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8~ルクスの魔法練習

 

 レゾニア王国、第三王女アズシア=フローライト。

 リンガイア隣の東の国からやってきた王女様。


 王女ってもっと、気が利いておしとやかな存在だと思ってた。

 目の前にいるアズシアは、ワガママで高飛車で、世界が自分中心に回ってて自分を神か何かだと思っているフシがある。


 お茶を切らしたから、お茶が飲みたいとアズシアが言いだした。

 テントの中には鍋やフライパンにヤカンといった、調理道具があったので、よもぎとハミング草をブレンドしたご自慢のお茶を振舞ったんだけど、「まあまあかしら。まあ王宮で飲むお茶には少し見劣りする。精進なさい」と辛辣なコメントを頂いた。


 味に自信はあったんだけどな。

 プライドよりアズシアの態度が、少しピキリと頭にきた。


 そんなワガママ女王に、ルクスが従っているのは魔法を習得する為だそう。

 せっかく村に相当な魔法の才があるハルカがいるのだから、ハルカに聞けばいいのに。そう思ってルクスに訊ねたのだが、ハルカは才能はあっても教えるには苦手なようで、ルクスには才能がないから諦めたら? と言い返されたそう。


 一応、魔法の練習には付き合ってくれたそうだが、ルクスに進歩がみられなかったのでそれっきりだとか。

 ハルカは家にあった、魔術教本を見たら出来という、いわゆる天才だ。

 だけど天才が教えるのが上手いとは限らない、人によって感性や才能が違うのだから。過程や工程をこと細かに噛み砕いて、相手に理解できるレベルで教えることは才能だけではできない。


 その点アズシアは教えるのが上手いと思う。見ていて分かる。

 ルクスとアズシアはテントの外に出で、火の魔法の練習をしている。


 アズシアに聞きたいことはもっとあるし、ノートの予言書のことそれとなく切り出してみたいんだけどな。君の国は今年中に滅びるよ。なんてストレートに伝えるのも難しい。現状、レゾニアが滅びるなんて噂もそんな予兆すらないのだから。


 頭のおかしいヤツ扱いされて終わりだ。


 俺が躊躇してる内にルクスが「いつもの練習お願いします」

 といった流れで、俺は今のとこ部外者そのもの。テントの外で2人の魔法練習を三角座りで見ている。


 上を見上げる。

 空は雲一つとしてない澄み渡る青空。

 いい天気だなあ、と心地良さにまどろんでしまう。

 近くに魔王ラプラスの祠が、あることすら忘れてしまいそうになるほどに。


「――だから指先に熱を感じるように集中して。瞳を閉じて心と意識を外に向けるの、五感に頼りすぎないように。近くに意識を向けて、そう、ゆっくり落ち着いて。少しずつ熱が膨れあがって爆発するようなイメージで」


「えぇーと……ちょっと待ってくれアズシア様。その熱を感じるところまでは来たけど、膨れさせるってのが分かんないです」


「このアズがここまで指導してるのに、分からないとは本当仕方ないですわ。意地でも使いなさい今日中に。熱が手から広がってゆくイメージよ、水の方が放射線状に薄く延ばすイメージで簡単なんですけどね。ルクスは水の才能がないから仕方ないか」


「面目ないっすね。でもホラ水とかより火の方が格好よくないですか?バァーっと燃やしたり」


「アズに対するあてつけですかルクス?」


「いやっ!? そんなつもりで言ったんじゃないですって! 本当!」


 機嫌を少し損ねたようなアズシア。

 両ひざを地面につけ、上半身を伸ばしながらアズシアの足にしがみつくかのように弁明するルクス。一見すると、別れを切り出された女々しい男の末路のような姿。

 なんというか必死だなぁ。そこまでして本当に魔法が使いたかったのかルクス……。


 ……心からの願いか。

 結果はどうあれ叶えた。

 ラプラスの悪魔は。

 ルクスの魔法が使いというその願いを。 


 才能がないと言われながらも、こうやって必死に練習して、それでも叶わなくて。きっと絶望した夜もあったことだろう。そして、突如、目の前に訪れた甘い闇の誘い。どれだけの想いを込めてルクスは願いごとをしたのだろうか?


 俺がその未来の可能性を、ゼロに戻してしまったが。

 分かる、分かるよ今なら。

 それが100%自分の為の欲望からの行動か、あの状況じゃ分からないけど。

 生きてれば上手くいかないこと、思い通りにいかないことばかりだ。


 もし、心からのどうしようもない願いが夢が叶うのなら、あの誘いに手を出してしまっても不思議じゃない。……俺は聞かれなかったけどな。何故だ? 理不尽だ。 願いを100個にしろ、俺を大金持ちにしろ! ぐらい言えば良かったな。



 ハルカも何か頼んでいたようだけど、何を頼んだんだろう?

 今となっては知る由もない、全ては過ぎ去った未来だ。

 リスクとかないんだろうか……ラプラスの悪魔っていうくらいだぞ。あとで教えて貰おうか。ラプラスの悪魔っていうからには文献とかあるだろさすがに。サーニャ辺りが絵本とか持ってるだろうし。


 鈍感そうなサーニャには、俺がカナタではないことを悟られてるようだが。

 あ~あ、この辺のことも上手くやらねえとな。

 せっかく仲良くなった仲間達だ。




 まだルクスの練習にボヤキを入れながらアズシアが付き添っている。


 そういや。


「アズシアさん」


 アズシアがこちらに振り向く。


「さっきの話だけど人によって、苦手属性とか得意属性てあるんですか?」


「ええ先天的にね。ルクスは火が得意属性だから水は特にダメ。水と氷は相性がいいとか、言わば半属性の魔法は使いずらいというのが通例ですわ。ちなみにこのアズは火と水と土と氷。それに光と特殊魔法を使えます」


 鼻高々といった感じでアズシアが答える。

 しかしながら俺には魔法のことが良く分からないから、まったくもって凄さが理解できなかった。


 魔法は10人に1人が使えるぐらい少ないとは聞いてるから、凄いことなんだろうけど。

 だからキョトンした表情をした俺に、アズシアがやや口を尖らせて言う。


「フフッ、このアズの凄さが理解できましたか? 理解できたのならば、それだけの才能を目の当たりにできた奇跡にお礼を言うべきではなくて?」


 なぜお礼を言う必要がでてくるのか? 

 ワケが分からん。

 分からんけど、面倒くさそうなのでお礼をする。


「ハア。アリガトウゴザイマス」


「分かればよろしい」


 だから何をだよ。

 


 魔法ねえ。

 ちょっとやってみようか。

 精神を集中し指先で熱を感じるようにして、それを大きくし爆発させる。


 ボッと一瞬ガスが、爆発したような火が手のひらから出た。

 おいおいおい! 出来るのかよ、出来ちゃったよ……ははは、マジか。

 アッサリすぎて拍子抜けしたけど、ちょっと嬉しい。


 ルクスもアズシアも見てなかったか。

 この感動を伝えたい。



「おおっ!? で……できた! 出来たぞ見たか! カナタ!」


「えっ? ゴメン見てなかった」 


 喜びの声を上げ嬉しそうな表情で、天高く拳を振り上げガッツポーズのルクス。


「まあ、出来たといっても細く小さな火の粉ですけどね。おめでとうルクス、これで魔法の入り口に立ったわね」


「ありがとうアズシア様!」


 と言い俺の方へ駆け寄ってくる。

 そして耳元で小声で話かけてくる。


「なあ見たか?」


「悪いな。よそ見してた」


「ちげーよ。アズさんの俺に笑いかけた時の笑顔だよ、すっげえ可愛いの。惚れるかと思った! てか惚れたね俺は、うん!」


「マジかよ」


 念願の魔法が使えたこともあって、やたらとテンションが高いルクス。



 性格や言動は置いといてだ。

 背も俺達と同じぐらいだし、顔はかなり可愛いと思う。

 そりゃ姫様だしね。

 村の中じゃ、容姿で対抗できそうなのはハルカぐらいか。


 だからこそだよルクス。

 ルクスの顔は悪くない、明るいし運動神経もいいし。

 だが、お前はただの村人で、向こうは王国の姫だぞ。

 釣り合うも何も土台からして無理だよ。



 届かない高嶺の花に、恋をしたかルクスよ。

 ルクスはいいやつだと思うけど、とてつもなく難しいんじゃなかろうか。

 こう思うのは、俺が元アラサーのオッサンだからであって、打算や利害がすぐ働いてしまうからだ。


 可能性はゼロではない。

 生きている限り1%はあると思いたい。

 ま、俺に出来ることは応援してあげよう。


「お互い金色の髪だし相性いいんじゃないか。ひょっとして、まあ応援するよ頑張ってな」


「カナタもそう思うか? いやーお互い金色なんだよな髪が!」



 嬉しそうに、そして髪を照れくさそうに掻き揚げるルクス。

 あまりの浮かれ過ぎに、見てるこっちまで微笑ましくなってくる。



「よしっ! 見ろカナタ! これが俺が会得した火の魔法だっ!」


 立ったりしゃがんだり、ジャンプしたり忙しいヤツだな。


「え……あれっ?」


 魔法を使おうとして、自分で気づいた違和感と小さな声。

 そのまま地面に両ひざをガクリとつき、バランスを失った上半身はパタリと倒れ込む。



「ルクス! 大丈夫か!?」


「あれっ……俺なんで。魔法使おうとしたら急に力が抜けて」


 ルクスは額に汗をかき瞼は朦朧としている。

 俺は不安になりアズシアに視線を向けた。



「マナバーンですわね」



「マナバーン……て何すか? それよりルクスは大丈夫なんですかね? 見て貰えますか」


 アズシアは焦る様子もなく、涼し気な表情で言った。


「そんなに焦らなくても大丈夫。魔法力の底がない状態で魔法を使ったので体に負担がきたのです。少し体を横にして休めば大丈夫。まあゆっくりしなさいルクス」


「……ありがとアズシア様」


 慈愛のこもった優しい言葉をかけるアズシア。

 へえ……こんな一面もあるんだな、ちょっと見直した。


「じゃあルクスをテントに運びなさい。それと水で濡らしたタオルに、この癒し手アクアの聖水を少し混ぜて額にかけることね。それで良くなるわ」


 ルクスをテントに運び込み横にさせる。

 もちろん俺がだ。


 アズシアは青と白の、高価そうな取っ手が三角のガラス瓶を取り出す。


 素朴な疑問。

 いわゆる魔法力が回復する飲み物だよな。


「それ直接飲ませたらダメなんすか?」


「魔法力の底が無い者に飲ませたら、過剰摂取で身体のバランスを崩してしまいます。ルクスは元々魔法力がゼロに等しいので。でも、こうしてタオルに含ませるぐらいだと大丈夫」


 へえ適量が大事ってことか。


 ルクスを横にさせてから、しばしの無言。

 何を言えばいいんだ。こういう間は苦手だ。

 ルクスなら、するすると空気を読まず、話を振るんだろうけど、アズシアのこと何も知らないし。


「そういえばソルトはまだかしら、どこで油をうってるのかしら」


「ソルト? 塩の配達のことすか?」


「そうよ。アズの専属騎士ソルト=シオ。水を汲んでくると言って……もうっ! どれだけアズを待たすのかしら」


 ……シオって名前かよ! 

 紛らわしい、微妙に話噛みあってたし。

 専属の騎士ていうからには、いかつくてゴッツイ体格の人なんだろうな。


 そういや聞きたいことがあるんだ。

 そう、レゾニアのこと。

 今年中に滅ぶと予言書に書かれたその原因と、なぜ一国の王女がこんなとこにいるのか。





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