第133話 康太は公安と仲良くなる:その37「リブラとの戦い:6」
「じゃあ、ボク達行くね。リタちゃん、ボクの前に出ないでよ」
「うん、おねえちゃん!」
2人の妹がリブラへと向かう。
かなり削りきった為、もはやピクピク以上の動きをしていないリブラ。
しかし、前衛無しに後衛術師が攻撃に行って良いものだろうか?
「安心せい、コウタ殿。ワシと朧がフォローに入るのじゃ。何せ大詰めじゃからな!」
チエちゃんが幼女形態ながら、朧サンと一緒にナナ達の前に出る。
「チエ姉ぇ、宜しくね」
「うむ、まかせるのじゃ!」
チエちゃんが守ってくれるのなら一安心だね。
さて、俺は一休みするか。
「コウちゃん、アイツバカだし素人よね?」
マユ姉ぇが俺に話しかけてくれる。
「そうだね、膂力はスゴイんだけど、立ち回りにしろ業にしろ、素人丸出しだね。多分『石』で変身する前は、何も運動系をやっていない人だろう」
そういえば、マユ姉ぇがリブラを自分より年上だって判断したのと、レーザーをどう避けたのか聞いていないや。
「マユ姉ぇ、終わってからでイイから、リブラが年上だってのとレーザー避けた方法教えてね。特にレーザー避けるのは俺も使いたいし」
「そうね、レーザーの避け方は今教えるわ。役に立ちそうだから」
ん、今役に立つという事は、まだ連戦の可能性があるんだね。
気をつけておきましょ。
「アレって発射されたら絶対避けられないのよ、光速ですもの。だから、防御も見てからじゃ、まず間に合わないの。だから避けるコツは2つ。まずは撃たせない、次に当る場所に居ない」
うん、その通りだけど、どうやって当る場所に居なくなるんだ?
「居なくなる方法なんだけど、チエちゃんが使っているわよね、異空間を使った技を。あれと同じ原理なの。弥勒菩薩様の呪を使って、一瞬弥勒菩薩の修行なさっている空間へ移動するの。そしてまた帰ってくるのよ。これを繰り返す事で、この空間での自分の存在確率を下げて当らなくするの。いわば量子ジャンプね」
00Gダムでいうところの「量子化」による回避という訳か。
うん、これは便利そうだ、今度覚えよう。
「緊急回避に使えるから、覚えておくと良いわ。あら、ナナが仕掛けるわ。応援しなきゃ!」
前を見るとチエちゃんに守られているナナがリブラに攻撃を仕掛ける。
俺に両断されていたリブラ、身体をくっつけて元気に暴れている。
アイツの生命力、ものすごいなぁ。
もしかして「石」の力を生命力向上に全部まわしているのかも?
「いっくよー! 秘儀 千本桜2!」
ナナのコントロールする小物九十九神達、分け身を使って幾千にも分裂する。
確か、千本桜はチエちゃんの迷宮でドラゴンを一瞬でチリに変えた大技。
その改良型とは、見ものだ。
「なんだよ、これは?」
リブラの周囲を漏斗とタイル小物達が取り囲み、逃げられないようにする。
ビームシールドと物理シールドで囲まれては、リブラもどうしようもない。
囲まれたシールドの外周に8個に分裂した望遠鏡と花火打上筒小物が集う。
またその外周には数千にもの小柄、和バサミ小物が覆う。
「さあ、必殺でるたえんど! しょっく!」
ナナは特撮みたいな必殺技ポーズをした。
後から聞くと、35年程前の超大御所漫画家デビュー作の真似だとか。
そのネタの出所を聞くと、マユ姉ぇが自分が読むために秋山家に置いてあった漫画を持ってきたんだそうな。
どうやらカツ兄ぃのものだったらしいけど、ナナがどこまでネタ技に拘るのか、この先の進化が実に恐ろしい。
ナナの操る九十九神達は、ナナの命令で一気に動く。
シールド内に花火打上筒からの爆裂弾が大量に打ち込まれる。
しかし、それはすぐに爆発しない。
次に望遠鏡が同時に火を噴き、それと同時に爆裂弾がシールド内で爆発する。
その爆圧はシールド内で圧縮され、リブラを押しつぶすと共に灼熱のガスで焼き尽くす。
トドメに数千からなる小柄、和バサミが音速で叩きこまれる。
ずどぉぉーん!
最後の小物音速攻撃の衝撃波と爆風が俺達の下へと来る。
土煙が消えた後には、両手を完全に失ったリブラが、かろうじて立っている。
「おれが、てんさい、さいきょう、おおさま、なんだよぉ」
最早、生命力だけでなく精神すらも磨り減ってしまったリブラ。
もう、ぶつぶつと呟く事しかしない。
「うむゅー。せっかくボクが一生懸命考えた技なのに、まだ倒れないの?」
ナナは不満そう。
まあ、普通の相手ならアレで死んでいるよ。
「つぎは、わたしがいくね。おねえちゃん!」
リタちゃんが魔法少女杖に灯している光は蒼、なら凍結呪文か?
火炎系をかなり打ち込んでもまだ倒れないリブラ。
凍結、いや氷結棺とかをぶち込んだ方が確実に無力化できる。
「いっくよぉー! ぜったいれいど むげんひょうけつ!」
リタちゃんの杖から放たれた蒼い光球は、リブラへとまっすぐ進み、彼に着弾すると着弾点を中心に半径1m程の蒼い光の柱となった。
きゅきーん!
甲高い音を立てて蒼い柱は、光から氷へと変化していく。
空気中の水分、そして液体から固体へと変化した氷点下220℃以下の固体空気によって凍りつくリブラ。
後に残るは、蒼い氷柱内に閉じ込められた両手の無い怪人。
「うむ、これで流石に行動不能じゃな。皆の衆、良くやったのじゃ! これにてリブラ捕獲に成功なのじゃ!」
「おー!」
チエちゃんの勝利宣言で、リブラ討伐&捕獲作戦は終了した。
しかし、リブラの生命力は圧倒的なものだった。
俺以外のチート攻撃をあれだけ叩き込んで、やっと無力化出来たのだから。
そういう意味では「アル」は恐るべし「尖兵」を送り込んできたものだ。
となると、有能なコイツを回収にくる可能性も高い。
だからこそ、マユ姉ぇが連戦の可能性を示唆したのだろう。
「で、チエちゃん。コイツ、どうやって持って帰るの? たぶん解凍したら再生開始して、また暴れるよ。公安でも対処できないでしょ?」
「そうじゃな、ワシが管理する絶対零度異空間に保管するか、無限奈落でしばらく落ち続けてもらうしかないのじゃ!」
「それは困りますね。せっかくここまで仕上げた一品を失う訳にはまいりませんから」
俺は以前感じた神気を感じて、そちらに振り向く。
そこには、予想通りの敵が存在した。
「ようやくお出ましじゃな、『アル』よ」
そう、「這い寄る混沌」端末のアルがそこに居た。
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