おっさんのその後と善行
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目が醒めるとお尻が痛かった。思い出したくも無い。なんで俺がこんな目に…と思うのは間違っているのだろうな。間違いなく原因はあれだ、あの気持ち悪い触手野郎がケビンに掛けやがった液体の所為に違いない。
「っと…ケビンは何処だ?これは…手紙?」
俺が辺りを見渡すと、ボロボロの机の上にザラザラの紙が置かれていた。ザラザラとは言っても、十分に高価なのだが。…嫌な予感がする。
しかし俺にはその手紙を無視することができなかった。慌てて紙を広げる。
そして呆然とした。なんだこれは…手紙には次のように書かれていた。
親愛なるレイトへ
いや、俺には既にこんなことを書く資格は無いのかもしれないな。俺は一時の欲望に負けてお前にとんでも無いことをしてしまった。
謝るべきだったのだろうが、お前と目を合わせるのを恐れて手紙で済ましてしまった俺のことを許してくれ。いいや、恨んでくれていい。俺が気を強く持っていればこんなことにはならなかった。
俺はこの街から去る。お前に合わせる顔がない。この事でお前にさらなる迷惑をかけてしまう事だろう。すまない、すまない、本当にすまない。
ケビンより
☆
ここから先の事はあんまり覚えていなかった。気付いたら俺はいつも止まっている宿屋を出て、乗合馬車に乗って今まで居た田舎の様な場所では無く、都会に到着していた。
おそらくケビンと共に頑張って来た街を見ているのが辛かったのだろう。人ごとの様だが、本当にこの時の俺は浮浪者の様な顔をし、うわごとの様なことすら口走っていたかもしれない。
まぁ、その時の事を人に聞こうとは思わないから、実際にどうだったのかは分からないのだが。
とにかく俺は都会だからこそ溢れる雑用をこなしつつ、それで稼いだ金で安酒を飲み、それは見事な飲んだくれとなっていた。
今の俺を見ても前の俺を思い出すような人は、そうはいないだろう。何故なら今の俺は髭がかなり濃くなっていて、それでいて髪の毛は薄くなってきているからだ。
原因はたくさん。ストレス・酒ばかり飲んでいることからの不摂生・そもそもの年齢…
水に映った俺の顔を見て思う、酷い顔だ。あの大変だったがそれでも楽しかった頃は戻って来ないんだな…もう寝よう。
そうして俺は寝る、雑用、酒、の三つを繰り返し人生を空虚に生きていた。
違和感というべきだろうか、俺が自分の力に気付いたのは本当に偶然だった。
珍しくその時の俺は街中で出来る雑用ではなく、外の薬草最終に向かっていた。雑用がなく、それでいて今日働かないと、何も食えなかったからだ。
幸い前に取ったことのある薬草だったので、おおよその群生地は、その薬草の特徴から行ったことない場所でもよく分かった。
酒を飲むために手早く薬草を採集した。まぁ、魔物を避けるためというのが本当の理由だが、とにかく俺は酒に酔って居たかったんだ。
俺の運命が変わったのはこの後のことだった。
イタンダ。魔物に襲われている少女が。どう見ても俺よりも弱そうな少女が…俺が逆立ちしても勝てないだろう魔物、ハイコボルトに襲われている。
今更だが冒険者ギルドでは実力や実績に合わせてランク付けが行われている。まぁ、分かりやすく言うとそうする事で無謀な奴が死なないようにしてる訳だな。
俺はおっさんになるまで頑張った訳だが、Eランクだ。これは冒険者ギルドに入ったばかりの冒険者がFランクで始まる所から、新人を抜けた所…といった感じだな。
ゴブリンは複数体相手でも勝てるし、コボルトにだってタイマンなら勝てる。しかしハイコボルト、あいつはどう足掻いても無理だ。
コボルトをタイマンで倒せるようになるのが大体Eランクに当たるのだが、そのコボルトが戦いを繰り返し、レベルアップした末に進化したのがハイコボルトだ。
魔物としてのランクはDで、とてもではないが敵う相手ではない。
そう、本当なら無謀な事をした少女が悪かったと、逃げ出すべきなのだろう。普通の…この世界の住人ならそうする。冒険者で無かったとしても。今なら気づかれて居ない。逃げ出す事も大変容易だろう。
だが…だが…俺にはそれは出来なかった。最早死ぬのを待つだけのように細々と働き、酒を飲んでは眠る。そんな事をしているだけの俺と、一体何をしているのかは分からないが、前途明るい少女。生き残るべきなのは一体どちらなのだろうか?
誰に聞いても後者と答えるだろうし、俺だってそう思う。そう考えるたなら話は早い。死ぬ?そうだ。でも何故か怖くない。寧ろ最期にいいことができそうだという事で気持ちが解放されたような気すらする。
さぁ、行くぞ!
☆
あ、ああ。ただ薬草を取りに来ただけだったのに。どうして!どうしてよ!どうしてこんな化け物がいるのよ!これが無いと、シスターが助からないってのに!
「UGAAAAA!!」
「ひえっ!」
やばいやばいやばい!だ、誰か助けて!
「俺が食い止める!お前は早く逃げろ!」
そんな私の心の叫びを聞いたのか、そんな声が後ろから聞こえた。助かった!そう思った私が見たのは、整えられていない髭が特徴の弱そうなおじさんだった。
どう見ても止められそうにないけど、恩人だ。取り敢えず私は入れ替わるように街へ走りつつ、叫んだ。
「おじさん、ゴメン!おじさんの事、絶対に忘れないから!!!」
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