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僕の婚約者

作者: ぼたもち

よろしくお願いします。

僕の婚約者は変わっている。


彼女は高位貴族なのに大衆小説を読むのが大好きで、よく本を読み終えると僕に感想を言ったり、これについてどう思う?と意見を求めたりする。

普通の貴族はよく思わないかもしれないが僕は別に構わない。

むしろ頼られているみたいで嬉しいし、嫌じゃないしね。


そんなある日いつものように彼女が僕に意見を求めてきた。


「婚約者がいるのに平民に恋したらどうする?その場合婚約破棄する?しない?」


……やけに具体的だな。そう思いつつも、家同士の結び付きがあるし、個人の感情だけで婚約破棄なんてするものではないだろうと答えると彼女は納得したようだった。

その後も、学園で元平民の令嬢が近づいてきた場合や婚約者がいる相手と仲良くするのはどう思う等、色々聞かれたが大方最近読んだ小説にそういう内容があったのだろうと、一人納得した。


最初の一年はそういった事を聞かれる度、困った小説にはまったものだな~と思っていた。

しかし、それが二、三年になると流石の僕もなぜそんな事を聞くのか彼女に尋ねてみるのだが、その度にただ聞きたかったから、と言われてしまった。


******


ある日、遂に僕は耐えられなくなって何で同じ様な質問をするのか彼女に聞いてみた。


すると彼女は、


「何か問題でも?」


と言ってきた。


「いや、問題というか…。一、二回ならまだしも毎年同じ様な事を聞かれたら流石に気になるよ。人の意見なんてそうそう変わるものでもないし、一回聞けば十分だろう?」


と言うと、


「そうだったかしら?私って忘れっぽいから…」


…その割には読んだ小説の内容をすらすら言えるし、この前も家庭教師に覚えが早いって褒められてなかったっけ?って言ったら…


「なによ!文句あるの!?」


逆切れされた…。僕なにか間違ったこと言った?……解せない。


******


それから何年か経って、学園に入学する年になった。

入学前の最後の機会に彼女と会っていた僕は、もはや毎年恒例となった質問に答えていた。

いつもなら一通り聞き終わるとそれなら良いと満足するのだが、今回は違った。


「…それなら良いわ。二言は無いわね?」

「えっ?無いけど…」

「本当に?」

「うん。」

「ならこの誓約書にサインを。」

「何で!?」


意味が分からない…。何故この流れでサインする事になるんだ?


「どうしたの?二言は無いんでしょ?ならサイン出来るはずよ。」


いや無いけどさ…。それでどうしてサインになるのかが分からないんだけど…。それにその誓約書、法的に効力があるやつだよね?そこまでする必要あるの?

僕が彼女の真意について悩んでいると、痺れをきたしたらしく、


「早くサインを!このままだと夜も安心して眠れないのよ!!」


そんな彼女の剣幕に気圧された僕はその誓約書にサインをしてしまうのだった…。


******


学園に入学してからも彼女は度々僕に聞いてきた。入学前より頻度は減ってしまったけれど、尋ねられると何故か安心する僕がいて、慣れって恐いなぁと思う。


それと同級生の中に彼女の質問にあったような元平民の男爵令嬢がいて驚いた。元平民だからか高位の僕にも親しげに話し掛けてきて、普通なら物珍しく映るのだろうけど、僕の場合その度に彼女の質問とあの時の表情を思い出すため避けまくった。


そんな風に特に問題なく学園生活を送っていたある日、卒業パーティーでそれは起こった。


上級生を送るため下級生の僕もパーティーに参加していたのだが、卒業生の一人である公爵家の令息が突然婚約者に婚約破棄を宣言した。


その一連の騒動の内容があまりにも彼女の質問と似ていて頭の中に疑問符が飛び交ってしまった僕は、何をするでもなく、ただ呆然と事の成り行きを見つめていた…。


結局、婚約破棄を宣言した令息は逆に婚約者に返り討ちにされて公爵様に連れていかれた。


******


騒動が落ち着き、婚約者である彼女と合流した僕は先ほどの事について話をしていた。


「しかし、驚いたね…。まさかこんなことがあるなんて…」

「本当にね…。まさか卒業パーティーで公爵家の跡取りである方が婚約破棄を宣言するなんて。」

「それもあるけど…。僕が驚いたのは騒ぎの内容が君の質問とよく似ていた事かな…」


本当によく似ていた。特に婚約者がいるのに元平民の男爵令嬢に恋をして婚約破棄をするところなんかそっくりだ。

そう思っていたら…


「私のこと…気味悪く思った…?」


彼女が不安そうに聞いてきたから、


「なんで?もしかして男爵令嬢が言っていた「ヒロイン」とかに関係があるの?だとしても僕には関係ないよ。僕は君に無理に聞こうとは思わないし、君が言いたくなったら僕に言えばいい。」


それまで僕は待つつもりだし、彼女の質問が何かに似ている事なんて今更だ。

そう伝えると、彼女は表情を和らげて小さくありがとうと言った。

その後、


「じゃあ、婚約破棄はするの?」


と聞いてきたから、僕は笑って


「まさか!」


と答えた。


確かに僕の婚約者は、大衆小説を好んだり、同じ事を毎年聞いてきたりと少し変わっているけど…僕はそんな君と一緒にいるのが大好きで、愛しているからね。


それに、君だって僕の事を愛しているだろう?だったら婚約破棄なんてそもそも必要ないじゃないか。

男性目線で書いてみました。

やっぱり乙女ゲーム系は難しいですね…

因みに誓約書の内容は上記のような質問にこう答えたから貴女には一切害は与えないと誓います。みたいな内容です。

婚約者はもし仮に断罪されてもこの誓約書を見せて、誓ったんだから私が罰せられるのはおかしいよね?と言うつもりでした。

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