラとしてたの」
ふーん、これは現物を見ないとね。
「階段は、あそこから落ちる子を何人も見たの」
あ、あそこね。
「階段は怪談、うん、オカルトじゃないよ。アレ、原因があるんだ。教育委員会に学校を通して改修の陳情出しているから、もうすぐ良くなるわ」
いけないなぁ、チエ姉ぇの駄洒落クセが移ってるよ
その階段は3階と2階を繋ぐ階段だけど、学校増改築時に追加で作られた階段なの。
緊急突貫工事だったらしく、微妙に壁や手すりが垂直でないし、階段の段差や幅が1cm以内だけどバラバラなの。
だから視覚に頼っても、感覚に頼っても段差を踏み外して転げる仕組み。
今まで原因不明だったのを、副会長の三木君が計測して原因を発見した訳ね。
「そうなの? ベートーベンは本当よ、目がピカって光ったんだもの」
音楽室には妙な感じ無いから、逆に怪しいな。
これも出張って調査しなきゃね。
「うんうん、信じるよ。鏡については、今度ボクが文句言っておくよ」
「? どうしてナナちゃんが鏡に文句言うの?」
「まあ、そこは置いておいてね。悪魔さんは事情知っているから大丈夫。もうあの悪魔も出ないから」
魔の鏡と言われる鏡は、2階家庭科室前の廊下にある大きな姿見鏡。
確か、昭和時代、戦争前からの旧校舎から移設されたって話をお母さんから聞いたの。
で、この鏡が九十九神、雲外鏡サンなのね。
イタズラ好きで、夕方以降悪遊びしそうな生徒を見つけては脅かしている。
基本、悪い子じゃないから良いけど、あんまり問題になるならボクとリタちゃんで締めておかねば。
「後、蜘蛛女サンはもう出ないし、トイレの花子さんは……、まあ大丈夫かな?」
トイレに現れると言う「花子さん」。
一般的には赤い服の女の子らしいけど、我が校の子は防空頭巾を被った10歳くらいの女の子。
戦争中の空襲でお母さんと逸れて、ここで亡くなった可哀想な子の残留念、自縛霊なの。
コウ兄ぃとかに聞いたら、学校は昔からここにあって避難防空壕もここにあったそうなの。
彼女はあまりに可哀想だし、今のところ無害で寂しそうにしているだけなので、お母さんと相談してボクが時々お話して彼女が自分から成仏できるようにお手伝いをしている。
なので、彼女も絶対悪い事はしない。
まあ、霊波長があっちゃうと見えてしまうのかも知れないけどね。
「ホント? ワタシ、大丈夫なの?」
えっちゃんはボクの両肩をがっしりと握って泣きそうになりながら聞く。
「だいじょーぶ。生徒会長のボクに任せてよ!」
◆ ◇ ◆ ◇
「会長、そんな安請け合いして良いんですか? 階段の件は僕が解決しましたが、他は何がなんだか分からないですよ」
副会長の三木君がボクに文句を言う。
「大丈夫、人体模型とベートーベン以外は解決済みだから」
「それはどうしてですか?」
「うーん、オカルト信じない三木君には説明しづらいなぁ」
「会長、もう怖い話するならオレ帰りますよ」
震え上がっている庶務の森川君。
大きな図体が震え上がっているのは、ちょっとカワイイかもね。
こういうの母性本能っていうんだろうか?
コウ兄ぃもそういうところがあるけど、ボクの王子様だもん。
「大丈夫ですって、三木さん、森川さん。私も保証しますから」
「うん、わたしも ほしょう するよ」
「なんでキミ達もそういえるんだ?」
「だって、蜘蛛女って私の事だもん」
ぼろっと言っちゃうルナちゃん。
自分からバラさなくても良いと思うんだけど。
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