第136話 康太は公安と仲良くなる:その40「邪神戦争:1」
「大変じゃ! 朧から連絡じゃが、リブラのヤツ暴走したのじゃ! 今、何もかも飲み込みながら巨大化しておるのじゃ! とりあえず、避難指示をしたところじゃが、このままではどうなるか分からんのじゃ。急いで今向かえる面子で対処するのじゃ!」
アジトが確認出来たので、明日にでも強襲する準備をしていた俺達だが、事態は予想よりも早く動いた。
現場監視を朧サンに頼んでいたので、まだ対応が速く出来たけど、これは急がないと。
「私達が先行しましょ。チエちゃん、そこまで空間跳躍出来るわよね。コウちゃん、ナナ、リタちゃん、カレンちゃん、シンミョウちゃん、行くわよ! 正明さん、ルナちゃんをお願いします」
「ああ、マユに皆、気をつけて」
「ええ、帰ったら、また何処かに皆で遊びに行きましょ。だから怪我せずに勝つわよ!」
「おー!!」
さあ、これで最終戦になるよう頑張るぞ!
◆ ◇ ◆ ◇
「うわー、何あの山は?」
ナナが見上げているのは、粘液に塗れた山としか言えない肉の塊。
表面がブツブツと泡だっていて、徐々に拡大しているのが見える。
「アレがリブラの成れの果てじゃな。おう、アヤメ殿。避難状況はどうなっておる?」
アヤメさんが、空間跳躍してきた俺達に気が付いてこちらに来てくれる。
「今、半径200mまでは避難完了はしていますが、どこまで巨大化するか分かりませんから、どうするか協議中です。なお、避難勧告前に数名は、アレに飲み込まれてしまった様です」
くっそー、手加減せずにリブラの息の根止めておいた方が良かったのかよ。
「コウタ殿、悔やむのは後じゃ。今は被害を軽減するのが優先じゃ。さて、この状態なら『あのワザ』が使えるのじゃ。朧よ、居るんじゃろ?」
「御意!」
朧サン、ご老人を抱えて現れる。
「すいません、避難のお手伝いをしていて遅くなりました」
「それならイイのじゃ。では、そのご婦人をお送りした後にヤルのじゃ!」
「御意! 奥様、申し訳ありませんが、もう少しご辛抱下さいませ」
「はいぃ」
朧サン、年配のご婦人をお姫様だっこで抱えて飛んできたらしい。
ご婦人は美形な黒執事を見上げて、顔を紅潮させた様子は、まるで乙女の様。
罪作りな朧サンですこと。
◆ ◇ ◆ ◇
「すいません、中々奥様が手放してくれませんでしたので、少し時間がかかってしまいました」
「しょうがないのじゃ。さて、朧よ。『アレ』やるのじゃ。まずは避難とバトルフィールドの確保じゃ!」
少し衣服を乱して再び現れた朧サン。
何があったかは、なんとなく分かるけど忙しいから、後で聞きますか。
2人は、小山になったリブラの上空に飛び上がる。
「じゃあ、行くのじゃ! 空間制御! 朧よ、お主は空間拡張をするのじゃ! ワシはそれを固定するのじゃ! いけー、でぃばいでぃんぐ・ふぃーるどぉー!!」
朧サンが、リブラの中心付近に漆黒の球を打ち込む。
それは打ち込まれた点を中心に広がっていく。
「うぉぉ!」
チエちゃんが珍しく吼える。
その咆哮に従い、漆黒の空間の拡張速度は加速する。
そして漆黒空間はリブラを全て飲み込み、更に広がる。
ん? あれ、建物が飲み込まれていない。
空間はどんどん広がっていくのに周囲の建物は外に追い出されていく。
そして直径300m程まで広がった異空間はそこで安定した。
「ふぅぅ。うまく行ったのじゃ! これぞワシの奥義の一つじゃ!」
空から降りてきて汗を拭うチエちゃん。
「チエちゃん、お疲れ様。あれって空間を大分弄ったよね。まるで一点を拡張させて他を追い出したような?」
「そうじゃ! あの異空間内からは、こちらには干渉できぬ。存分に戦えるフィールドなのじゃ!」
うーん、どっかで似たようなの見た覚えがあるんだけど。
「チエ姉ぇ、あれってドライバーとハンマーが武器の勇者ロボの技だよね?」
「おう、さすがナナ殿じゃ。アレはナナ殿が生まれる前の作品じゃろ? 良く知っておるな?」
納得、「ガ」がいっぱいのアレね。
「だってスパロボに出るんだもの。気になって見て見たら面白かったよ」
「うん、わたしもおもしろかったよ。ひかりになれーっての! わたしも、まほうでやってみようかな?」
「そうじゃな。ちょうどエヴァ後の影響を受けた最後の勇者ロボじゃからな!」
「はいはい、オタク談義はこのくらいにしましょうね。帰ってから原作見ながらでもお話しましょ。チエちゃん、後は私達であの中のバケモノ退治したらイイのよね?」
「そうじゃ、母様。もはや手加減は無用じゃ。一気に殲滅するのじゃ!」
オタク談義が終わりそうも無いのを上手く止めたマユ姉ぇ。
さて、戦闘開始だけど、俺派手な技無いから役に立つかなぁ。
◆ ◇ ◆ ◇
「ほう、暴走したアヤツだけを異空間に隔離しましたか。まあ、我も被害拡大は望んでおりませんから、いいでしょう。では我も中に入りますか」
アルは嘲笑を消さず、漆黒の球体に入った。
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