第121話 康太は公安と仲良くなる:その26「蜘蛛少女との戦い?2」
「では、第5回捜査会議の開始じゃ!」
チエちゃんの掛け声で毎度始まる捜査会議。
「今日の議題は、アラーニェ捕獲計画じゃ! では、コトミ殿、ナナ殿宜しくなのじゃ」
今回は、作戦のキーパーソンなのでナナも会議の中心にいる。
「はい、チエお姉様。今回の作戦ですが、ナナちゃんの学校に蜘蛛女をおびき寄せます。お姉様のSNS作戦で、蜘蛛女はナナちゃんに興味を持ち、直接の面談を要求してきました。そこで彼女を説得、保護しようというのが作戦内容です」
コトミちゃんに続いてナナが話す。
「蜘蛛女サンはボクに会いたいとの事です。ボク自身彼女のしている事を全部ダメはしたくありません。なので、彼女と話してみたいんです。お願いします」
「これはアタシからもお願いします。もう皆様ご存知でしょうけど、アタシも昔酷いイジメにあっていたので、蜘蛛女が行っている事を全否定したくは無いんです。これはアタシのカンですけど、彼女もイジメられている、もしくはイジメられていた経験があると思うんです。だから、彼女が暴走して誰かを傷つけて、後戻りできなくなる前に決着をつけたいんです」
コトミちゃんは真剣に公安組に訴える。
コトミちゃんの「苦悩」はつい先日完全に消えた。
けれど、イジメられた事実は消えない。
だからこそ、蜘蛛女にはこれ以上の犯罪を行うのではなく、正統な方法でイジメと戦って欲しいと思うのだろう。
「私からもお願いするわ。医療関係から聞きましたけど、事件の犠牲者達は全員イジメっ子、それもかなり凶悪だった子達ばかりだったの。でも今回の件で自分達が行ってきた事に対して大分考えたみたい。自分が原因だったと分かったからかPTSDとかもあまり発生していないらしいの。お見舞いに来たイジメた子に対して謝罪した子もいるんですって。だから、蜘蛛女サンの行った事をムダにはしたくないの」
マユ姉ぇの話を聞きながら蜘蛛女の行った事案を見せてもらったけど、脅かして糸で簀巻きにしてから屋上から吊り下げたりはしたけど、その後はイジメに対する説教が主だったようで必要以上に傷つけたりしていないんだそうな。
彼女が、かなり理性的な行動をしているのが見受けられる。
「ウチの娘なんだからもう十分強いわ。だから大丈夫。それに何かあっても私やチエちゃん、コウちゃんが居るんだからね」
アテにしてくれてありがとう、マユ姉ぇ。
俺はナナを絶対に守るからね。
「うん、おねえちゃんは、わたしもまもるよ。くもさんなら、とべないよね。じゃあ、このあいだみたいに、どっかーんとうちあげたらいいし」
あれから聞いたけど、リタちゃん、九十九神さんじゃなくて妖怪さんと契約したんだとか。
泥田坊という泥田に住む妖怪で、元々は田を守ろうとした人間が変化したものらしい。
ナナとリタちゃんが秋山本家に遊びに行った際に、近くにあった近代化された田んぼで寂しそうにして消えそうだった泥田坊を見つけたんだとか。
そこで泥田坊とリタちゃんが話して、泥田坊の寂しさに同情して、また霊力不足で消えそうになっていた「彼」を守りたいと思ったんだそうな。
近代化された田は、泥田坊にとっては住みにくい場所になってしまうらしい。
そこでリタちゃんの杖に宿って力を貸す代わりに、リタちゃんが友達になって存在する為の霊力も負担するという事になったんだとか。
異星人エルフが九十九神さん達だけでなくて妖怪さんを使い魔にして魔法を駆使する。
うーん、摩訶不思議な関係だけど、リタちゃんの優しさが1人(?)の妖怪を救ったのなら良いかな。
そしてこの間の術はリタちゃんの光魔法を泥田坊が土属性に変換したもの。
術のアイデアは、古典ラノベアニメ「悪党に人権は無い魔法使い」の術からだって。
彼女の魔法に一定範囲の土砂を爆発的に打ち上げる手加減しやすい無力化呪文があるらしいけど、それを真似てみたんだとか。
そういえば最近十数年ぶりに新刊が出たとかで、ナナがアニメ見てた覚えがある。
ウチの家系って、オタクネタから新技を開発する傾向があるけど、良いのかなぁ。
まあ、アイデアには著作権は無いという話もあるけど、訴えられない事を祈るばかりだ。
あと、頼むからリタちゃん「竜破斬」クラスの大規模破壊呪文とか使わないでね。
俺、巻き込まれたら死んじゃうから。(笑)
◆ ◇ ◆ ◇
そして作戦当日の夜が来た。
今回は、蜘蛛女を刺激させないように、警察は最小限の人員だけの展開をしている。
学校周囲のフェンスには既に結界護符を貼り付けており、蜘蛛女が校内に入り次第、逃がさないようにする布陣。
指定された23時、誰もいないはずの中学校、2階の暗い教室で1人待ち人の襲来を待つナナ。
そして現れたアラーニェ。
校舎の壁を伝って上から降りてきて、ナナが開けていた窓から教室に入り、天井に張り付く。
「貴方が岡本ナナさん? 驚かしてごめんなさいね」
そういう異形の女、いや少女なのか?
裸体は綺麗なだけにオトコとしては直視できないけど、体のラインがどこか幼い感じがする。
「うん、ボクは大丈夫だよ。キミが噂の蜘蛛女さんだよね。名前を教えてもらえると呼びやすいんだけど」
「ナナさん、私の事怖く無いの? 今までの人は皆私の姿見ただけで怖がってオシッコ漏らすんだけど」
少し自虐的にうす笑う蜘蛛少女。
「ボクは全然怖くないよ。だって、ボクは昔から幽霊や妖怪さんを沢山見ているし、最近は悪魔さんも一緒に住んでいるからね」
ナナの無邪気な、しかし内容的にはスゴイ事を聞いて首を傾げた蜘蛛少女。
「それってどういう意味なの? まあ、度胸あるのは分かったわ。私の事はルーナとでも呼べばいいわ」
「そうなんだ、ルーナちゃんだね。ボクが悪魔さんと一緒にいるって本当なんだけど」
そしてナナは首を傾げた。
「あれ? ルーナちゃんって最近ボクに会わなかった? その気配に見覚えがあるんだけど。あ、分かった! この間フェンスの向こうからボクの事見ていた髪の長い女の子だね」
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