第132話 康太は公安と仲良くなる:その36「リブラとの戦い:5」
マユ姉ぇは3身に分身した後、3身から渦を巻く真空衝撃波をリブラに向けて同時に叩き込んだ。
っずどぉぉぉん!!!
あまりにもの大音量の衝撃音で、俺の耳はしばらく使い物にならなかった。
立ち上る土煙、それが落ち着いてくるとマユ姉ぇの技の威力が見えた。
そう簡単に削れるはずの無い硬い大地は、真空衝撃波が通った3筋、まるでドリルで削ったように激しく抉れている。
そして、その衝撃波の着弾点では、手足が千切れ、胴体もボロボロのリブラが転げている。
あれってリタちゃんの最大火力に匹敵するよね。
おっそろしや。
「コウちゃん、交代しましょ」
マユ姉ぇは、うっすらと汗をかいて顔を紅潮させ俺達のいる後方へ下がってくる。
その姿はエロっぽくて綺麗だ。
マユ姉ぇに続いてカレンさんも一緒に下がってくる。
「マユ姉ぇ、アレトドメ刺していない?」
「そうねぇ、ちょっとやりすぎたかも。せっかくだから剣聖奥義やっちゃったもの」
ウン、呪文の助け借りてでも漫画の超人奥義とかエロゲの英雄必殺技ができるのは、マユ姉ぇだけですよ。
いくら可愛く言っても、凄いものは凄いんです。
「うむ、手足が癒着しそうじゃから、まだ死んではおらぬな」
チエちゃんが右手平手を額に当ててリブラの様子を見ている。
確かにまだまだピクピクしているね。
「あれ見てしまうと、私次に戦うの恥ずかしいのですが」
アヤメさんがそう愚痴るのも分かる。
俺もそうだけど、マユ姉ぇの戦い見ると、自分の攻撃の地味さを実感しちゃう。
「まあ、俺達は地道に行こうよ。ではアヤメ師匠、お願いします」
「はい、コウタ君!」
俺達は、皆の声援を受けてリブラが倒れ付す場所へ進む。
「おい、リブラ。もう、それでお終いかい? 偉そうに言っていた訳に、俺達は無傷だよ。降参するなら今のうちだぞ」
俺はワザと降伏宣告をする。
「そんな訳あるかよ。俺こそ最強なんだ!」
振り絞るような声を出して、やっと繋がった脚で立ち上がるリブラ。
やはり、コイツは煽る事には慣れていても煽られる事には慣れていない。
簡単に挑発に乗ってくる。
「もう再生能力も碌に無いんだろ。今度手足千切れたら最後だぞ。まあ、いいや。さて殺ろうか」
俺は右手に握った三鈷杵に力を込める。
三鈷杵から伸びた光の剣は、いつもよりも長く太い。
気合が十分乗っている証拠だ。
俺の背後のアヤメさんも居合いの構えを取り、いつでも飛び掛る準備が出来ている。
「こんちくしょー!」
リブラは爪を手の甲から生やして俺に向かって飛び掛る。
しかし、そのスピードは最初の半分以下、その上足運びは素人。
これでは俺の敵ではないし、もっと強いアヤメさんには敵わない。
「ほいよ」
爪を前にして突撃してくるリブラの向かって右側、つまり左手の爪を光剣で切り落とし気味に下に払うと同時に右斜め方向へ俺は踏み込んだ。
そしてリブラの左後ろに回りこんでから、剣を左下より逆袈裟切りに切り上げた。
「ぎゃ!」
光剣の剣先がリブラの装甲にめり込み、1cmくらいは削る。
「くそう!」
俺が後ろに回りこんだ事に気が付いたリブラは、俺の方へ体を向ける。
俺は、瞬動法でステップバックして距離を取る。
それを見たリブラは俺に向かって踏み込む。
しかし、それは俺が誘った訳で、出来た隙にアヤメさんがリブラの背中から攻撃をする。
アヤメさんの居合いからの右横薙ぎ、袈裟切りの2連撃がリブラの背を切り裂く。
「また後ろかよぉ!」
アヤメさんに向かって振り返るリブラ。
今度は俺がリブラの背に向けて右横薙ぎ、袈裟、逆袈裟切りの3連撃。
「ぐぁお!」
リブラは真っ赤な口から血の混じった涎を流しながら吼え、俺に向きなおして飛び掛る。
俺は剣を盾モードにしてリブラの爪を受け止める。
「力比べで俺に勝てるかよ!」
残念、俺はオマエと力比べに付き合わないよ。
「うぐ!」
リブラの背中、腎臓がある辺りにアヤメさんの刀が深く突き刺さる。
俺が態々リブラの爪を受け止めたのは、アヤメさんが突き技をする隙を作らせる為。
力が弱ったところのリブラの爪を盾で押し戻し、剣に切り替えて横薙ぎで爪を切り飛ばした。
そして俺もリブラの腹に光の剣を突き立てた。
「オマエラ、ゆるさんぞぉ」
俺の肩を強く握るリブラ。
残念、俺は防御呪文ガチガチだから見た目以上に重装甲なんだ。
「ナニが許さないんだって? お前滅んじゃえよ。ナウマク サマンダ バザラダン カン! 不動明王火炎呪!」
俺はリブラの腹に刺さった光剣を通して、リブラ内部に浄化の火炎を叩き込んだ。
それに併せてアヤメさんは刀を更に押し込んで一回転捻った。
「うぎゃぉぉ!」
リブラは、口や横腹にある気門から血液と共に火炎と黒い煙を吐き出す。
俺とアヤメさんは剣をリブラから抜いて、一旦距離を取る。
「これ、死んだかな?」
「人類なら確実に死亡ですが、バケモノですしねぇ」
ピクピクしながらも、まだ立っているリブラ。
よし、俺もマユ姉ぇのマネしよう。
「一発、大技いくね! オン マリシ エイ ソワカ! 摩利支天 太陽剣!!」
俺は三鈷杵に太陽剣を二重掛けする。
伸びる光剣は、斬馬刀サイズを越え、もはやどっかの「ドラゴン殺し」をも上回るサイズになる。
光剣だから重くないけどね。
「いやぁぁ! 一刀両断!」
俺はリブラの左肩口に垂直に光剣を振り下ろした。
光剣は、殆ど抵抗無くリブラの体をほぼ両断した。
「ぉぉぉぉ!」
激しく血しぶきを噴き上げながらも、まだ死んで居ないリブラ。
どれだけ生命力あるんだろうか。
今でも切断面が癒着しようとしている。
「コウ兄ぃ、ボク達の分も残してよぉ!」
確かに俺がトドメ刺す訳にもいかない。
やるなら今でも首を切り落とせばイイだけだし。
「うん、交代するね。アヤメさん、引きますか?」
「そうですね。刀剣じゃ、この辺りが限界でしょうか。首を落とすわけにもいかない訳ですし」
ピクピクと再生をしているリブラを見ながら俺達は後退した。
「コウちゃん、お疲れ様。アヤメちゃんも凄かったわ」
マユ姉ぇに褒められると、嬉しいけど恥かしいね
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