そして永遠に
金魚の餌やりが好きな彼氏と鯉の餌やりが好きな彼女の純愛物語の結末は──。
「はい、──さん。あーん」
彼は、彼の手料理のオムライスをスプーンに乗せ満遍の笑みで私に差し出してきた。
「あーん」
美味しい、じゃなくて成る程。
彼は自らの手で金魚に餌をあげる快感を覚えたわけだが、今度は私に自らの手でご飯をあげたかったわけ。
「ふふ」
成る程、面白い。
考えたことが無かった。鯉の餌になりたいと思ったことは何回かあったが、こうして人に何かを食べさせてもらうのは。与えてもらうのは。
初めてだ。不思議な感じがする。
私は、自分の前にあるオムライスをスプーンですくって彼の顔の前に差し出した。
「あー、む」
私のスプーンから彼がオムライスを食べた時、私は全身に電気が走った。
なに、今の。
私はもう一度、スプーンにオムライスをのせ震える手で彼の口元に持っていった。
「あ、む」
彼が私の手からオムライスを口にするたびに、私は、口では言い表せない快感を得た。
何、何この気持ち。
はぁ、と息をついて心を落ち着けようとするが自分の手からオムライスを口にする彼が可愛くて、愛おしくてどうしようもないのだ。
何だこの気持ちは。よくわからない。
ぞくぞくと快感に打ち震えながら体を抑える。
「はぁ、はぁ、あはっ、あはは」
「どうしたんですか──さん」
きっと今私は金魚にミミズを与えていた彼よりも変態な顔をしていると思う。
***
「今日は──さんの、家でデートですか。嬉しいですね」
私は、にっこりと微笑んだ。
「私も今日はオムライスを作ったの。貴方よりはうまくできてはいないと思うけど」
私は、自分のオムライスをスプーンですくって彼の口元に持っていった。
彼は嬉しそうに、それを口にした。
「美味しいですよ。ただなんかちょっと後味が...ん、あれ?おかしいな...あ....」
ガタンと彼は机に突っ伏した。
スプーンがカシャンと床に落ち、彼はピクリとも動かなくなった。
彼のオムライスはあらかじめ彼から少し遠めに置いておいた。
私は、手袋をキュッとしめて笑った。
「ふふ、あはっははあはははあははっ!」
***
「ハッ!あ、あれ?僕、──さんとご飯を食べていたはず.....あれ」
彼は、食卓の並ぶテーブルを前に、椅子に座ったままキョロキョロと辺りを見回した。
「夕飯の時間よ。はい、あーん」
優しく甘く囁くように声をかけた。
「えっ.....あれ、あっ...あぁあ!!ああ!!」
彼は、気がついたようだ。
「大丈夫。私の知り合いにお医者さんがいてね。麻酔が打ってあるから」
彼の両手は肩から切り落とされていた。包帯でぐるぐる巻きのまま、肩から下の腕がない彼は、混乱して叫び始めた。
私は、にっこり笑った。
「大丈夫よ。金魚や鯉にもそんなに長い腕はないじゃない」
「えっ...──さん?」
「はい、あーん」
「どうして.....どうしてこんな酷い事...どうして。僕は貴方のことが本当に好きだったのに」
「私も貴方のことが好きよ。だからこうしてるの。はい、あーん」
今日は肉料理。
細かくナイフとフォークで切って彼に差し出した。
「はい、あーん」
「うわ....あぁああ!!!あぁあ」
彼は、日本の足で椅子から転げ落ちた。
両足は縄でぐるぐる巻き。まさに"魚"のような姿で床にのたうちまわる彼の前にしゃがみ込んだ。
「ふふ、あーん」
「狂ってますよ...どうしてこんなことするんですか」
涙で顔をグチャグチャにする彼に微笑みかけた。
「私、分かったの。貴方が他の人間に餌を与えられないようにする方法」
「え.....餌」
「貴方を鯉にするのよ。自分で食べ物を得られないようにして、私の手からしか愛も食べ物も自由も与えられない状況にすればいいの」
私は、彼の口元に肉をぐいぐい押し付けた。
「ほら、この前みたいに私の手から食べて?ほら、ほら、ほら」
「やめて.....やめて....やめてください」
顔を振って抵抗する彼に、私は慈しみの瞳で彼を見た。
「大丈夫よ。新しい池になれてないのね。これから一生貴方は私の手からご飯を得るの。貴方は私がいないと生きていけないの。可愛いね、可愛いね」
彼は、脱力したようにだらりと抵抗をやめた。
そのぽかんと空いた鯉のような口に、お肉を運んだ。
「まだまだあるのよ、たくさん食べてね」
私は、やっぱり病んでる人が好きなんですよ。
私は病んでいると言われるのですが、まぁだからかもしれないですが、何か小説を書くと必ず病んだキャラを一人は登場させますね。
ヤンデレにもタイプがあります。私はあらゆるヤンデレキャラの出るアニメは大体見てきましたが、その中でベタですが我妻由乃ちゃんが好きです。めちゃくちゃ好きです。
未来日記は何回見たかわかりません。あんな子に愛されたいですね。
ここまで見てくださってありがとうございます。
ヤンデレに愛されたい妄想をよくしているので、またストレスが溜まったらヤンデレ小説で発散すると思いますがお付き合いください。
その度に犠牲になる人がいるんですがね、ふふ。