第107話 康太は公安と仲良くなる:その13「戦闘後報告会!」
「では、皆様に事件詳細をご報告致します」
火炎魔人から一週間後、マユ姉ぇ宅で事件内容の報告会が行われた。
マユ姉ぇ宅の居間には、事件報告をするアヤメさんと中村警視、それを聞くマユ姉ぇ、チエちゃん、ナナ、リタちゃん、マサト、コトミちゃん、タクト君に俺がいる。
正明さんは別件用事があるのと、超常現象にはノータッチなので完全にマユ姉ぇ任せ、吉井教授も今回は俺達に任せるとの事だ。
いうまでもなく女子高生組には、こんな話は聞かせられない。
ウチの妹共は既に修羅場を幾度もくぐっているから大丈夫っぽいけどね。
「今回の容疑者であり犠牲者は、自称 石川某。推定50歳台後半、男性、住所職業不詳。あの事件があった公園周辺を縄張りにしている路上生活者です」
アヤメさんが資料を見ながら報告をしてくれる。
「事件当日の夕刻、容疑者は飲酒をしており、公園周辺を同じく縄張りにしている方々とイザコザを起こしていたそうです。その内、激怒する容疑者から炎が噴出し、周囲に居た数人を巻き込み焼死させました」
なるほど、それが俺達が公園で見た犠牲者という事ね。
「容疑者とケンカをしていた内、一名の男性が運よくその場から逃げ出す事が出来て消防に保護され、そこで事件の詳細が分かりました。付近にあった防犯カメラにも火炎が噴出すシーンが映っていました。尚、その男性ですが、気管熱傷は無かったものの全身に2度以上の火傷を負っており、現在は集中治療中です」
全身火傷だと病院に収容当初は話せても容態が悪化する事は多々ある。
彼には是非とも助かって欲しいものだ。
「容疑者本人は灰になってしまいましたし、周囲に居た人の大半も同様な状況ですが、近郊の路上生活者への聞き込みの結果容疑者と『石』を配っている『アル』なる人物の接触が確認されました」
やはりアイツが原因かよ。
「では、聞き込み結果は中村警視からお願いします」
アヤメさんから促された中村警視が話す。
「所轄の聞き込みで、近年路上生活者と接触をする浅黒い男が居た事が分かりました。年恰好は30代、背格好は中肉中背、浅黒いのですが顔立ちは日本人だという事です。姿形はどこにでもいるサラリーマン風なのですが、気配というか雰囲気が異様で見かけた人も大分以前だったのに覚えていました。なんでも輝いている漆黒だとか、闇が光るとかで妙な感じだそうです」
その容姿や雰囲気は、先日教祖さんに聞いたものと完全に一致する。
「彼が路上生活者に話しかけていて、妙な石を見せていたんだとか。しかし、ある一時期から急に姿を見なくなったとの事です。尚、不思議な事に彼の事を覚えているはずなのに、モンタージュや似顔絵を描こうとすると彼の顔がぼやけるんだとか」
魔術的な記憶操作や防御でもやっていそうな話だね。
「何分、彼が現れたのがかなり過去の為に映像記録は残っていませんので、これ以上は捜査が出来ない状況です」
「中村警視、ありがとうございます」
アヤメさんが中村警視に礼を言う。
そういえば、いつの間にこの2人が知り合いになったのやら。
まあ、マユ姉ぇの暗躍が関係しているんだろうけど。
「と、いう事で当面の課題は容疑者『アル』の発見と彼によって配られた『石』の早期発見・回収、最悪犠牲者の排除となります」
「質問良いかな、アヤメ殿?」
チエちゃんがアヤメさんに問う。
「はい、どうぞチエさん」
「今まで発生しおった『石』がらみの事件で何か共通点とかは無いのか? 後、発生地点はどのくらいの半径で起こっておるのじゃ?」
「事件の共通点としては、犠牲者は大抵なんらかの『弱さ』を抱えていました。そこに付け入られて『石』の魔力に魅入られたものと推定されます」
アヤメさんは事件の一覧リストを俺達に開示してくれた。
「ひきこもりに自殺願望、家庭内不和、路上生活、借金地獄。こりゃまた見事に弱みを見つけたものじゃ。ワシが『騎』に策を授けた際も、アヤツが不の感情を好むのでSNSで発見するように勧めたのじゃが、それ以上に悪質じゃな。そういえば、『騎』事件の犠牲者は皆どうなっておるのじゃ? ワシは彼らに謝罪に行かねばならんのじゃが」
チエちゃんの問いに中村警視が答える。
「あの時の人達なら全員社会復帰したよ。以前から抱えていた問題も大抵解決したそうで、逆に幸せになっているんだそうな」
それを聞いたチエちゃんは安堵して、
「そうか、それは良かったのじゃ。実は彼らの安否が気にはなっておったのじゃが、結果を聞くのが怖くて中々聞けなかったのじゃ」
涙を零して謝罪するチエちゃん。
良かったね、チエちゃん。
「まあ、それは今度の一件が落ち着いたら皆で謝りに行きましょうね。アヤメちゃん、事件の発生箇所について教えて」
マユ姉ぇはチエちゃんの頭を抱いて慰め、アヤメさんを促した。
「はい、マユお姉様。事件発生地域は関東一円に広がっています。半径として100kmはあるようで、いまだ絞り込みは出来ていません」
タブレットに提示された事件現場は、数が少ない上にまばらでどこが中心になるのか分からない。
「つまり、ワシらは未だ後手に甘んじるしかないという事じゃな」
チエちゃんにアヤメさんは答える。
「はい、残念ながら。ただ、今回の件とこれまでの情報で『アル』単独による犯行である事がほぼ確定したのは朗報です。まだ顔写真は無いものの、浅黒い中肉中背30代という特徴が確定しましたので、関東近郊の警察・国土交通省等の監視カメラ群にその条件を入力して監視をしてみます」
最近では海外ドラマで描かれた様な映像からの犯罪捜査が多々行われている。
AIによる顔認証もバカにならない。
該当する人物のデータ保存をしてもらうだけでも犯罪抑止になる。
「じゃが、『アル』なるモノ、おそらくヒトでは無いのじゃ。多分ワシらとも別種の高位な魔神じゃな。姿も変えられると予想するのが常識じゃ。しかしまだ自らの姿がバレたとは思うておらまい。今回と教祖殿との接触時に姿が同じなのがその証拠じゃ。次回の接触が勝負じゃぞ」
チエちゃんの推理にアヤメさんは同意する。
「そうですね。ですので、これ以降皆様のご協力が重要となります。経費等はこちらで負担しますし、解決後にはなんらかの謝礼を致しますので、どうかご協力の程、宜しくお願い致します」
アヤメさんと中村警視は揃って頭を下げる。
「そうねぇ、私はお手伝いするのに賛成だわ。ご町内の安全を守るのも私達の使命ですし」
「そうじゃな、母様。ワシも身近で外道が暗躍しておるのは好かんのじゃ」
「私も情報収集に頑張りますので、極秘捜査情報をどんどん下さいね」
「ボクもワルモノ許せないから、がんばるぞ!」
「わたし、つぎはいっぱつでたおしちゃう!」
「姉御、俺は言うまでもなくいつまでも姉御に付いていくぞ」
「僕は補助しか出来ないけど、知ってしまったからには無視は出来ないよね」
皆、やる気満々だ。
「コウタ殿、その顔なら聞くまでもあるまいな」
「うん、今度こそ誰も犠牲を出さずに事件を解決してやるよ!」
さあ、俺達の捜査開始だ!
ブックマーク、感想、評価・レビュー等を頂けますと、とても嬉しいです。
皆様、宜しくお願い致します。