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5~平穏な過去へと


 これは魔物に襲われ村へ来た、旅の商人から聞いた話。

 

 ラプラスの悪魔が祠から解放され、世界各地にはヤツの予言通り、急に魔物が多数出現した。

 細々と運営していた各地の冒険者ギルドは、かつての賑いをとり戻し多くの廃業した者や、傭兵崩れの冒険者達が詰め寄ることになった。


 商人たちは、交通が危険で不便になったと嘆く。

 教会には明日を不安に思う民衆達が、聖職者達の説教を聞きにホールいっぱいに溢れる。

 数の少ない魔法使い達は、今こそ魔法が必要な時、と魔法を教え金を得る為にせっせと各地巡業に精を出している。それと僅かな魔法を使えるだけで、金目的が目当ての詐欺師同然の輩も溢れることになった。



 世界は、たった一日でその在りようを変えてしまった。

 本当に予言通りだ。

 いや、ヤツは一つ嘘をついた。

 近い内に冒険者が溢れる時代が来るとは言ったが、昨日の今日だ。


 予兆というにはあまりに早すぎるぞ。



 俺達のアッテル村はというと、平和そのものだった。

 あんな事があった次の日だというのに、秘密基地には俺とルクスと当日にいなかったサーニャとリュカが遊びに来ている。


 これもまた……ラプラスの悪魔の予言どおり。

 平和そのもの。




「へっへーいいだろカナタ。これで火も起こせるし風呂沸かすのも楽だし、魔法っていいよな~。これで念願の冒険者に一歩近づいたってワケだ!」


 

「ご機嫌だなルクス」


「そりゃあそうさ! ずっと使いたかったんだからさ、けど俺魔法の才能ねえし」




 俺とルクスは秘密基地の中にいた。

 リュカは家で勉強中、サーニャは家の手伝いがあるとのことで来ていない。それと……ハルカは昨日の調子で彼女がよく寝床にするハンモックに姿はない。



「けど何であの悪魔、カナタには願いごと聞かなかったんだ?」


「俺が一番知りたいよ、ちょっと不公平だと思うけど」




 

 そう、俺だけ当たり前のように聞かれなかった。

 ルクスとハルカは願いごとしたんだし、未だに損した気分だ。

 しかし……このままでいいのだろうか?


 世界の在りようを変えてしまったのは俺達だ。

 やっぱり時間を戻して、ラプラスの悪魔が解放される前の時間に戻った方がいい。そう思う俺がいる。

 魔法に浮かれてるルクスには悪いけどさ。

 昨日から、俺はこんなことばかり考えていた。


 ハルカの見つけた物も気になるな。

 明日、皆に知らせるとか言ってたけど。

 


 ハルカの報告は気になるが、明日になるとその報告の時間次第ではもう時は遅い。ラプラスの悪魔が解放される前には戻れない。


「わりい、俺ちょっと出てくるわ」


「どこ行くんだ?」


「ハルカの家、聞きたいことあるし」


「じゃあハルカに言っておいてくれ。あまり考え込むなって。まっ……俺が言えた義理じゃねえが」


「分かった」


 ルクスなりに気を使ってるようだ。

 なんだかんだ言っても仲間思いなんだよなルクスのやつ。


 そう言って秘密基地を出る。



 村に戻りハルカの家へと行く。

 井戸も屋根付きだし家も2階建て。

 いい家だよな見た目からして、ウチとは大違いだよ。


 ノッカーを鳴らすと、ハルカの母親が出てくる。


「ハルカいますか?」


 微妙な表情をし、中を振り返るハルカの母。


「それがあの子ったら帰るなり、蔵書に閉じこもり調べ物してるのよ。誰が来ても通すなって、ご飯も食べないの。あの子、意固地になるとこあるから、今日はゴメンなさいね」


 そう言い玄関の扉は閉じられた。


 気になるな……いったい祠の中で何を見つけたんだハルカ。

 まあいい。もう時間を戻そう。

 いちおうルクスには声かけて、謝っとくか。


 あんなに喜んでたけど、魔法が使えない元のルクスに戻っちまうし。


 基地へと戻ろうとすると、こっちへ向かってくるルクスと会う。


「よお、どうだったハルカ?」


 どうやら基地へ来てなかった、ハルカが気になったらしい。


「家の蔵書から出てこないってさ。会えなかったよ」


「そっか……悪いな先走った俺のせいで」


「ルクスだけの責任じゃないさ。レイスに遭遇した時点で俺達は全滅してたよ、ルクスの判断のおかげで生きてるんだ俺達は」


 大きくため息を吐く吐くルクス。

 落ち込んでるみたいだ。


「そう言って貰えると助かるな。事の重大さでよ、何かしてねえと正直おちつかねえんだよ俺もさ」


「あんまり気負うなよルクス」


「ああ、わりーな。そういやハルカの持ってたアレ、ノートだよな」


「ノート? 祠の中にあったやつか?」


「チラっと見えたぜ。そっからすっげえ神妙な顔になるしよ、何書いてたんだろうな」


「悪いなルクス。何もなかった平和な昨日に戻すからさ、大丈夫だ」


 と言っても、時を戻したらにルクスは今日のことは覚えていない。

 それに魔法も使えない。

 引き替えに平和だった昨日がまた戻ってくる。

 



「はっ? お前いったい何言って……」


 瞳を閉じあの光景を頭の中で時計をイメージする。

 そして長針と短針が逆回転。


 意識の中の光景にヒビが入る。

 頭の中でカウントダウンが始った。


 11……10……9……8……7……6……5……4……3。


 ガラスのような亀裂はどんどん広がる。


 2……1……0。


 ……くる!


  完全夢想の虚空遊戯リバイバルゼロ、発動!!!



 目の前の光景はヒビ割れ、そして暗転する。

 そして、体を中心に世界が回っているような感覚に襲われ。


「くぅっ……」


 相変わらずこの感覚は気持ち悪いな。

 あれ……11秒からのカウントだったけか? 確か以前は12からだった気がする。

 まあいいか、気にするほどのことじゃない。




 そして目覚める朝。

 自分の部屋の布団から起き上がる。


 戻った。

 ふぅ……これでラプラスの悪魔は祠の中にいるままだ。

 ハルカの持ってた手紙は気になるけど、まあいい。



 ……つっ! いってぇえ……!?

 なんだこの頭が割れるような頭痛は!?


 時戻しの影響か?

 前は気持ち悪くなるだけだったのに。


 気分転換に窓を開ける。

 新鮮な空気が部屋いっぱいに広がる。

 視界の外は霞みがかった山と、のどかな草原が広がっている。


 さてハシゴ降りて、ルクスに注意するか。

 多分、祠の近くにいるだろう。

 てか、何であんなところにいたんだろうルクスのやつ。

 基地からだいぶ離れた場所だし。


「兄ちゃ~ん!」


「うわっと!?」


 妹のシャラが飛びかかってきた。

 控え目な胸を押し付けながら、俺に抱きよる。


「今日は農作業もないし遊びにいこっ!」


「ダメだダメだ。今日は重要な用事があるんだ」


「いいじゃんケチ~。最近遊んでくれるようになったのに、ノリが悪いな~」


「また、今度な」


 さて、ルクスのやつを探しに行くか。



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