第102話 康太は公安と仲良くなる:その8「女性の浴衣姿って良いよね!」
「やっと見つけたよ、コトミちゃん」
俺は予てより探していたコトミちゃんを、彼女が教室から出たところでようやく見つけた。
周囲の気配察知と自らの気配消去に才能があるコトミちゃん。
彼女が本気で「かくれんぼ」したら誰も見つける事は出来ないし、「缶蹴り」やったら多分彼女に誰も勝てないだろう。
「ようやくアタシを見つけられたんですね、先輩」
ニコニコ顔で俺を見るコトミちゃん、どうも今回はワザと俺に見つかるように行動した様な気がする。
「だって、俺がコトミちゃんが居そうなところに行くと、必ず俺が到着する一歩前にいなくなっているんだもの。今回は気配消して俺の予定を偽って動いてやっと見つけたんだけれど、もしかしてワザと俺に見つかるようにしたの?」
にんまりとするコトミちゃん。
いつもの右手人差し指を唇の前に立てるヒミツポーズで、
「それは乙女のヒミツですね」
うん、こりゃワザとだ。
またコトミちゃんに遊ばれたのね。
「まー、それはどーでもイイや。コトミちゃん、俺の修行計画に絡んでいるそうだけど、最近ますます修行というよりシゴキに思えるのは、もしかしてコトミちゃんの案なの?」
コトミちゃんは首をかしげて、
「そうですねぇ。ヒミツですって言いたいところですが、先輩がお考えの通りですよ。だって、先輩結構強くはなられていますけど、目標はチエお姉様級との戦いでしょ。なら生半可な修行じゃムリでしょ?」
う、その通り。
魔神将級と戦うのを前提にしないと、リタちゃん母星奪還計画はムリ。
「そりゃそうだけど、俺すぐにはそこまで強くなれないぞ」
「だから、一長一短にはいかないので策を色々練っているんですよ、先輩」
コトミちゃん相手では俺勝てないよ。
マユ姉ぇやチエちゃんと別方向のツワモノだもの。
「はいはい、分かりました。そうだ、今回はもう一件話があるんだ」
「公安さんとの話ですか? それなら既にマユお姉様から聞いてますけど」
まあ、「耳」が早いコトミちゃんなら公安さんと俺達の関係は知っているよね。
「それじゃなくて、今度の夏祭りなんだけど、皆で一緒に花火見に行かないかってお誘いなんだ」
「えー、先輩アタシにそこまで気があったんですか?」
ニヤニヤとするコトミちゃん。
絶対分かっていて俺を弄っているに違いない。
「残念、コトミちゃんだけの話じゃなくて、最近お世話になっている人をご招待したいってマユ姉ぇの案なんだ。女の子の浴衣の着付けもマユ姉ぇが出来るから、皆に声をって話なんだ」
ここまでコトミちゃんに話していて、俺は気が付いた。
こんな話ならマユ姉ぇがSNSなり電話で各方面に連絡すればイイだけの話。
それも捕まえるのが困難なコトミちゃんに対する連絡を俺にさせたのはマユ姉ぇに何らかの考えがあっての事。
つまり俺は、またまた女性2人の手の上で遊ばれる「孫悟空」な訳だ。
「え、そうなんですか? 実は浴衣はあるんですが、着付けに困っていてどうしようかと思っていたんです。マユお姉様なら安心ですし、それならお願いしますね」
イイ笑顔で答えるコトミちゃん。
こうやって見ると結構カワイイぞ、コトミちゃん。
うむ、こうやって俺の精神状態を良くするのが2人の魂胆だったりして。
その後、俺は吉井教授、マサト、カオリちゃん、ケイコちゃんに連絡をした。
高校生組は浴衣が着れるのと、チエちゃんに会えるという事で大喜びだった。
尚、豊原医師は祭りの日は救急担当、中村警視は警備責任者という事で、今回は残念ながら不参加との事だ。
◆ ◇ ◆ ◇
夏祭りは7月の中頃、梅雨時期にあるけど今年は無事梅雨の合間の晴れ日、無事に花火も打ち上げられる。
俺は着付けが行われているマユ姉ぇ宅の玄関付近で待っていた。
そこでは、プワプワとリングレーザーを吐くモアイ像2体と火炎ブレスを吐く狛犬1号・2号が仲良く(?)遊びながら門番をしている。
そこに更に「ぐっちゃん」が遊んでいるという百鬼夜行。
流石に「光兼」さんは大人しくリビングで待機しているそうだ。
どうも今日は沢山の若い女の子が近くにいるもんだから、ご機嫌らしい。
最近、あんまり出番が無いというか、しゃべっている余裕が無かったから、声を聞いてもらえる「力」持ちの女の子ばかりに囲まれて、本人曰く「この世の春」だそうな。
俺と同じく暇を持て余しているのが、タクト君。
アヤメさんと一緒に来てくれたそうで、アヤメさんは着付けの真っ最中。
「兄貴、男ってこういう時待つのが仕事なのかなぁ」
「そうだね、女の人を待つのが男の役目だと思うよ。ショッピングセンターとかで良くお父さんが駐車場で待っているけど、一緒に行ける場所なら付いていって荷物を持ってあげるのが良いし、今回みたいに行けないのなら待っててあげるのが、イイオトコだと俺は思うよ」
短気そうなタクト君にしては気長かつ良く考えている。
多分、惚れているアヤメさんの浴衣姿という「ご褒美」があるから待っていられるんだろうね。
「お待たせしたね、途中でマサト君にあったから一緒に来たんだ」
そこに現れた吉井教授、渋い灰色の浴衣を粋に着こなしてオジサマの魅力満点。
因みに、俺、マサト、タクト君は、ちょっとお洒落はしているけど洋服。
そりゃマユ姉ぇに言えば浴衣準備してくれそうだけど、俺はそこまで衣装に気合入れてないし。
「コウちゃん、皆お着替えできたから、お部屋に入って良いわよ」
マユ姉ぇから着付け完了との声が聞こえた。
では、女の子達の浴衣姿、拝見しましょ。
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