第134話 康太は公安と仲良くなる:その38「アル、一旦撤退する」
「それは困りますね。せっかくここまで仕上げた一品を失う訳にはまいりませんから」
そこに現れたのは、「這い寄る混沌」端末たるアル。
「ようやくお出ましじゃな、『アル』よ」
チエちゃんは、アルの方へ向きながら話す。
「少々愚かな者ではありましたが、その能力を考えれば貴方方では倒せぬものと思っておりました。しかし、貴方方がここまでお強いとは思いもしませんでしたよ」
「そうじゃろうな。その愚かさと外見に騙されて挑むと、無限再生能力でいつか力負けするという事じゃな。しかし、今回はワシらの作戦勝ちという事じゃ!」
チエちゃんは、アルに対してお得意の「ドヤ顔胸張り」ポーズで挑発する。
「どうじゃ、ここでお主もやるかのぉ? ワシらは、まだまだ余力を残しておるが、如何なお主と言えど『そこのバカ』を回収して戦うのは難しいじゃろ?」
チエちゃんの提案にアルは一瞬考え込んで、答える。
「我にしても、ここで戦うのは上策ではありませんね。貴方お得意の無限回廊で無限奈落落としなんて、ぞっとしますよ。ですので、今回は、彼を回収して退かさせて頂きます。そちらとしても、本当は連戦はしたくないでしょうし」
「この閉鎖空間に簡単に入れるお主がよう言うわい。まあ、退くというのなら、しょうがあるまい。早う、お荷物抱えて帰るのがいいのじゃ! もうワシらやこの世界に介入するのじゃないのじゃ! 今度悪事を働いたら、真っ先にお主を滅ぼすのじゃ!」
「はいはい、今回は我の負けで良いです。次は、彼を更にパワーアップさせてみますよ。ではお楽しみに」
アルは慇懃無礼に礼をしたかと思うと、リブラと共に消えた。
「よし! 朧よ、追跡始めるのじゃ! 接近するのでは無いのじゃぞ!」
「御意!」
チエちゃんの掛け声で朧サンは転移を行う。
「チエちゃん、さっきの駆け引きってワザと撤退させるようにしたんだよね」
「そうじゃ! いくらまだ余力があると言うても、邪神ともう一戦はキツイわい。それと少し策があるのじゃ! これで少なくともリブラのアジトは分かるのじゃ!」
「ということは、GPS発信機とかの類使ったの?」
「うむ、とある手法で作ったナノチップがあるのじゃ! 後は、結果待ちじゃ。さて、ワシらも帰るのじゃ! 母様、晩御飯は何なんじゃ?」
「そうねぇ? このメンバー全員分だし、まだルナちゃんもいるからカレーで良いかしら? 皆ご飯作るの手伝ってね!」
さて、後は結果待ち、まずは腹ごしらえだね!
◆ ◇ ◆ ◇
「もう何回目か数えるのも面倒くさくなった捜査会議じゃぁ!」
毎回恒例のチエちゃんコールから始まる捜査会議。
今回はカレンさんやシンミョウさんも加えての会議だ。
「もはや、これは偉大なるマンネリなのね」
ルナちゃんの力ないツッコミも、もう恒例だ。
ルナちゃん、まだ元の中学校に通うのは怖いから、ナナ達と同じ中学校へ転校する事になった。
校区的には、隣接地域なので役所的には問題無いし、教育委員会も問題を今まで放置していた後ろめたさもあって快諾してくれた。
更に改名の手続きも順調に進行中、ご両親からもOKを貰ったので15歳にならなくても出来る様だ。
ということで、ルナちゃんは学校に慣れるまでしばらくはマユ姉ぇ宅からナナ達と一緒の通学をする。
学校でのボディガードとしては最強の妹達がいるから、安心だね。
「では、アヤメ殿、公安関係の情報をお願いするのじゃ!」
「はい、リブラ戦に関しましての事後報告とアルの足取りについて、ご報告致します。東京地検ですが、結界内での戦闘でしたから被害は全くありませんでした。このことに関しましては、地検・検察庁からお礼の言葉を頂いております」
ビル内で戦闘していたら、確実にフロアーは壊滅状態だし、マユ姉ぇの必殺技が炸裂していたらビルが倒壊していたかも。(汗)
「暗殺対象の方からもお礼が来ておりますが、そちらに関しましては地検からお礼の前に取り調べにもっと協力しろと言われたというオチが付いております、ハイ」
思わず、ずっこける皆。
アヤメさん、オチまで言わなくていいよ。
皆、チエちゃんの影響受けてないかい?
なんでもオチ付けたギャグにしなくてもイインダヨ。
「まあ、そうじゃな。今回のアイデアはコウタ殿じゃ。お見事じゃったぞ!」
ずっこけ状態から戻り、俺を褒めてくれるチエちゃん。
「うん、ありがとね」
なんのかんの言いながら褒められると嬉しい俺、ゲンキンだなぁ。
「アルの足取りですが、さっぱりです。所轄からの情報もぷつりと途絶えています」
アヤメさんの話に中村警視も頷く。
「では、次はワシからの追跡情報じゃ! 朧よ、説明頼むのじゃ」
「御意!」
さて、リブラは何処にいるんだろう?
「では、ご報告致します。先日の戦闘においてチエ様と私は、戦闘空間にナノチップを散布しておりました。これが電子顕微鏡写真になりますが、対象物に付着後に物理的に融合、その後特定の空間振動を放ちます」
朧さんが提示したタブレットには、ひっつき虫とも言われるオナモミの実に近い形の微物が映っている。
「じゃあ、あそこにいたボク達にもソレくっついているの?」
「いえ、戦闘空間を解除した際に、その空間内にあるナノチップは全て除去しました。ですので、今も現存して波動を出しているのは、リブラとアルに付着しているものだけです」
「それなら安心だね。変なモノ付いていたら、いくらチエ姉ぇが作ったものでもイヤだもん」
ナナがそう思うのも理解できるね。
「探索結果ですが、先だってリブラの行動範囲を提示しましたが、そこの中心付近で反応がありました。それも2人ともそこにいる様です」
これで、長いアルとの戦いに終止符を討てるんだろうか?
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