第103話 康太は公安と仲良くなる:その9「女の子の艶姿と花火ってどっちも良いよね!」
俺達は百鬼夜行状態の玄関を越えて、マユ姉ぇ宅に入った。
リビングだけでは狭いので、隣の部屋も使っての着付け。
本人を含めて総勢8名の着付け、大変な仕事だったろうに2時間以内で全部やっちゃうマユ姉ぇはスゴイ。
この辺りがマユ姉ぇをスーパーウーマンとしている所以だ。
「コウ兄ぃ、どうかな?」
ナナはそう言って俺の目の前でクルって回ってみせる。
ナナの浴衣は白地にヒマワリの花柄、ナナの持つ「ヒマワリ」のイメージそのまま。
いつもはツイーンテールにしている長い髪をお団子にしてシニョンで飾っていてイメージがかなり変わっているけど、かわいいよね。
「うん、ナナのイメージどおりでカワイイぞ」
「ありがとね、コウ兄ぃ」
うん、そのヒマワリの笑顔が良いんだよ。
「こうおにいちゃん、わたしはどうなの?」
変わってリタちゃんは、白地に紺で椿の浴衣。
プラチナブロンドの髪色に映える青と、これまた選んだだろうマユ姉ぇの趣味が良い。
「リタちゃんも妖精さんが浴衣着ているみたいですっごくカワイイよ」
「ありがとー、おにいちゃん」
リタちゃんは俺に抱きついてくる。
嬉しいけれども、薄いながら確実にある「膨らみ」押し付けられるのは困るって。
「コウタ殿、良かったのぉ」
高校生組2人に抱っこされて少し困り顔のチエちゃん、彼女は白地に青いストライプと金魚柄。
長い黒髪をアップに結い上げていて、これまたカワイイ。
そしてそのチエちゃんを2人で可愛がっているのがカオリちゃん、ケイコちゃん。
カオリちゃんは、オトナっぽい紺地に白で書かれた藤の花という大正ロマン風でポニーテール。
ケイコちゃんは、白地にパステル調の花が描かれたフェミニン調。
2人ともキレイカワイイんだけど、今はせっかく会えたチエちゃんに夢中。
「あーん、こんなにカワイイのに悪魔さんだなんて」
「うん、もっと抱っこさせてぇ」
うん、大変だろうけど頑張れチエちゃん。
「先輩、こんなカワイイ子達の家庭教師って我慢大変ですよねぇ」
一言多いコトミちゃんは、白地にオレンジの花があしらわれたカワイイ調浴衣。
「うん、コトミちゃんは馬子にも衣装だね」
俺もコトミちゃんには口悪く言う。
一瞬にらみ合う俺達だけれども、2人同時に噴出して笑いあう。
どうやらコトミちゃんと俺は、こういうバカを言い合う付き合いが良いらしい。
オトナなアヤノさんは、紺地に白いストライプの古典柄。
しかし、そのシックな雰囲気が似合っているし、普段ワンレンで流している髪を結い上げていて、見慣れない「うなじ」が見えてオトナの色気も十分。
それを赤い顔して見惚れているタクト君。
「姉御、キレイだ」
その言葉を受けて満更でもないアヤメさん。
「タクト君ったっらイヤだわ」
しかし顔真っ赤にしてイヤって言っても説得力ないよね。
殿のマユ姉ぇは、これまた大正ロマン調白地に淡い青で描かれた雪輪(雪の結晶)。
フェミニンでオトナの魅力満載なので、横に居る正明さんはいつも以上にニコニコ状態だ。
正明さんも紺のストライプ浴衣、ホントお似合いのご夫婦だよ。
〝某、こんなに話を聞いて下さる多くの女性に囲まれて幸せでござる〟
光兼さん、まだ恍惚状態だよ。
◆ ◇ ◆ ◇
〝オレ、カオリに付いて行く!〟
「ぐっちゃん」サンがダダ捏ねてカオリちゃんに付いて祭りに行きたがる。
その上、それを見ていた狛犬クン達も行きたがっている。
「コウ兄ぃ、お願いあるんだけど……」
浴衣姿におめかししたナナに上目使いで、こう言われたら俺はもう陥落。
「この子達を連れて行けば良いんだよね」
「ありがとう、コウ兄ぃ」
そう言ってタイミングを逃さずオレに抱きつくナナ。
同じく反対側から同じく抱きつくリタちゃん。
両手に花、両方から小さい「マシュマロ」押し付け、とまあ恥ずかしい状況。
それを横目でジロっと見るチエちゃん。
「コウタ殿、良いご身分だことで」
そういうチエちゃんも、逃げられないよう両手を高校生組に握られている訳だ。
「先生、『ぐっちゃん』がムリ言ってすいません」
そう言いながらチエちゃんの手をぐっと握っているカオリちゃんである。
オレは、「ぐっちゃん」サン達を説得してオレのバックパック内に入ってもらった。
流石に野外でふよふよコイツらが飛行していたら騒ぎになるもの。
「あ、三鈷杵バックに入れっぱなしだった」
俺は慌てていたのか「ぐっちゃん」サン達をバックに入れる前に、いつも入れてる三鈷杵をバックから取り出すのを忘れていた。
「もう下から取り出すのも面倒くさいし、まあ良いか」
そういう訳で、少し重いけど三鈷杵も祭りに持っていくことにした。
◆ ◇ ◆ ◇
「コウ兄ぃ、早く来ないと花火見やすい場所、取られちゃうよ!」
下駄履いているのに、いつもどーり元気なナナ。
後から足が痛くならなきゃいいけど。
「はいはい、でもマユ姉ぇが予約済みでしょ。慌てなくても大丈夫だし、下駄に慣れていないリタちゃんなんかは走れないんだから、ナナ落ち着いて」
今から行く場所は、花火がキレイに見れるお店ということで人気のカフェ。
大人気で花火の日は半年以上前から予約満席という事だけど、マユ姉ぇは確保済み。
しかし、半年前からしても3人は面子が増えているのに、ちゃんと人数分の席を確保しているマユ姉ぇ。
マユ姉ぇって未来視できるとしか思えない言動が以前から多い。
どこまで先読み出来ているのやら。
「たまやー!!」
三尺玉が大きな火の花を咲かせる。
オトナ組が生ビール、未成年組がジュースを片手に花火見物中。
俺はあまりアルコールに強くないので、このカフェ名物のロースト濃い目のコーヒーを頂いている。
マサトは、ぼっちゃん風な童顔ながら実は酒豪。
今も吉井教授と酌を重ねている。
そういえば、花火の掛け声で知られる「たまや」とか「かぎや」って江戸時代1700年代から1800年台初頭の花火屋の屋号だって。
「さあ、リタちゃん。次は『かぎやー!』だよ」
妙な事を妹に仕込むナナ。
まあ、間違いじゃないけどね。
しかし、次の掛け声前に花火打ち上げ場所とは別の場所から爆発音と共に火柱が上がった。
そしてカフェが停電を起こした。
「何が起こったのじゃ? あれは花火じゃないのじゃ!」
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