第二話 出会い
目を覚ましてから三年の月日が過ぎた。
目を覚ました当初は何がなんだが分からず混乱してしまったが今では生活に慣れている。
最初に確認したのは二人の謎の人物である。
男の方はいきなり人を息子呼ばわりするし、女の方はそれを微笑みながら見てるしで本当に訳が分からなかった。
分からなかったのだが……
「ほら、お父様と呼びなさい! 大丈夫、怖くないから! 」
「いきなりお父様とか言える訳がないでしょう。それに殺気立ってて普通に怖いし……。無難にパパとか短い単語にしときなさい」
などというよく分からない掛け合いをしている仲の良さそうな二人を見ていたら、今まで長い間一人だったという寂しさもあり自然に自分はこの二人の子なのだと理解できた。
ちなみに俺が一番最初に発した言葉は「お母さん」である。
その結果、父は泣き崩れ母はなんでもないような態度をとろうとしていたがにやけ顔を隠せていなかった。
その後父の名が‘レイン・サニー’母の方は‘クラウディア・サニー’ということが分かった。
……うん。いいよ別に? 両親ともに天候に関わる名前なのに俺だけ‘ルイ・サニー’なのは気にしてないよ? 別に疎外感なんて感じてないよ? ただ、なんでなのかなーって疑問に思っただけだから。
……まぁ、その話はおいといて。次に思ったのはやはり自分は死んでしまったのだ、ということである。
自分の生死の前に二人のことを気にするのはおかしな話かもしれないが、それほど俺は人に飢えていたのだろう。
しかし現状を見るにただ死んだのではない、これは生まれ変わり、要するに‘転生’というやつだろう。
魔法を唱えるヒントを探るために得ていた知識には当然小説なども含まれている。
まさかこの知識が役に立つとは思わなかった……やはり修行をしていてよかった!
次に確認したのは今いるここはどこなのかである。
両親の話を聞いてるうちに分かったがここは自分が元々住んでいた世界ではないらしい。
ここは‘クローズ王国’にある‘ユシ’という町らしい
なんだよクローズ王国って、少なくとも俺は知らないぞ?
なぜか言葉が分かるから別にいいけどさ。
まぁ、もしかしたら俺が森に籠ってる間が新しくできたかのかもしれないと思ったのだが、そんなものよりもこの世界が異世界なのだという確実な証拠を見てしまったのだ。
それは……‘魔法’
唐突だが俺は表情があまり変わらない。
修行のしすぎのせいなのか、痛くても我慢をしすぎたせいなのか表情があまり変わらなくなってしまったのだ。それは喜びの感情を表すことさえも難しくさせていた。
転生したのだから表情も変えられると思ったがどうにもうまく変えられない。
……どうやら俺の修行の効果は魂にまで焼き付いているようだ。
おそらくレインはそんな俺を喜ばせたかっただけなのだろう。
「よーし、見てろよルイ! お父様の超! 超! 格好いい姿!マジでハンパネーからな! 」
「……そうゆう態度をとらなきゃ完璧なのよ? 」
「何か言ったか! 」
「いいえ。何も言ってないわ、素敵なあなた様」
ならよし! と何も分かっていないレインは返事をしつつ用意を始めた。
俺はレインがまたくだらないことをするのだろうなと思いながらも少しワクワクしながら待っていた。
……無表情で。
少し時間が経ちレインの準備が終わった。あれは……藁?
「よーし、 見てろよルイ! お父様の……」
「いいからはやくやりなさい」
「超……はい。」
レイン……そんな何回も同じこと言うから……。
先程までの元気が嘘みたいになくなってしまったレインが何かを唱えた。
「ファイアボール」
たった一言。たった一言発しただけで突然レインの前に大きな炎が現れ藁へ向かっていき一瞬で燃やし尽くしてしまった。
……は? 今何が? なんで炎が?
「……やっぱあなたって天才なのね。‘最下級呪文’であの炎ってどうゆうことなの? 」
「 ! 褒められた? もしかして、俺褒められた!? やったね! 流石俺だわマジ天才だな! なにせクラウディアが褒めてくれたんだもん! マジパネェ俺様! 」
「だからそれさえなければ完璧……あぁ、もう聞こえてないわね」
最下級‘呪文’だと? 呪文があるのか? 本当に?
俺にも使えるのか? 物語にだけ許された非常識な‘強さ’を?
「やったぜ俺ー! ……っとあんまり浮かれてばっかいられねーな。どーだ我が息子よ! 俺の超格好良い姿見てた……うおぉ! なぜ泣いてる我が息子! もしかして火当たったか!? 」
泣いている? 俺が?
「いやちゃんと私が見ていたからそれはないわ……あなたの声がうるさかったんでしょうきっと」
「そりゃねーよクラウディアさん! いつも悪いことがあったらとりあえず俺に押し付けるのいい加減やめろよな! 」
「いつもあなたが悪いからでしょうが……でもあなたがうるさいのはいつものことなのに今更泣くなんておかしいわね……どうしたのルイ? 」
レインが動揺しまくっている間、クラウディアが優しく問いかけてきたが俺にはどうしても涙を止めることはできなかった。