第100話 康太は公安と仲良くなる:その6「剣術修行!」
100話までとうとう来ちゃいました。
コウタ達の冒険を今後とも宜しくお願い致します。
俺は胸元の「次元石」を握って、この石の持つ力に恐怖した。
俺にとっては便利でリタちゃん、カオリちゃん、ケイコちゃんを救い、「騎」を倒し、チエちゃんと知り合う切っ掛けになったモノ。
しかし、取り扱いを間違えれば人々を傷つけ、世界を滅ぼすかもしれないモノでもあるのだ。
「まあ、コウタ殿が気に病む事は無いのじゃ。超古典アニメでもあったじゃろ、『神にも悪魔にもなれる』ロボが。科学技術も同じじゃ、原子力は核兵器にもなり環境を放射線で汚染する可能性があるのじゃが、その発電能力は圧倒的で今の生活には必要な『悪』じゃ。石油でも同じじゃな。窒素酸化物や二酸化炭素での環境汚染の面と発電、暖房、エンジンと無くてはならんモノ。そして政治に利用されて戦争の原因にもなるモノじゃ。」
チエちゃんは腕を組みながら話す。
「じゃから、コウタ殿は『悪魔』にならなければいいのじゃ。悪魔であるワシが言うのもなんじゃが、何でも使い方次第なのじゃぞ。今までコウタ殿がその『石』を使って沢山の人々を救ってきたのじゃろ。じゃから、これからもコウタ殿が思う道を進むのじゃ!!」
俺は励ましてくれるチエちゃんに感謝しないとね。
「いつも俺を見守ってくれてありがとう、チエちゃん。俺頑張るね」
俺はチエちゃんの頭を撫でながら言う。
「うみゅぅ、拝まれるよりはマシじゃが乙女の頭を撫でるのも良くないのじゃぞ」
といいつつ、顔を赤くして嬉しそうなチエちゃん。
そしてそれをにこやかに見守るマユ姉ぇ。
「大変だったのね、タクト君。そういう訳ならオバサン、いっぱい修行に協力するわね」
マユ姉ぇの自虐オバサン発言にぎょっとするタクト君、もちろんトラウマ抱えたチエちゃんを含む俺達も。
「お母様、もう許して下さい。俺が悪いだけですから、普通の修行でお願いします」
ペコペコと頭を下げて土下座で謝るタクト君。
「えー、私修行については本気なのにぃ。ちょうどコトミちゃんから良いアイデア貰ったから試したかっただけなのよ」
明日大学に行ったら、早速コトミちゃん捕まえて事情聴取せねば。
あの子ったら、どこまで暗躍しているか分からんからなぁ。
しかし、こんな血なまぐさい話を聞いていたはずのナナやリタちゃんは案外平気っぽい。
「ナナ、気分悪くならない? リタちゃんも大丈夫?」
「ボク、血はそこまで怖く無いけど、狼男はイヤだねぇ。ボクの手持ち九十九神サンじゃ、望遠鏡サンくらいしか効きそうも無いし。確か銀製の武器なら効くんだよね、お母さん何か良いモノ無いの?」
「わたしのほしでもたたかい、いっぱいあったから、こわくないよ。まもの、まほうでいっぱつだったもの」
はい、俺が弱いだけですね。
女性は身体上、血液には慣れているだろうけど、ナナの度胸はマユ姉ぇゆずりなんだろう。
後、確かにリタちゃんの最大火力相手なら狼男でも一撃必殺だね。
そうこう雑談をしている間に、アヤメさんがタクト君を迎えに来た。
「すいません、ウチのバカタクト、迎えに来ました」
「あら、いらっしゃい。アヤメちゃん、せっかくだしスイカ食べていかない?」
マユ姉ぇはアヤメさんを捕まえて、よく冷えたスイカを渡す。
マユ姉ぇ、いつのまに準備していたんだよ?
「そうですか、ではお言葉に甘えて頂きます」
美味しそうに、しかし上品にスイカを食べるアヤメさん。
「アヤメ殿、すまぬが先日の派出所襲撃事件の顛末をタクト殿に聞いたのじゃ。大変じゃったな」
口元を拭い、チエちゃんの方を向いて話すアヤメさん。
「あら、タクト君勝手に話しちゃうなんて。後から折檻かしら。まあ、皆様には隠す事もありませんから良いですが、結構苦戦してしまいましたわ」
タクト君の方を一瞬睨むも、おそらくポーズだけだろう。
多分事件が血なまぐさかった事と自分が苦戦した事を言いたくなかっただけの様な気がする。
「伝説のままの狼男相手じゃ、警察の装備では刃が立たぬじゃろうし、いかなアヤメ殿やタクト殿が活躍しようとも2人では戦力不足じゃな。もし良ければ修行以外にもワシらが力を貸さぬ訳でもないのじゃ。母様、良かろう? 少なくともコウタ殿には良い修行になるし」
マユ姉ぇはいつもの指を頬につけて考えるポーズをして、
「そうねぇ、契約先としては申し分無いし、お給金未払いも無いわよね。敵が人間かも知れない以外は最適なんだけど、コウちゃんどうする?」
俺は少し考えた。
確かに実戦を経験できるのは魅力的だし、警察庁のお仕事なら基本的に人助けだ。
人間相手という以外は魅力的に聞こえはする。
「俺で良ければ微力ながらお助けしたいと思います。ただ、俺自身対人戦をしておらず、人間相手を倒せるかどうか正直分かりません。そこが不安でもありますが」
俺の答えを聞いたチエちゃん、
「なら、アヤメ殿。良かったらコウタ殿の剣の先生をしてはもらえぬか? 後、ヒトを切るという事についても教えてやって欲しいのじゃ。ワシらの中には剣術使いはおらぬし、どうしても身内相手では甘くしてしまうのじゃ」
「私とて未だ修行中の身、数回はヒトを切ったとは言え、それでも命を奪ったのは今回が初めてでした。ですので、私にはお教えできるかどうか分かりません」
少し手が震えているアヤメさん。
そうか、アヤメさんとて、妙齢のうら若き乙女。
ヒトを切った事を完全に納得している訳でもないんだ。
「じゃから、アヤメ殿もここで一緒に心を癒しつつ強くなれば良いのじゃ。魔物相手の修行ならいくらでもワシがお相手してやれるし、ここには術者も多い。実戦練習には困らんぞ」
なるほど、チエちゃんはアヤメさんの心情も考えた上での提案をしている訳か。
そしてこの機会を逃さないようにして、有無を言わせぬタイミングでスイカを渡したマユ姉ぇ。
この2人の前では全てお見通しという訳だね。
「アヤメさん、いやアヤメ師匠。俺からもお願いします。臆病者の俺ですが、貴方のお力になれたらと思いますので、宜しくお願い致します」
「えー、兄貴! 姉御は俺だけの姉御だぞ。いくら兄貴相手でも渡さないぞ」
俺がアヤメさんに従事しようとするのを嫉妬するタクト君。
そうか、タクト君ってマジでアヤメさんに恋しているんだ。
俺は、タクト君の首をチョーク気味に押さえ込んで耳元でこそっと話す。
「そうか、タクト君ってアヤメさんの事好きなんだね」
その一言で珍しく純情に真っ赤になるタクト君。
「大丈夫、俺には剣術を教えてもらう以外の下心は無いから安心して。第一、俺が浮気したら正妻候補の妹達やマユ姉ぇに9割9分殺しされちゃうから」
それを聞いて安心したタクト君。
そりゃ、ウチの戦略級女性陣を一度は敵に廻した身、恐ろしさは十分理解している。
「それならいいや、兄貴」
俺がタクト君の首にまわした手を離した後、タクト君はアヤメさんに話す。
「姉御、兄貴の事俺からもお願いするよ。兄貴達が強いのは確かだし、ここいらで仲良くしておいた方が良いよ」
少し困り顔のアヤメさんだけれど、
「タクト君までそう言うなら仕方がないわね。忙しい時はムリだけどそれでも良いのなら、こちらこそお願いします」
こうやって俺達の仲間に、また女性が増えた。
まあ、今回は女難フラグは、たぶん立たなかったから良し。
その分、兄貴フラグが増えたよーな気もしないでもないけど。
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