第120話 康太は公安と仲良くなる:その25「蜘蛛少女との戦い?1」
「さて、どうやってアラーニェをおびき寄せるかじゃな」
今、マユ姉ぇ宅でデジタル関係の面子、チエちゃん、コトミちゃん、マサトが揃って作戦を練っていた。
「僕とチエちゃん共同開発のSNS監視ソフトでタグと発信IPは分かるけど、発信者が大抵スマホだから発信者の身元までは分からないんだ」
マサトって良くチエちゃんと話しているけど、そんな事やっていたのね。
「そこでアタシの足で集めた情報をそこに関連付けると、あら不思議! 発信者の学校が分かりました。ね、マサト先輩」
「そうだね、流石コトミちゃんだ」
発信者の過去データから校区を把握するのは不可能じゃないけど、コトミちゃんスゴイなぁ。
「SNSで蜘蛛女のタグをつけた発言者の学校のごく一部においてアラーニェによると思われる事件が発生しているようでした。その学校を全部では無いのですが、マッピングしたところ案外狭い地域に限定されました」
コトミちゃんがタブレットで提示した地図には発言者の学校とアラーニェ発生場所の一覧が提示されていた。
それはおおむね半径20kmも無い狭い地域だった。
「うむ、やはりアラーニェの正体は中高生じゃな。自分の足いや脚で動ける範囲内でしか現れておらぬわ」
蜘蛛の足だと以前対決した馬男よりは早くは動けないだろう。
糸を使う事から立体的に機動をするだろうことは予想できるけど。
「ボクの学校も、この範囲の端っこだけど入っているよね。でも、まだボクは噂しか聞かないなぁ」
本来なら関係ないナナが話を聞きつけて横からタブレットを覗き込んでいた。
「ナナ、学校でイジメとか話を聞かない?」
俺はナナに学校での事を聞いてみた。
「うーん、ボクは聞かないなぁ。だって、おかしい事している人いたら、ボクが大抵締めているから」
おい、ナナって学校で女帝、女番長なのかよ!
そういえば、ナナは最近生徒会の手伝いもしているそうだ。
どうやら秋の改選で生徒会長を狙っているらしい。
「うん、わたしもおねえちゃんのおてつだいしてるよ。わるいこに、だめだよ、っていっているの」
ナナが話しているのに加わるリタちゃん。
見目麗しいリタちゃんにダメって言われたら、男の子ならまず逆らえないだろう。
女の子相手なら、凛凛しいナナが効果ありそう。
この2強が要る限り、ナナの学校は安泰っぽい。
「ナナちゃんやリタちゃんが要る限り、2人の中学校は蜘蛛女の出現対象になるのは難しそうね」
苦笑いしながら2人の妹の頭をなでなでして可愛がるコトミちゃん。
「でも、逆におびき寄せるのには良いのかも知れないよ。今まで同じところに2回現れていないんでしょ。ならば穴場だもの」
俺の発言に同意するチエちゃん。
「そうじゃな、ここはワナを仕掛けるべきかの。その為には『旨い餌』が必要じゃな。これまで反応があったSNSの発言の傾向を調査して『撒き餌』を作るのじゃ!」
「じゃあ、コトミちゃん。僕がリストアップするから、それの整理お願いできる?」
「はい、マサト先輩!」
俺や吉井教授以外の男性と今まで積極的に会話していなかったコトミちゃん。
彼女がマサト相手とはいえ、話しているのは良い傾向だ。
マサトは、やや小柄で坊ちゃん風童顔だけど、十分美少年の範疇。
その上、性格も俺やマユ姉ぇのお墨付き。
コトミちゃんの男友達2人目として、このままでいて欲しいな。
◆ ◇ ◆ ◇
「あら、この学校って今まで問題なかったはずよね。確か『女番長』がいて締めているって話だけど」
ルナはSNSの情報を不思議そうに見ていた。
その学校、去年に爆発事件や生徒暴動・失踪事件があって、一時期マスコミでうるさく言われていたはず。
しかし、それ以降は学校全体が締まった感じになり、学業、運動等で好成績を残している。
そしてその中心に「女番長」的な女子生徒がいて、またその義理の妹が北欧系超美少女だとの噂だ。
この2人が学校全体を良い意味で支配しているとか。
「うーん、どうしよう。確かにウチからは電車に乗らなくても行けるから良いけど。様子見に昼間にでも一度行って見ようかな。その女番長ってのにも会ってみたいし」
ルナは何故かこの学校に、いや「女番長」たるナナに惹かれた。
◆ ◇ ◆ ◇
「よし、餌に食いついたのじゃ! こうまで上手くナナ殿が生餌になるとは思わなんだわ」
チエちゃんがモニター画面を見ながら叫ぶ。
その発言内容にびっくりして飛んでくるナナ。
「ねえ、チエ姉ぇ。今のどういう意味なの? まさかボクを餌にして蜘蛛女おびき寄せたの?」
ナナの問いにチエちゃんは答える。
「すまん、ナナ殿。勝手ながらナナ殿の名前を使わせてもろうたのじゃ!」
どういう風にナナを「餌」に使ったんだろう?
「今まで問題が無かった学校で、急に問題発生するのは不自然じゃ。そこでナナ殿が蜘蛛女に対して挑戦状を出したという形にしたんじゃ。やっている事が正しいかもしれないけど、こそっとやるんじゃなくて自分のように正々堂々イジメと戦えないのかって」
「えー、ボクそんな事言ってないよー! まあ、その通りなんだけど。」
「じゃから出した形にしたと言
と、ドヤ顔でいつもの「あくま」ギャグでナナの怒りを落ち着かせようとするチエちゃん。
「うーん、なんか誤魔化されている気がするけど、まー良いや。そのとーり、ボクは、イジメだいっきらいだもの」
「もちろんナナ殿本人がSNSで発言したのじゃのうて
餌に食いついたのは良いけど、あちらはどういうつもりでナナ個人と話したいんだろう。
今までの所業を見るに、アラーニェ本人は「正義」を行使しているつもりらしい。
確かに、過激な事をしているものの、馬男とは違って正統な理由で他人の為に動いている。
だから、それに対して真っ向から意見を言ったナナが気になるのだろう。
「敵」としてではなく、同じイジメを嫌う「同士」として。
ならば、ちゃんと説得すれば戦闘とかにならずに穏便に問題解決できるかも知れない。
俺もナナやリタちゃんと同年代の女の子とは戦いたくないしね。
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