第122話 康太は公安と仲良くなる:その27「蜘蛛少女との戦い?3」
「あれ? ルーナちゃんって最近ボクに会わなかった? その気配に見覚えがあるんだけど。あ、分かった! この間フェンスの向こうからボクの事見ていた髪の長い女の子だね」
ナナはコトミちゃんから気配の読み方を教えてもらっているらしい。
それで蜘蛛少女の正体を見破った訳だ。
おそらくナナの眼力はもう俺以上だろう。
「え、どうして分かったの!?」
正体が簡単に見破られた事に、明らかに動揺する蜘蛛少女。
「だって、ボクはルーナちゃんの事色々見えるんだもの。そうか、その胸元のペンダントで変身したんだ。えっちっぽいけどすっごく綺麗だね、ルーナちゃんって」
想像すらした事がない好意をぶつけられて混乱する蜘蛛少女。
「どうして貴方は、私のようなバケモノを綺麗だって言うのよ。それに貴方に私の事全部分かる訳無いでしょ。隠れてやっているのも意味があるの! 簡単に私の事分かった風を言うんじゃないの!」
そしてルーナちゃんは口から糸を吐き、ナナを縛る。
俺はそれを見て飛び出そうとしたけど、マユ姉ぇ達に止められた。
「そうだね、ボクはルーナちゃんじゃないもの。ルーナちゃんの事全部は分からないよ。でもね、イジメが嫌いなのはルーナちゃんと一緒だよ。ルーナちゃんって、もしかしてイジメられていたの? ボクのお友達のお姉さんにもイジメで酷い目にあってた人がいるの。ものすごく辛かったんだって。ボクも友達作りが苦手だったから、無視される寂しさは知っているんだ」
ナナは糸に縛られたまま、ルーナちゃんを見上げて話す。
「だからルーナちゃんがイジメっ子をやっつけているのは悪くないよ。だって、向こうからイジメてきたんだもの。その罰は受けないとね。でもね、リーナちゃんがこのままその『石』の力を使い続けて変身していたら、酷い事になるかもしれないの」
「どうしてよ、私は正しい事しているんでしょ。イジメっ子も簀巻きにして吊り下げる以上の事はしていないわよ!」
「そうね、今はまだ大丈夫だよね。ボクとも、ちゃんとお話できているし。けどね、ボク、その『石』が暴走してニンゲンじゃなくなって、人が何人も死んじゃうのを見ちゃったんだ」
ナナはルーナちゃんに「石」の事実を告げる。
「え、それはどういう事よ?」
「それはね、そこにいるお母さん達が説明するね」
ナナの許可を聞いて、俺達はチエちゃんが作っていた別位相から出た。
そして一斉に明るくなる校舎。
「え、何よ! さっきまで誰も居なかったのに?」
慌てて逃げようとするルーナちゃん、しかしすでに校舎全体、そして教室は結界により屋外からは隔離されている。
バチっという音で脚が弾かれて床に落ちるルーナちゃん。
そこに糸をマユ姉ぇに切ってもらったナナとコトミちゃんにマユ姉ぇが駆け寄る。
ルーナちゃんに急いで布を被せて裸体を見えないように隠すマユ姉ぇ。
そしてルーナちゃんをハグするナナとコトミちゃん。
俺は何も出来ないし、すべきでは無いと彼女たちから離れた椅子に座る。
チエちゃんも俺の横の椅子を逆にして座り、状況を見る。
「ふむ、中学校とはこんな感じなのじゃな。ワシ、年齢を15歳以下に設定せんで良かったわい。こんなの窮屈で面倒じゃ!」
その声を聞いたルーナちゃん、暴れる事も無くハグされたまま叫ぶ。
「そうよ、こんな牢獄、面倒なだけよ! 悲しい事ばかりなんだもの!」
しかしチエちゃんは言う。
「じゃが、良かった事は無かったのかのぉ? 少しはあったじゃろ。まあ、窮屈なのはワシも分かるのじゃ。特にワシやナナ殿達、そしてルーナ殿の様に異質なモノには大変なのもな」
チエちゃんの言う内容に反応するルーナちゃん。
「それはどういう意味なのよ?」
「まずナナ殿、確かに今は学校を仕切るくらいの元気娘じゃが、その持っておる異能力は強大で幼い頃から孤立しがちじゃったそうじゃ。その妹のリタ殿に至れば異国人、正確には異星人じゃ。言葉も分からぬ地球にいきなり放り出されて大変じゃったそうじゃ」
チエちゃんの答えに、ルーナちゃんはナナを見る。
そこにリタちゃんも来て言う。
「おねえちゃん、もうわるいことはやめようよ」
2人の顔を見て困惑するルーナちゃん。
「でも2人とも、私なんかよりも可愛くて綺麗で、立派じゃないの!」
「それは2人が一杯努力したからじゃ! だから笑顔が綺麗なのじゃ! またルーナ殿の横におるメガネっ子のコトミ殿、彼女も中学校時代酷いイジメに合い、体中傷だらけにされたのじゃ!」
コトミちゃんの方をぎょっとして見るルーナちゃん。
「アタシは、皆のおかげで元気になったし、イジメっ子も撃退して傷も消してもらったの」
少し苦笑いしながら話すコトミちゃん。
「そしてワシ、こんな幼女の姿をしておるが正体はナナ殿が言った通り悪魔じゃ!」
そして椅子からぴょんと立ち上がり悪魔形態になるチエちゃん。
「ワシも悪魔の中じゃ異質、他の者達が悪逆非道ならワシは善良華麗な乙女じゃ」
うん、乙女というのに突っ込みたいけど辛抱だ。
「悪魔連中からは、はじき出されて追い出されて、最後は地球に流れ着いたのじゃ。まあ復讐はさせてもらったのじゃがな」
そしてポンという音と共に幼女形態に戻るチエちゃん。
「じゃから自分だけが、などと思ってはならんのじゃ! あー、もう面倒くさいのじゃ! ワシ、説教は得意じゃないのじゃ! 母様、後は任すのじゃ!」
そう言って赤い顔で座り込むチエちゃん。
まー、言いたい事は全部言ったんだろう。
しかし、説教が不得意と言いつつ多くの信者を持つ「神様」チエちゃん、お疲れ様です。
「チエちゃん、お疲れ様」
俺はチエちゃんの頭をナデナデする。
「じゃから、ワシの頭を撫でるんじゃないのじゃ! ワシ、子供じゃないのじゃ! 乙女の頭を触るんじゃないのじゃ!」
と、言いつつ撫でられっぱなしのチエちゃん、かわいい事だ。
その様子を横目でにこやかに見ていたマユ姉ぇ、ルーナちゃんに話し出す。
「ルーナちゃん、貴方が行っている事は全部間違いじゃわ。だけど、方法に問題があるの」
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