魔王を、討ち果たすためです 【勇者side】
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【勇者side】
それは何処にでもある授業風景だった。
「今日は......二十九日ですかぁ。二十九番、はい南風原! ここの答えは分かりますかぁ?」
「先生、南風原は今日欠席ですよ?」
間延びした独特の話し方で質問をするオカマのような男性教師に、別の生徒が今日その生徒は欠席であることを伝える。
そんな時だった。
「ちょっと詩織! あんたの下、光ってるよっ!」
「え、どうしたの灯里ちゃん......て、わっ何これ!?」
最初の異変は、詩織と呼ばれた少女の真下の床が、突如として青白く発光しだしたことだった。やがてその光は、一人、また一人と、次々に生徒の下に現れる。
担当の教師が何事かと怒鳴るなか、遂に教室にいた生徒全員にその光が行き渡り、
________次の瞬間、その教室から、実に三十一人もの生徒が忽如として姿を消した。着いていた机と椅子と共に________
教師はその様子を見、暫くの間パクパクと口を上下に開閉した後、耐えきれなくなったかの様に気を失った。
彼が隣クラスの生徒から発見されるのは、それからしばらくの後であった。
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光が治まると、そこは白一色に統一された場所だった。
前触れもなく召喚されたクラスの面々のうち何人かが、ガタリと椅子から立ち上がり、自分達の周囲を睨む。
何故ならば、そこに幾人もの人間が存在していたからだ。
暫くすると、彼らを取り囲んでいた人間たちの中から、一際美しく、そして輝いている少女が、彼らの前へと歩み出た。
「......あなたは?」
そう聞いたのは、普段このクラスのまとめ役を担っている少年、香取悠悟だ。髪を短く切り揃え、切れ長の瞳を持つ若き人格者である。
「私は、この国『ルークスキア』の第一王女で、アリスィア=ルークス=キアと申します。お呼び立てして混乱されているかと思いますが、どうか、我らが国、私達の世界をお救いくださいっ! 勇者様!!」
少女、アリスィアが発した言葉に、悠悟たちの目が点になった。情報を聞いても、脳がそれを認めないのだ。それは彼ら現代日本人にとって、ある意味当然とも言える思考だった。
だがそんな中、
(勇者、勇者だって!? じゃあやっぱりこれは勇者召喚なんだな! 俺は異世界にやってきたんだ!!!)
与えられている数少ない情報から、的確にこの状況を把握している者が、一人いた。
彼は風巻充、魔法や勇者と言ったワードが大好きな、厨二病な少年である。
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【一人称:風巻side】
突然教室が光りだしたかと思えば、俺たちは異世界にいた。周りの状況と王女様の言うことを信じれば、どうやら俺たちは勇者として召喚されたらしい。
「王女殿下、それで、私たちは何のために召喚されたのでしょうか?」
俺は念のための、小説なんかで培った精一杯の敬語で、アリスィア王女へと質問する。
「そんな、こちらから来て頂いたのです。王女殿下などと堅苦しいことを言わずに、どうぞアリスィアとお呼びください。あ、女性の方々は、アリスで結構です」
そう言って、アリスィアさんは俺達へと微笑んだ。
________ドキッ________
あ、あっぶねぇ! 危うく堕とされるところだったぜ............。
ほら、周りを見ると半分以上の男子が顔を赤らめている。こりゃ惚れたな、こいつら。
「ではアリスィアさん、改めて、俺たちは何のために呼ばれたんですか?」
「............魔王を、討ち果たすためです」
やっぱりか! 俺は内心有頂天だ。
きっとアリスィアさんは、内心断られるかもと思って少し沈黙したんだろうが、こっちからしたら寧ろ喜んでだぜ!
異世界で勇者をやるなんて、男のロマンだからなっ!
と、俺はそう思っていたが、そうじゃない連中もいたらしい。その筆頭が香取だ。奴め、俺達を元の世界に戻してくれと、アリスィアさんに頼みやがった。
だが、香取がそう頼んだ途端、アリスィアさんの顔が悲痛に歪んだ。そして、
「皆様、申し訳、ありません............皆様を元の世界に帰す方法を、私たちは知らないのです............」
『なっ!!』
これには、俺もかなり動揺した。魔王を倒したら元の世界に戻って友達に自慢しようと思っていたが、どうやら現実はそう甘くはないらしい。
その後は、ただ怒鳴り散らす者、へたりこんで泣き出す者、様々だった。ただ一つ言えるのは、俺達のうちの殆どが、その心を打ち砕かれてしまったこと。
もう二度と、元の世界に帰れない、家族と会えない......その現状は、深く重く、俺たちの心にのしかかっていた。
次回も勇者sideです、恐らく......
その次から深夜ですので、お楽しみに!
ちなみに次の深夜回はバトル回です!!