第105話 康太は公安と仲良くなる:その11「火炎魔人との戦い!1」
マユ姉ぇ達とは救護所で別れた俺達は、現場となった公園近くまで近づいた。
公園は火炎旋風が渦巻く地獄と化している。
これ以上近づいたら肌が焼ける前に一酸化炭素中毒や気道熱傷で死んでしまう。
消防隊も公園の手前で延焼を阻止しているだけだ。
「アヤメ殿、コウタ殿、リタ殿。さっきワシが耐熱防御円をお主らに付与したのじゃ。これで熱傷対策は十分じゃ。 後はガス対策じゃが……」
「それなら俺が皆に風天・水天防御をします」
これは以前、タクト君の着火能力対策でやった呪。
耐熱・耐ガス対応が出来る2つの天神の力を複合した呪だ。
今の俺の実力なら全員分、大体30分くらいは維持できるはずだ。
「俺の呪は30分程度で切れますからムリはしないで下さい」
俺達は念入りに防御をかけて炎吹き荒れる公園に入った。
そこは何もかもが燃え盛っており、消防隊すら立ち入りが出来ていない。
その原因は大分向こう側、公園の中心付近で立ち尽くしている燃え盛るヒト、いや魔物だろう。
人間では身体が燃え上がればすぐに酸欠で倒れ、焼きあがった後は手足が曲がり固まった遺体で発見される。
事実、公園内には黒く焦げファイティングポーズで固まったヒトガタのモノが数体転がっている。
しかし、俺が見ているモノは火炎をその身体から溢れさせ、周囲にその火炎を撒き散らしている。
「火炎魔人!」
俺は思わずそのモノの正体を呟く。
「そうじゃな、あれは火炎系の魔人じゃ。ふむ、胸元が虹色をしておる。こやつも『石』が暴走した者の末路じゃな」
ああ、とうとう俺達の前にも「石」の犠牲者が現れたんだ。
「コウタ殿、すまぬがアアなってしもうたらお終いじゃ。すでに意識も魂も無く破壊衝動のまま燃やしておるだけじゃ。ここで倒さねば犠牲者が増えるばかりなのじゃ」
そうだ、もうアレは世の中に害を成す悪鬼羅刹。
早く退治しないと泣く人が増える。
「ああ、大丈夫。一気に攻め込むよ。しかし、何か有効策は無いかな? あれだけの熱量だと大量の水かけたら水蒸気爆発するだろうし、火炎系や光熱系は効果が薄いし。今の手持ちだとリタちゃんの究極冷凍呪文くらいかな?」
俺の手持ちには月光菩薩系の冷凍光線があるけどそんなに得意じゃないし、リタちゃんの方が威力も高い。
「そうじゃな。ワシも攻撃は空間操作系とプラズマ系が主じゃ。一気に切断とかも出来そうじゃが、たぶん『石』を叩かぬ限り効果は薄いじゃろうて」
「私も刀剣に『力』を通すのと隠隠系以外の術は、とんと持ち合わせが無いです」
すまなそうにするアヤメさん。
これらの情報を考えてみるに、策は一つしかないね。
「じゃあ、俺とアヤメさんが牽制、チエちゃんがリタちゃんの防御。リタちゃんが収束型の最大冷却弾をアイツに撃つ。火炎が落ち着いて接近戦できるようになったら、俺が飛び込んで石をぶっこ抜いてトドメという方針でどう?」
俺の作戦案にチエちゃんは、
「その策ではコウタ殿のリスクが高いのぉ。『石』を抜くのをワシがすれば大丈夫じゃが、それではあかんのか? またはワシがアヤツを海中に転移させて水蒸気爆発でどっかーんじゃダメかのぉ?」
「チエちゃんじゃ冷却系の術が無いから、魔人に接近したらせっかくの浴衣燃えちゃうでしょ。第一、転移も接近しなきゃダメでしょうし。それに俺が少々怪我しても、チエちゃんとリタちゃんが無事なら治してもらえるよね。ここいらで俺も戦う覚悟しなきゃ」
俺の回答を聞いたチエちゃん、
「それなら何も言うまいなのじゃ。コウタ殿、抜かるでないのじゃぞ。命は大事なのじゃ!! 『朧』、おるんじゃろ? コウタ殿達の援護を頼むのじゃ!」
「御意!」
呼びかけに応じて現れる朧さん、こういう時に大悪魔が味方なのは実にありがたいよ。
「こうにいちゃん、ぜったいにしなないでね」
リタちゃん、半分涙目で見上げて俺を心配してくれる。
「大丈夫だって。だからリタちゃんは思いっきりスゴイの撃ってアイツ倒しちゃって、俺の出番なくしても良いんだよ」
「うん、いっぱいこおらせて、こうにいちゃんよりもさきにたおしちゃうよ!」
「では、ご相談宜しいですか? アヤツ、やっとこちらに気が付いた様で、接近してきます。それではコウタ君、朧さん宜しくね。 光兼様お願いします」
〝うむ、某、女性を守る剣なり! 序に主の甥っ子も守ろうぞ!〟
皆、ありがとうね。
さあ、元が人間でも倒すしかない、躊躇すればリタちゃんがあそこに転がる遺体のように無残に死ぬ。
それは絶対イヤだ。
俺の中でカチリと「トリガー」が引かれた音が聞こえた。
「ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バルナヤ・ソワカ! 水天神 水幕呪!」
俺は水天の呪で左手三鈷杵から出した「光の盾」の上を念入りに大量の水でコーティングした。
これで数発の火炎弾なら水の気化熱で防ぎきれる。
「オン・センダラ・ハラバヤ・ソワカ! 月光菩薩冷光剣!」
更に右手独鈷から氷の剣を伸ばす。
本当は冷凍光線を打ち出す術なんだけど、少しアレンジして剣にしてみた。
よし、ぶっつけ本番な割には良いぞ。
「俺が前衛で突っ込みますので、アヤメさんは少し後方からお願いします。光兼サンなら斬撃を飛ばせますので、少し距離とって戦えますから」
「いくぞー!!」
俺は掛け声と共に韋駄天呪をかけた脚で火炎魔人に突っ込んでいった。
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