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チート・インフレーション~異世界でチートしてたらロリっ娘ハレムの主にまで成り上がっちゃいました~  作者: DragonWill
閑章~なんかチートが魔王に挑む前に終わってしまったみたいなんですけど!?~
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第三話・蒼炎のバートン

「へえ。じゃあ、ハヤトはその『チキュウ』とか言う所からやって来たのかい?」

「まあ。信じられないかもしれませんが・・・」


速人とバートンの二人は、急いで悪魔族に襲われている集団がいる場所へ向かった。


しかし、すでに遅かったようであり、あたり一面には無残にもバラバラに破壊されつくした荷馬車の残骸や襲われた人々の死骸が散らばっており、無事な物や者など何一つ無い状態であった。


まだ近くに悪魔族がいる可能性があったため、周りを警戒していた二人だが、しばらくして悪魔族が完全に去ったことを確認し、安堵の溜息をついたのである。


そして速人はこの世界のことや悪魔族のこと、魔法のことなど、いろいろ疑問に思っていたことをバートンに尋ねた。


さすがに異世界からやってきたなどと言っても信じてもらえないと思ったが、どうやら魔法や悪魔族などといった事はこの世界では子供ですら知っている常識であり、それを速人ほど年を取っている人間が今さら他人に尋ねるなど不自然極まりないことである。


どう説明すればそんな不自然な状況を説明できるのか分からなかった速人は自分の置かれた状況について素直に話すことに決めたのだ。


まあ、魔法なんてものがある世界だから異世界召喚くらい普通にあってもいいんじゃないかとも思ったが・・・。


「確かに信じられないな」

「ですよね~」


どうやらファンタジーの世界でも異世界召喚は非常識であったようだ。


「けど、そうでもないと魔法や悪魔族を知らないなんて説明がつかないな」


しかし、どうにか納得してくれたようである。


「どうして召喚されたのか心当たりはないのか?」

「心当たり?」


そう言って速人は自分の左手を、正確にはその甲に刻まれた刺青を見る。


洋の東西を問わず、今も昔も物語におけるお約束(テンプレ)として、異世界に召喚される主人公とは偶発的に選ばれたか作為的に選ばれたかを問わず、召喚される側の世界からすれば非常識な才能を持っていることが多い。


召喚された主人公はその世界の最後の希望として仲間たちと奮闘し、魔王などといった迫りくる脅威と闘って平和を取り戻すのが、まさに王道の物語(ストーリー)である。


それに対して自分はどうだろうか?


自分は何処にでもいる日本に住む一介の高校生に過ぎない。


武練に秀でているわけでもなく、軍略に優れているわけでもない。


これといって何の才能もない、何処にでもいる普通の少年である。


しかし・・・・・。


「・・・・・・・・・・」


先ほどの光景を思い出していた。


突如異形の怪物に襲われ、人があっさりと死ぬ現場に居合わせた。


しかし、無残に惨殺された死体を見ても吐き気一つ(、、、、、)催さず、自らの命を狙われても恐怖に足がすくむ(、、、、、、、、)ことさえなかった。


それどころか、いつもよりも頭は冷静に事態に対処し、体は生き残るために動いていた。


地球ですら『平和ボケ』だの『危機管理意識が甘い』だの海外から批判されまくっている日本に住んでいてである。


速人とまったく同じ状況に立たされたとして、彼と同じように対処できる者が一体どれだけいるだろうか。


もしかしたら、その才能こそが速人がこの世界に呼ばれた理由なのだろうか?


そうだとすれば、何とも嫌な才能であろうか。


「・・・・・・・・・いえ。特には思いつきません」


なんとなく、それを認めたくなくて、気が付けば、速人はバートンの問いに対して否と答えていた。


「そうか・・・」

「それよりも人のいるところを教えてくれませんか?行くあてがあるわけでもありませんがここに居るよりは安全そうなので」

「それならば、これから俺は所属するギルドがある街まで帰るとこだから、良かったら一緒に来るか?」

「いいんですか!?」

「このまま見捨てていくのも悪いしな。なにより、君には借りがある」

「?」

「実は俺は君に会うまで道に迷ってたんだ。君がここまで案内してくれたおかげで街に戻るまでの街道を見つけることができて本当に助かったよ」


その言葉にこれから人里まで案内してもらう身であるにも関わらず、多大な不安と呆れがあったのは言うまでもない。



バートンの所属しているギルドのある街まではここから徒歩で一週間は掛かるらしく、時間だけならいくらでもあったので、道中にこの世界について色々なことを教えてもらったり、逆に地球のことについて教えたりしていた。


速人がバートンから教わったものの中でも、特に興味を引いたのはやはり魔法についてである。


この世界の魔法は主に2種類存在する。


体内の魔力(オド)と呼ばれるエネルギーを消費して発動する『小魔法』と大気に満ちる精霊(マナ)を使役して発動する『大魔法』である。


一般的に『魔法』とは後者の『大魔法』を指し、その行使に必要不可欠な精霊(マナ)を一度に使役できる上限を使役容量(キャパシティー)と呼んでいる。


使役容量(キャパシティー)は生まれながらにある程度決まっていて、それは基本的に成長や老化により変化することがないらしい。


ちなみにバートンに速人の使役容量(キャパシティー)を確認してもらったが、まったくの0であると知り、魔法への憧れを抱く少年の夢を早くも砕くこととなってしまった。


「まあまあ・・・とりあえず、『小魔法』の方でいいなら教えてあげるから、元気出して」

「本当に!?」


地面に(ひざ)(てのひら)をついて・・・いわゆるorz(こんな姿勢)(うずくま)って落ち込んでいた速人にとって、バートンの言葉はまるで天啓(てんけい)ようであった。


「ああ。『大魔法』の方は適性がない奴は全く使えないが、『小魔法』に必要な魔力(オド)は誰でも持っているから使えないことはないだろう」

「教えてください!!お願いします!!」

「わ、分かったから。教えるから落ち着いて・・・」

「本当!!やったー!!」


こうして速人の魔法修行が始まったのである。






「ハヤト!!そっち行ったぞ!!」

「ふっ!!はっ!!」


速人は木の棒をバートンの持っていたナイフで削って尖らせたものを二本投擲(とうてき)した。


それはまるで矢のように飛んでいき、一本目を(かわ)した鹿の額に命中する。


鹿はそのまま崩れ落ちて動かなくなってしまった。


「やったぜ!!今日は二日ぶりの肉だ!!」


追い込み役を引き受けていたバートンが倒れた鹿を担いで持ってくる。


「しかし、『強化魔法』がたった六日でここまで上達するとはな~」


実は先ほどの投擲(とうてき)の際、速人は『小魔法』の代表格である『強化魔法』を使用していたのである。


バートンはこの間まで魔法について何も知らなかった少年がすっかり強化魔法を使いこなしていることに素直に感心していた。


確かに、『小魔法』は誰にも使えるものであり、この世界においてはむしろ使えない者を探す方が難しい話であるが、それでもほんの数日でできるものではなかったからである。


ましてや、本来ならば魔法は幼いころから訓練を重ねるものであり、速人程にまで年を取ってしまってから始めても、一般的な領域に並ぶまで相当苦労する筈なのであるが・・・。


「必要なところに必要な分だけ魔力を回せば、これくらいできるよ」

「いや、普通は無理だから!!」


しかし、それを当たり前のように、それも一般的な強化魔法をはるかに上回る精度でやってのけた速人の言葉に、思わずバートンが突っ込んでしまうのも当然のことであった。


普通の人ならば、先ほどの速人と同じように強化魔法で投擲する力を高めれば速人の倍以上の魔力を消費するうえ、速人と同じだけの力を出すことは出来なかっただろう。


この世界では魔法の影響もあって外科の技術が大して発展しておらず、当然ながら解剖学も存在しない。


従って、この世界の人々は腕の筋肉がどのようになっているかはもちろん、どのような理屈で腕が動いているかさえ分かっていないのだ。


そのため、腕に強化魔法をかけると、漠然と腕全体に魔力を供給して無駄な魔力を消費し、その結果、必要のない筋肉まで強化してしまい、大して効果が出ないのである。


しかし、現代人である速人は魔力の供給先を右腕の必要な筋肉に限定することで、最低限の魔力で投擲力を飛躍的に高めたのである。


「まあ、いいよ。俺が(さば)くからその鹿渡して」

「はいよ」


速人はたった六日ですっかりワイルド・・・もとい、たくましくなったものである。


バートンと共に旅をして森の中で食べられる植物を探したり、雨を(しの)ぐために洞窟(どうくつ)の中で野宿したり、野生動物を仕留めて解体することを覚えたのである。


一応、速人の方も、数年前に起こった大震災の影響で災害意識を持ち始めた両親の(すす)めにより、サバイバル知識はある程度は持ち合わせていたし、スマートフォンにはそのための書籍アプリやリーディング機能で保存しておいたウェブサイトが大量に入っていた。


だが、やはり普段からそういうことに慣れているバートンの方が知識に造詣(ぞうけい)が深く、速人は終始バートンから教わってばかりであった。


しかし、何も速人だけが教わってばかりだったわけではなかった。



鹿の解体が終わったころになると、すっかり日も暮れていた。


速人は、日が出ている間に鞄にぶら下げて充電していた災害用ソーラーバッテリーをスマートフォンに差し込んで充電しながら、サバイバル調理法のアプリを確認していた。


そして、いざ調理しようとした時である。


「バートン。火、お願いできる?」

「まかせな!!」


すると、バートンの指先から青白い(、、、)炎が噴き出し、鹿肉を炙り始めた。


「ちょっ!!ストップストップ!!」

「なんだ?」

「火力が強すぎるんだよ!!料理するときの火は強すぎても駄目なんだぞ!!中まで火が通る前に表面が焦げちゃうでしょう!!」

「わ、悪い!!」


この青い炎は以前までの赤い炎と比べて消費する精霊(マナ)は増えていないにも関わらず、勢いも温度もかつてとは比べものにならない程高く、今のバートンならこの間の悪魔であろうと、何の苦もなく焼き尽くすことができるだろう。


しかし、この炎は数日前のバートンでは決して出せなかった炎である。


魔法の技量と言うよりは、炎に対する認識の問題である。


21世紀の日本に生きている者であるならば、赤い色の炎は燃焼に不可欠な酸素が十分に供給されていない不完全燃焼であり、酸素が十分に供給される完全燃焼となれば、炎の色は青白くなり、より高温となることは中学校で習うような科学の基礎である。


しかし、この世界の人間はそのようなことを知るはずもなく、常識として赤い炎しか知らなかったバートンには青い炎を生み出すことは出来なかったのである。


当然ながら、この世界には原子論が存在しないため、完全燃焼や不完全燃焼についての説明や、そもそも炎とは何なのかについての説明には苦心することとなったが、速人は何とか()(くだ)きながらバートンに説明した。


驚いたことに、バートンは完全には理解してはいなかったが、『要は炎には隠された真の姿があって、炎が望むものを与えることでその真の姿を現すってことか?』と言ったファンタジー感丸出しな解釈であったにも関わらず、火の魔法でガスバーナーを再現してしまったのである。


さすがに、なんとなくでガスバーナーを再現してしまった魔法の出鱈目(デタラメ)さには開いた口が(ふさ)がらなかった速人であったが、すでに地球での常識を無視した数々の出来事に頭が麻痺(マヒ)していたのか、あるいはいちいち突っ込むのに疲れたのか、『まあ、そんなもんか』と軽く流してしまった。



簡単に調理した鹿肉を食べ終えた二人は明日のことについて話し合う。


「俺は明日街に着いたらその足でギルドに向かう。依頼完了の報告をしなくちゃいけないからな。ハヤトはどうする?」

「どうするって言われても・・・前にも言ったけど、ここに来たからって行くあてがあるわけじゃないしなぁ・・・」

「じゃあ、俺と一緒にギルドに来ないか?俺の紹介なら、面倒な手続きなくギルドに登録できるぞ?」

「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな。なにからなにまでありがとう」

「いや、いいって。道案内と魔法を鍛えてくれたお礼だよ。いろいろ面白い話も聞けたからね」


翌日になって街に着いた二人はバートンの所属する冒険者ギルドへと向かい、バートンの任務完了の報告と速人の新規登録を終えたのである。


余談だが、速人は当然この世界のお金を持っているはずもなく、バートンからお金を貸してもらい、ギルドの登録料を支払うこととなった。


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