第142話 ナナは生徒会長になる:その1「生徒会長って忙しい:1」
ここから、ナナ達中学生組を主人公とした外伝をしばらくお送り致します。
ハードだった第3部と違い、ギャク満載のオカルトコメディです。
「もー、なんでこんなに仕事あるのよーぉ!」」
ボク、岡本ナナは、机の上に積みあげられた書類の山を前に途方に暮れていた。
「会長、いままで仕事をサボっていたのが悪いんですよ。お家の用事が多いとか事情があるんでしょうけど、会長に就任した以上業務をお願い致します」
「はーい」
ボクに意見するのは、副生徒会長の三木 幸男君。
ボクと同じ中学2年生男子。
先日行われた生徒会長選挙でボクと決選投票まで争って、僅差で負けた子だ。
クールな印象のメガネ男子で、成績も学年トップクラス。
いかにもマジメなイメージで先生方からの印象も良い。
ボクと正反対なタイプだね。
「うーん、これってどう書けばいいの?」
「これは、ここに記載例があるよ。こう写したら良いんだよ、ナナちゃん」
書記になったルナちゃんが、ボクに教えてくれる。
ルナちゃん、元々頭はボクよりも賢いし、字も綺麗。
それに先生受けも良いので、ボクが転校直後にルナちゃんを書記に指名したんだけど、誰からも文句は出ず、書記になってからは逆にボクも色々助けてもらっている。
「おねえちゃん、よさん はこれでいいの?」
会計は、これまたボクの独断指名でリタちゃん。
リタちゃんは、まだ日本語、特に漢字を書くのが難しいから、得意なお金勘定をお願いしている。
リタちゃんに関しては、全校一致&教師達からも絶賛で承認されているの。
「書記、会計! ここは家ではありません。公私混同はやめてくださいね」
むー、うるさいなぁ。
いいじゃないの、別に。
「副会長、いいじゃないか。どうせこの部屋に居るのオレ達だけなんだから。細かい事言うなよ。ね、リタちゃん」
「うん、かずやにいちゃん」
副会長に口を挟んだのが、庶務の森川 和也君。
中学2年生ながら170cmの長身に大柄の体格をしている。
柔道部の新エースとして生徒会と兼務しているナイスガイ。
3人兄弟の長男だとかで、リタちゃんにえらく甘い。
まー、姉としては嬉しい事だ。
「会計のリタさん、学校ではおにいちゃん呼びはやめましょう。先輩とか『さん』とか言わないと」
「副会長、ちょっとうるさいよ。会長のボクが許可しているんだ。公式の場ならいざ知らず、生徒会室での呼び方なんてどーでも良いんだよ」
ボクはジト眼で副会長を睨む。
「ごめんなさい、みきせんぱい。わたし、どりょくするの」
涙目で副会長を見上げるリタちゃん。
「う、いや僕も言いすぎたよ。考えてみれば帰国子女のリタさんに敬語とか言うのは難しいよ。公式の場でキチンとしてくれたら後は言いやすいようにしたら良いよ」
雰囲気に耐え切れず謝る副会長に対して、リタちゃんは笑顔でお礼を言った。
「ほんと、ありがとう。ゆきお にいちゃん!」
「ああ」
顔を真っ赤にして照れる副会長の三木君
リタちゃんの涙目と笑顔の連続パンチを喰らったら、ボクでもダウンしちゃうもん。
これでリタちゃんの撃墜数がまた増えたよね。
「これで私も大手を振って呼べるわ、ね、ナナちゃん、リタちゃん」
「うん、るなおねーちゃん」
ドサクサに紛れて話を進めるルナちゃん、さすがやりおる。
中学校の生徒会は、良く漫画とか小説で描かれるような特権があるとか教師よりも権限があるとかいう事は全く無いの。
形上、学生の自治と教育の一環として認められているだけで、実情は教師の方々のお手伝い、学校行事なんかでの裏方に過ぎない。
様は「なんでも屋さん」かな?
「にしても、書類多すぎ! 今時なんだから電子決済とかにしないの?」
「生徒会には、そんな予算ありませんよ。色々お願いして、やっとパソコン1台とプリンターを支給してもらっているくらいなんですから。回線は学校のを貸してもらっていますけど、間違っても変なサイト見ないで下さいね」
「あのね、ボクこれでも女の子だよ。そんなにエッチなの見ないよ。それに見るのなら家で見るって」
「うん、えっち、だめ」
リタちゃんにダメ押しされて、逆に赤面している三木君。
そりゃキミ達男子は年中モンモンしているよね。
でも良かったね、ボクやリタちゃんはエロくなくて。
ルナちゃんは、美人でスタイル良いから気をつけてあげないとね。
「会長、『目安箱』に調査依頼が入ってます」
庶務の森川君が、大きな指でそのパソコンをぽちぽちと操作してメールをヘッダー込みで印刷してくれた。
目安箱とは、江戸時代の将軍様が庶民からの要望や不満を聞くために設置した投書箱なんだって。
確か「暴れん坊将軍」の頃だったけ?
それをもじって、ウチでは生徒会直通の苦情受付メールアドレスを目安箱と言っているの。
よし、ちょうど書類の山から逃げる良いチャンスね。
「メール発信源は携帯からね。氏名は『記入あり』ね。あれ、これって『えっちゃん』じゃない?」
えっちゃんとは去年同じクラスだった女の子、倉敷 悦子。
「学校7不思議を全部見た人は地獄へ行くという噂があります。私は5つまで見ちゃいました。怖いので助けてください、だって?」
どこの中学校にも何故か7不思議というものがある。
ウチにも、もちろんあってボクも聞いた事があるけど、正体を知ってしまえばたいした事がないのばかりだ。
特に最近上書きされた6つ目7つ目に関しては、ボク達が原因の一因だもの。
「学校の7不思議ってまた古典的なネタですよね。まさか会長は真に受けないですよね?」
三木君は、メガネをクイっとしながらボクに意見する。
「オレはオカルトは勘弁。怖いもん」
大きな図体をして森川君は怖がりなのだ。
「おねえちゃん、これって」
「ナナちゃん。私の事だよね、コレ」
ウチのオカルト娘達は、皆心当たりがありすぎ、というか怪談そのものだもの。
その上、どーやら強い魔力持ちが学校に多く居るせいで、最近学校が魔力溜まりになっているぽい。
ウチだと、お母さんがしっかりと結界の維持管理をしているし、チエ姉ぇが余剰魔力を貯めて活用しているから問題は無い。
近日中に学校にも何かやらないといけないのかもね。
「ボク達ご指名での依頼だもん。ネタにしろ事実にしろ解決しなきゃ、生徒会の名折れよ。会長命令、直ちに活動開始!」
さあ、ボクの腕の見せ所だよ!
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