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『せんせいと、ぼく。』

作者: 桜沂 遊戯

ぼくは、昔から天真爛漫で元気いっぱいなやんちゃな子供だった。

でも、ぼくが12歳の誕生日を迎えた日。

ぼくは、倒れた。救急車で近くの大きな病院に運ばれすぐに色んな検査が始まった。


その日もいつもと何ら変わりない1日になるはずだった。


ぼくの両親は共働きでぼくは鍵っ子だったためその日もいつもみたいに学校が終わり、家へ帰宅しいつも通り家事をして、洗濯物を取り込み畳んで、それをしまい宿題をして親が帰ってくるのを待った。いつもと変わらない日常。当然、両親が居ないからぼくは遊びになど行けず、時間を持て余していた。

先に帰ってきたのは母さんの方だった。

「ただいま、今晩御飯作るからね。」

母さんはそう言ってキッチンに行くと買ってきた出来合いのもの皿に乗せてレンジでチンし始めた。

ぼくに異変が起きたのはこの時あたりだったと思う。急に苦しくなってきて、ぼくは必死に酸素を欲し荒い呼吸を繰り返す。

すると母さんが僕の異変に気づき「どうしたの?苦しいの?」と背中を摩ってくれた。

母さんが背中を摩ってくれたせいか、ぼくの呼吸は徐々に安定していった。

だから、母さんもぼくもそんなに気にしなかった。

それからぼくと母さんは他愛もない話をし、ご飯を食べ再び母さんは仕事をする為、会社に戻った。

母さんが出掛けた為、ぼくも食べた食器などを片付けていた、その最中にまた胸が苦しくなり今度は頭まで痛くなってきた。ぼくは何度か荒い呼吸を繰り返しながら落ち着くのを待った。

だけど、一向に収まらなくてぼくはもがき苦しんだ。でも、それから少しして安定してきてぼくは安心した。また片付けを再開し、丁度茶碗を洗い終わった頃次は父さんが帰ってきた。

「ただいま、晩飯は食ったか?」そんな父さんの問にぼくは頷く。

父さんは「そうか、良かった。とりあえず今日はもう仕事終わったからゆっくり休めるよ。」そう言って父さんは嬉しそうに笑った。なので、ぼくも笑っておく。ニコリと微笑んだ後、ぼくは父さんに冷えたビールとコップを持っていって上げると、父さんは嬉しそうに笑い僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「とりあえず、父さん着替えて来るな?」そう言って父さんは席を外し、ぼくはまたひとりになった。時計を見ると時間はもう12時を告げる時間帯だった。

いよいよ、明日は僕の誕生日だ。

だけど、父さんも母さんも忙しくてそんなのきっと覚えてないと、ぼくはそう思っていた。でも、父さんは着替えて戻ってきた時、少し大きめの箱を後ろに隠して部屋に入ってきた。

そして、いつの間に帰ってきたのか分からないが母さんも一緒にいた。

「「○○、誕生日おめでとう!!」」

父さんと母さんがぼくに誕生日プレゼントと誕生日ケーキを買って来てくれていた。

ぼくは、忘れられてる思っていた為とても嬉しくて思わず2人に抱き着いた。

そんなぼくを、父さんと母さんは嬉しそうにぎゅっと抱きしめてくれた。

それから、ぼくと父さんと母さんはぼくの誕生日パーティをした。

ケーキを食べ、楽しんでいたその時だった。

ぼくは3度目となる苦しみに襲われた。

苦しむぼくを父さんと母さんは心配してくれたが、ぼくは平気だよと、笑って見せた。

でも、どれだけ待っても苦しみは収まらなくて。

ぼくは、倒れた。


そして、今に至る。

ぼくは、病院の消毒液臭いベッドで横になっていた。父さんと母さんは抱き合って泣いていた。

ぼくが意識を取り戻したのに気づいた母さんはすぐに、お医者さんを呼んだ。

お医者さんはぼくに聴診器を当て、心臓の音を聞いていた。

「今は安定していますが…またいつ発作が出るか分かりません。」

母さんは再び泣いた。ぼくは、母さんに泣いて欲しくなくて、必死に手を伸ばした。

「…っ、どうしたの…?」

母さんは嗚咽を漏らしながらぼくに聞く。

何も答えないぼくに母さんは顔を近づけてくれたので、ぼくはそっと母さんの涙を拭ってあげた。

すると母さんはまた、ポロポロと涙を流した。

ぼくはどうして母さんが泣いてるのか分からなかったけど、お医者さんが言った言葉でぼくは…理解した。

「○○さん、君はとても重い病気なんだ。私たちも最善は尽くすけど…救えるかどうか正直なところ

、分からない。」そう言ってお医者さんは首を振った。

それを聞いてぼくは悟った。あぁ、ぼくはもう治らないんだなって。だから、父さんも母さんも泣いてるんだなって。

だからぼくは、父さんと母さんに笑って見せた。ぼくは平気だよって意味を込めて笑って見せた。

そしたら、それが余計に父さんや母さんの不安を煽ったみたいで更に泣かれてしまった。

困った様に笑って見てると、ぼくの病室に知らない男の人が入ってきた。

「あー、目が覚めたって聞いたんで来たんですけど…その子ですか?俺が診る子って。」

そう言って入ってきたのはまだ若い…20代前後のお兄さんだった。名札には精神科医と書いてあり、ぼくは首を傾げた。なぜ、精神科の人がここにいるんだろうと。そしたらお医者さんがぼくにこういった。

「これから君は難病と闘う。いわゆる闘病生活と言うのが始まるんだ。だから、辛いこととかあったらこのお兄さんに何でも話すといいよ。」とお医者さんはぼくにそういった。

ぼくは父さんと母さんを見た。母さんもぼくにお医者さんと同じことを言った。

「母さんたちもなるべくは来れるようにするけど…きっと仕事で忙しいからあまり来れないと思うの。ごめんなさい。」そう言ってぼくを抱き締める。

ぼくは笑って母さんに抱き着いておく。本音を言えば寂しかった。ずっとそばにいて欲しかった。けど、そんなわがままをぼくは言えずに、胸の奥に押し込めて蓋をし鍵を掛けた。


精神科医の若いお兄さんは、そんなぼくを見て愉快そうに笑った。なにがおかしいのか分からず、ぼくは首を傾げる。そんなぼくを見てさらにお兄さんは笑った。

「きみ、嘘つくの上手いんだね。でも、それ…辛くないの?」そう言われてぼくは少し戸惑ったけど、分からないふりをしておいた。

するとお兄さんはさらに笑った。ぼくにとってこのお兄さんの第一位印象は、"とても失礼な人"だった。



それから暫くは、父さんと母さんがそばにいてくれた。だからぼくは安心して眠った。

次の日、目が覚めた時には父さんも母さんも居なかった。ぼくは気づいた。あぁ、仕事に行ったんだなって。

そう思いながらぼくはベッドから降りて、カーテンを開け思い切り背伸びをした。

その時腕に違和感を覚えた。見てみると幾つもの管が沢山ぶら下がっている。少しの間考えて、思い出す。これは昨日お医者さんがぼくに、「今日から点滴を付けるからね」って言っていたのを。

めんどくさいなと思いながらもその違和感の元となる点滴を引き連れ、病院内を勝手に彷徨くぼくを昨日の失礼なお兄さんが見つけ、声を掛けてきた。

「よう、おはよ。」そう言ってぼくの頭に手を置くのでその手を振り払う。

「痛ぇな。何するんだ、この。」そう言いながらも失礼なお兄さんは笑っていた。

ぼくはそんなお兄さんを無視して外に出る。

それから、病院の目の前を走る車を眺めていた。

ぼくのいる病院の目の前は大きな道路があって、病院から出てすぐのところに横断歩道がある。

よくここでは子供が跳ねられる事故が多発していて、結構危なかったりもする。そんな場所を眺めていたらお兄さんはぼくにこう言ってきた。

「なんだ、死にたいのか?もう次期…」死んじまうのに?と言いたいのだろうけど、お兄さんはそこで言葉を切った。



それから、ぼくの日々は普通に過ぎていった。

何一つ変わらない日常。ただ、違うのはぼくがいる場所はぼくの家じゃなく、病院と言うだけのこと。



そして、丁度2週間が過ぎようとしたある日のこと。

ぼくはいつもと変わらない時間帯に起床し、カーテンを開け窓の外を眺め、眠たげに目を擦った。

昨日は少し夜ふかしをしすぎたせいか、今日はまだ少し眠たかった。それでも眠たい目を擦りいつものように病院の中を散歩し外に出た。

今日は少し、どんよりしていて空模様もあまり宜しくない感じの天気だった。ぼくは、こりゃ、一雨くるかなー、なんてことを考えていたらお兄さんがぼくと全く同じことを言ったので、心を読まれたのかと思い驚いた。

「よ、おはよ。今日はどんよりした天気だよなー。こりゃ、一雨来るかもな!」そう言ってまた笑った。

ぼくは最近、このお兄さんの笑顔を見るのが好きだった。屈託なく笑い、とても楽しそうで。まるで鏡を見ているようだったから。

そんなふうに思いながら、お兄さんを見ていると急にぽつり、と頬を何かが濡らした。最初は、雨が降ってきたのだと思った。だけど、違っていた。

降ったのは、雨じゃなく…ぼくの涙だった。

ぼくは悲しくもないのに、泣いていた。

ぽろ、ぽろと、涙が頬を伝い落ちていく。

そんなぼくを見たお兄さんは、驚いた。

「ど、どうした!どっか痛いのか?大丈夫か?」不安そうな顔でぼくを見る。ぼくは首を振るとお兄さんは安心したように溜息を吐いた。

「…親が来てくれなくて、泣いてんのか?」ぼくはそう聞かれて、遠慮気味に頷いた。

するとお兄さんはぼくの頭を優しく撫でてくれた。

「泣きたい時はな、泣けばいいんだよ。みっともないとか、恥ずかしいとか気にすんな。泣きたい時に泣かないと…泣けなくなっちまうぞ。」…俺みたいな。そう言ってお兄さんは笑った。でも、その笑顔はいつもとは違った。ぼくの知ってる楽しげな笑顔じゃなく、どこか悲しげな笑顔だった。だから、ぼくはお兄さんに初めて話しかけた。

「…なんで、せんせいはそんな悲しそうな顔をして笑うの?」

お兄さん改め、せんせいは驚いた顔をしてぼくを見た。

そりゃそうだろうね、ぼくせんせいの前で話したの初めてだし。と思っていた。

「なんだ、ちゃんと喋れるんだな。」そう言って失礼なせんせいはぼくの頭をぐしゃぐしゃにしてくれた。全く嬉しくないけど。なんて、少し照れ隠ししてみた。ほんとは、すごく嬉しかった。

「…ほんと、失礼なせんせいだね。ぼくだって喋れるよ。声帯だってあるし、何の問題もないよ。」なんて皮肉を言ってみる。するとせんせいはまたいつものように笑った。

それを見てぼくは安心して、ぼくも笑ってみた。きっと不格好で上手く笑えていなかったと思う。それでもせんせいは嬉しそうに、「そうだ!もっと笑え笑え!」とまた嬉しそうに笑った。



そんな楽しい日があった、次の日。

ぼくはまた、あの発作に襲われた。最近はずっと薬のおかげで収まっていたけど、やっぱりずっとは効いてくれないみたいだった。

その日は父さんは来れなかったけど、お医者さんと母さんとせんせいが来てくれた。せんせいは心配そうに僕を見ていた。母さんはお医者さんに「お金なら幾らでも払います!だから、だからどうかこの子を助けて下さい!」ってお医者さんにお願いしてた。そんな母さんを見るのが辛くて、ぼくはまたせんせいを見た。

せんせいはそんな僕のを気持ちを分かってくれたのか、傍に来て手を握ってくれた。握ったままぼくにこう言った。

「大丈夫、俺はずっとそばにいるから。安心しな。」そう言ってくれたおかげで少し気が楽になった。

そして、ぼくはそのまま眠りについたみたいだ。

気がつくとせんせいがぼくの横で手を握ったまま寝ていたので、握られてない反対の手でせんせいの頭をなんとなく撫でてみた。

そしたらせんせいが動いたからぼくは慌てて寝た振りをした。

「…ん、なんだ。もう、朝か。」そう言ってせんせいはぼくの手を離し、カーテンを開けた。

ぼくはまるで眩しくて目が覚めた振りをし、せんせいに「おはよう」と告げると、せんせいも「おはよう」と返してくれた。

ぼくはせんせいこう聞いた。

「…母さんは?」

「ん?あぁ、君の母さんは暫くは居たんだけどな、会社から電話があって戻って行ったよ。その後、父さんの方も来てたけどその父さんもすぐ会社に戻っちまった。でも、2人とも○○のこと心配してたぞ。」と言って笑っていた。相変わらず、とてもいい笑顔で少し羨ましかった。

「せんせいは、いつも楽しそうに笑うよね。そういうの、少し羨ましい…と、思う。」なんて、ちょっと誤魔化した。まぁ、意味が無いことくらい分かってるけど。

「そりゃ、毎日楽しいからな。」そう言ってまたむかつく顔で笑った。

そうやって他愛もない話をしていたら母さんとお医者さんが入ってきた。その後に父さんも居たけど、すごく落ち込んでいるように見えた。ぼくは、ただ事ではないのだなって、雰囲気で分かったから大人しく話を聞くことにした。

「君には、ちゃんと伝えておこうと思ってね。君の親御さんともお話して決めたんだ。きっと君にとって受け止めるには大きすぎるとは思う。でも、大事な話だというのは理解して欲しい。」

ぼくは無言で頷いた。少し怖かった。…いや、嘘をつくのはやめよう。本当は、すごく怖かった。だから、なのかな。ぼくは無意識に父さんと母さんの手をぎゅっと掴んでいた。

「君はね、本当に稀な病気でね。この病気になる人はほんの一握りの人たちだけなんだ。もちろん、治療法も見つかってないし薬もない。いつ、死ぬかも…分からない。それぐらい難病なんだよ。」そう言われたぼくはもう、笑うしかなくておかしくも無いのに笑ってしまった。父さんも、母さんも驚いていた。せんせいは、辛そうにぼくを見た。

お医者さんは顔をしかめ、ぼくに言った。

「笑い事じゃなく、本当なんだよ?」

「そうよ、○○!なにが可笑しいのよ!」と母さんが泣きながら怒る。「俺達がどれだけ心配してるのか分かってるのか!」父さんもぼくに怒鳴る。

でも、ぼくだってほんとは泣きたかった。だけど、泣いたら両親に心配をかけると思った。

だから、ぼくは笑った。怒られても泣かれても、ただひたすらに笑った。涙を流してこれ以上心配をかけるくらいならば、呆れられた方がマシだと思ったから。


それから暫くぼくは笑い続けた。でも、そろそろ笑い止まないと違う意味で心配をかけると思ったから笑うのやめて、お医者さんと両親を見た。

「分かってるよ、父さん母さん。ぼくは、治らない難病になって治療薬も治療法もなく、ただ延命治療を受けて少しでも長く生きる為に頑張るんでしょ?でも、そんなのいいよ。」そう言ってぼくは首を振った。

「ぼくはこの、限りある命を大切に生きていきたい。だから、どうかぼくが死ぬまでは、ぼくのできるだけ幸せな人生を望んで欲しい。だから、父さんも母さんも心配しないで?」そう言ってぼくは微笑んで見せた。父さんも母さんもお医者さんもせんせいも、みんなそんなぼくを見て驚いていた。

ぼくは全く気にせず、「それで話は終わりですか?」と聞いた。するとお医者さんは暫く呆然としていたけど、「あぁ…まぁ、ええ。」と言った。

父さんは「こんな若くして…死を覚悟してそれでもなお俺達に心配をかけまいと笑ってくれるなんて…」って母さんと2人で泣きながら話しているのが聞こえた。

それから、お医者さんと父さん母さんは話があるからと言って病室から出ていった。



部屋に残されたぼくとせんせいは暫く無言だったけどせんせいが、突然「やっぱり、○○は普通の子より大人なんだな。」なんて呟いたので、「当然でしょ、ぼくもう中学生になったんだよ?」なんて冗談交じりに言った。



しばらくして両親とお医者さんが戻ってきて、ぼくにこう言った。

「延命治療を君が望まないのなら親御さんもそれでいいと言ってるよ。ただ、ちゃんと病院には居てもらうからね?それから、毎日決まった時間に検査するからね。親御さんもなるべく来れるようにしてくれみたいだよ。だから、病院内でしかも監視付きだけど…それでもいいなら無理のない範囲で自由にしてあげられるよ。」とお医者さんは言った。

ぼくは監視付きという言葉に反応したのを母さんはちゃんと見ていたらしく、ぼくにこういった。

「監視役として、精神科医のこの人に私たちのいない間は傍に居てもらえるように頼んだの。だから、安心しなさい。」そう言って、優しく抱き締めてくれた。なのでぼくは、頷く。

せんせいに「よろしくね。」というとせんせいは「しょーがないなぁ」と言って笑った。

母さんたちはそれからすぐにせんせいも連れて病室から出ていった。

しばらくして、ぼくは眠りについた。



次の日、ぼくはいつも通りの時間に起床し日課としてしていることをし、監視役であるせんせいとともに庭に来ていた。

ぼくは、このせんせいにならなんでも話してもいいかなと気を許してしまっていたため、その日もいろんなことをせんせいに話した。



そして、日を追うごとにぼくの身体は悪くなっていった。酷い日は1日中呼吸器を手放せない日もあれば、外で元気に遊び回れる日、痛みが酷く痛み止めを注射してもなかなか良くならない日。

それでもぼくの毎日はとても充実していた。

今まで以上に両親といる時間が増え、いっぱい笑っていっぱい泣いていっぱい話をした。



闘病生活が始まって2ヶ月がたった頃。

ぼくは、歩くのがやっとな状態になりそろそろ本当に死ぬんだなって言うのを悟った頃、せんせいにぼくの本心を、語った。



「ねえ、せんせい。ぼく、ひとつ思うことがあるんだ。」

「ん?どうした、俺で良ければ聞いてやるぞ?」

「ぼくって、なんで生まれてきたんだろうって、最近よく思うんだよね。」

「へぇ…どうして?」

「だって、こんなに両親やせんせいたちに迷惑をかけて、沢山お金だって時間だって使わせた。どうせ、そう長く持たないのに、だよ?」

「それは、違うんじゃねぇかな。少なくとも俺は○○のために使った時間を無駄だと思った事は1度もねぇよ?すごく充実して、楽しかった。きっと、○○の親御さんだって同じことを思ってるさ。」

「ぼくさ、理想の死に方ってのがあるの。」

「俺の話無視かよ。」そう言って、せんせいは笑った

「ぼくの理想の死に方はね、誰かの代わりに死ぬこと

…あの、横断歩道ってさ、よく子供が轢かれるって有名でしょ?ぼくはそんな子供を助けて、代わりに死にたいの。わかってるんだぁ、ぼく。自分の身体だからさ…もう、明日まで生きられるか分からないのくらい。だから、父さんも母さんも病室にいる。明日まで…生きられるかなぁ…。まだ、完成してないんだけどな、あれ。」うっかり呟いてしまったぼくの言葉を聞き逃さなかったせんせいは、「アレ?あれってなんだよ」と聞くので、「ぼくが死んでからの…お楽しみってことで。」と濁しておいた。まぁ、せんせいがこれを読んでる頃には、「あぁ、これのことか」ってわかるんじゃない?(笑)



これが、最後の更新かな。

じゃあ…最後に。


父さん、こんなわがままでだめなぼくを今まで育ててくれてありがとう。父さんの子供で居られてぼくは世界一の幸せ者です。これからもずっと、大好きです。


母さん、お腹を痛めて産んだ子がこんな難病になっちゃってごめんね?今沢山愛してくれてありがとう。母さんとはもっといろんなことに行きたかったです。

洋服を買いに行ったり、映画を観に行ったり。もちろん、恋の話とかもたくさんしたかったです。

母さん、これからずっと、父さんと幸せに暮らしてね?大好きです。



さいご、せんせいへ。


最初会った時はとても失礼などお兄さんだと、ぼくは思ってた。でも、せんせいと話しててとても楽しかった。両親が居なくて寂しかった日々はせんせいのおかげで、少しはまぁ…マシだったかな?(笑)

なんてね。今までありがとう。


ねぇ、せんせい。ぼくからの最後のお願い、叶えてくれないかな?

ぼくの願いはただ一つ。



ぼくは、最後どんな死を遂げたかこの日記に記して置いて欲しいんだ。ぼくの望んだ死に方で死ねた?それともやっぱり病気に負けた?ぼくはそれがとても知りたい。まあ、死んじゃうから変わんないけどね。(笑)

ということで、お願いね?



因みにね、この日記の題名は『せんせいと、ぼく』って言うんだよ。それもちゃんと書いておいてね?

これじゃ、お願い2つになっちゃうかな?ま、いいよね。

それじゃ…さようなら。




…そこで、彼女の書いた日記は終わっていた。

彼女は最後に、自分の死に方がどんなだったかを書くスペースまでちゃんと設けてくれていた。

だから、俺は彼女の願いを聞き入れ題名を書き、彼女がどんな死に方をしたのかを書き込んだ。



君の死に方は、とってもかっこよかったよ。

君は君が望む死に方で最後は死んでいでいったよ。本当に有言実行するとは思わなかったけどね。(苦笑)


君は明日が来るか分からないって言っていたけど、君が言ってた明日は来たよ。そんな明日で君は5才の男の子を救った。母親から離れ、急に飛び出した子を君は見ていたんだろうね。歩くのがやっとだった君がすごいスピードで走って行くのを見て俺は思ったよ。止めるべきだって。でも、君はそのままその子の手を引き変わりに道路に飛び出し、トラックに撥ねられた。その子供の親は喜べばいいのか悲しめば良いのか分からないといったような表情を浮かべていたよ。

君の両親は泣き叫んでたよ。帰ってきてとか、嫌だとかそんな風に、死んだ後の君には縋り付いてね。

君は、俺に言ったんだ。トラックに轢かれたあとに、「…はは、ゆうげん、じっこ、う…したよ。」

「馬鹿じゃねぇの!?お前が望んだんだろ!限りある命を生きていきたいって!…なんで、こんなこと…っ!」君は言った、「泣かないで」って。「こんなぼくのために涙を流すのは無駄だから」って。

「ぼくが死んだって、悲しむの両親とせんせいくらいだよ」なんて言って力なく笑った後、君は息を引き取った。

とっても、夕日が綺麗な日でな。君の顔がとても綺麗できっと天国に行けたんだと俺は思う。

もし、どこかでこれを一緒に見ているんなら分かるだろ?俺はちゃんと、君の願いを聞き届けたぞ。


だから、これは俺からの願いだ。

次、生まれ変わってももうこんな死に方するなよな!

それじゃ、さようなら。



これは、難病と闘う強くてとてもか弱い…そんな女の子のつけてた日記。

俺は、この子のことをずっと忘れないでいようと思う。今でもこの子の親御さんとはたまに会う。

親御さんも可愛い愛娘の唯一の形見をたまに読んでは涙するらしい。いろんな日々を思い出して。


俺達はきっと、永遠に子のことを忘れる事はないだろう。

初、投稿作となります。

グダグダ過ぎて全然わからないかも知れません。すいません。

それでもよろしければご覧頂けると、嬉しいです。

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