六翔 依頼続行
また遅れてすいません。
三連休私用があって・・・。
うまっ!ナニコレうまっ!さっきの菓子も美味しかったけど、こっちもウマイ!空っぽの胃袋に染み渡るわぁ。丸々一匹を使った鳥の丸焼きに、巨大魚の香草焼き。アツアツのミートパイと絶妙な甘みの果物をふんだんに使ったパイ。ほんのりと甘いさっぱりとしたジュースは一息入れるのには丁度いい。きっと食後にはデザートが待っているはず。というかあって欲しい。他にもたーくさん豪華な料理が所狭しと並んでいる。王様たちもまだ食事は取っていなかったようで、一緒に食べている。俺は最低限のマナーだけを守り、ガツガツと食べていく。なーんか、責めるような視線が俺に刺さってくるけど腹が減っている俺は気づきませーん(笑)。
只今食堂?にいます。あの後静寂が訪れたけど、無事食事にありつくことができた。この願いも叶えてくれるなんて王様は太っ腹ですな!
俺の周囲にある美味な食べ物たちがあらかた消えたところで、流石の俺も満腹になる。約5人前の料理が俺の胃袋の中に消えていった。はっ!もしかして胃だけはドラゴン化しているのか!?あ、違った。唯のマナの使い過ぎだった。だってなぁ、人の身で超越魔法使ったらマナ回復遅いし。唯でさえ膨大な量を使うってのに。マナの許容量が異常に多くても、全回復にはその分時間がかかる。人よりはずっと早いけれど、それでも追い付かないし休みも禄にとってないからその分余計に遅くなる。さっき寝た時に半分は回復したけれど、残り半分はこの美味しーい食べ物たちから吸収しています。食べ物にもマナはあるよ?どんな物でもね。因みにマナが多いほど美味しくなります。だから半分でも多すぎるマナを回復できたのだ。
「お粗末様でした。王様にこのようなとても美味なる食事を振舞っていただき、大変ありがたく思っております。昨日から禄に食事を取っていなかった故、より一層美味に感じました」
「う、うむ。それはよかった。よほど腹が空いていたのであろう。その食いっぷりをみてよう分かった。食後で眠いかもしれぬが、少々我の話に付き合ってはくれぬか?」
さっき寝たけどそれでも眠い。この気持ちを分かっておいて王様、お話はないぜ。せめて、短くて面白い話だといいが。校長みたいな話は止めてくれ。切に願うぐらい。
等とは頭の中ではかんがえながらも、微塵にも顔には出さない。なんか自分を隠すスキルばっか使っているな。自分を見せたのは迦楼羅だけじゃないか?不本意だけれど。
「はい、喜んで拝聴させて頂きます。しかし、王様の申された通り睡魔が襲ってきております。できる限り気を付け致しますが、もしその時はできれば無礼をお許し頂ければと。いくら王の御前といえど、自然の摂理にはあらがえられない故」
敬語難しいー。間違えてないかな、旅のものだからって許してくれるといいが。この王様は寛容そうだ。それでも周りの貴族たちがね。俺はできる限り人型で騒ぎを起こしたくないから気をつけねば。人型で、だがな。
「うむ、それぐらい許してやろうではないか。我から頼んでいる形だからな。では、シーアのことだ。我が王家、ケユクス家とシーアの家、アルキュオネ家は切っても切れぬ特別な繋がりがある。いや、これはもう祝福というべきか、呪いというべきか。ケユクス王家はアルキュオネ家から嫁もしくは婿を取らねばならないのだ。それ以外の者とすれば必ずや双方とも不幸な死が訪れる。だがそんなことはまずない。双家から生まれる子は必ずや相思相愛となるからだ。つまり、他の家の者に対しては一切の恋愛感情が生まれぬということ。だから独り身のまま、生涯を終えることもままある。だが、絶対に子が生まれないということがない。宿命とも言えるそれは、この王家を存続させている鍵なのだろう。今では独り身の者が増えて困っておるのよ。アルキュオネ家の跡取りに関しては、兄弟姉妹や甥などの遠い親戚、二人目以降の王族を嫁がせている」
へぇー。結構単純で歪な家族構成なんだな。事故とかで死んだら終りじゃん。ま、政略結婚とかなくていいんだろうけどな。王様の横でシーアが微笑んでいる。ん?てことはシーアの家って実質準王家みたいなものじゃ・・・!またシーアの地位が上がっちゃったよ。というか相思相愛なら、シーアはあのメタボ王のことを好いているってことだよな。心配して損した。でもその宿命とやらに勝手に強要されていたり?俺にとっちゃどうでもいいが。こっちの世界でも年の差婚ってあるんだね。若いモデル体型美人さんとサラリーマン風メタボオジサンカップル。
別に応援はしないよ。あれ、俺はどうしてシーアのこと美人とは思っても、好きとか特別な感情が生まれないんだろ?10人中10人は振り向くぐらいの絶世の美人だというのに。あーそういえば俺、人間は餌だー的な事言ったなあ。つまりそういうことか。だれも動物には親愛はあっても恋愛はないだろ?・・・やばい、そう考えると俺ドラゴンと結婚しなきゃいけないじゃん!いぃーやぁーだぁー!なぜか人間な俺が拒否する。ドラゴン好きなのに。俺は普通の家庭を・・・無理だ、俺不老だ。愛する者と共に老いていくことができない。相手を不老にするのも無理だ、迦楼羅クラスじゃないと。こうなったら俺一生独り身?なんて不運なんだ、迦楼羅ぁ俺を恋できるようにしてくれぇ。
王様が一息ついている間に急に悶えだす俺。それに俺が気づくのにもう少し時間が掛かりました。今は顔を真っ赤にして慌てふためいている。怪訝な顔をしてこちらを見つめる王様たち。それを誤魔化すために俺は話題を振った。
「え、えと、そうだ。なぜシーア様と王様はそんなにもお歳が離れておられるのですか?父と子ほど離れているのではないかと思うのですが」
「シーアは二人目の妻となるからじゃよ。前の妻であるメーアは病で亡くなってしもうた。シーアはメーアの妹だ。本来はアルキュオネ家を継ぐはずだったが、メーアが子を成す前に死んでしまって、な。だから今は婚約者という地位におる。いずれ時が来れば結婚するとなるだろう」
メーアさんねぇ・・・。きっと美人なんだろうな。シーアぐらい美しいはず。肖像画とかないかな。王様も悲しいだろうね。愛しき人が死んでさ。というか切り替わり早くないか?今はシーアのことを愛しているのならメーアさんはって・・・。二股!?いやそれはないだろ。死んでから愛しちゃったと思いたい。
「そうですか・・・。お悔やみ申し上げます。ですが私にこのようなことをなぜお話になるのですか?特に意味があるとは思いませんが」
「そうだな、では本題に入るとしようかの。我が頼みたいのはシーアの護衛兼補佐をしてほしい。今回のように魔物に狙われることがあるかもしれんし、将来王族になる者として信頼できる護衛が欲しいと思っていたところだ。そなたほどの腕前なら試験に落ちたとしても、こなすことはできるだろう。何よりシーアからの頼みでもあるからな。流石に人となりを知ってからになるが、大丈夫と我は見ておる。いかがかな」
なんか話がでかくなってきたな!というか王様俺を買いかぶりすぎだよ。確かに俺がいる以上シーアは絶対安全が保障されるけども。
「そう簡単に私を信じても宜しいので?こんな素浪人よりもずっと信頼できる者がおるのではないでしょうか。騙さないという保証はありませんのに」
「おぬしは我らを騙そうというのかね?ハハッ、実のところ我もこんなにもおぬしが信じることができるのかわからんのだよ。我にはおぬしが一点の汚れもなき光に煌めいているようにも見えるし、底なしの他の色がつけいる隙もない闇のようにも見える。ここまで極端で対極なマナを見たのは初めてだ。我はその濁りのなき正義に賭けたのじゃよ」
この王様、マナを見ることができるのか!?相当珍しい能力を持ってんな。マナは持ち主の属性に反応する。一般人のマナは無属性として映るが、高位な魔術師では属性が強いから見える。強いやつの属性が出るから相手の得意な属性が分かるということだ。つまり決闘向きの能力ということになる。俺は最低でも火、光、闇の属性が使えるということがばれている。一番に火が出てこないから特級魔法が使えるといこともわかるんだろうなぁ。特級魔法が三つも使えるだけで十分すぎる位有能だ。世界に片手分いればいいってところか。だから俺を引き留める手段としてこうしたんだろうな。ついでにシーアの安全はほとんど確定されたみたいなものだ。うわぁ、ちょっと目立ってるよ。あんまし注目されたくないんだけどな。計算外だったぜ。まあ、特に問題はないが。
「そういうことなら、お引き受けいたしましょう。シーア様、これからどうぞよろしくお願いいたします」
「ええ、こちらこそ。そういえば助けてもらった時はシーアと呼び捨てていましたよね。これからもそう呼んでくれないでしょうか。堅苦しいのは苦手なので。その固い口調もどうぞ素であって欲しいのですが」
この場にて初めてシーアが口を開く。お嬢様なイメージがあったのでその申し出には意外だった。
「分かりましたシーア様。しかし今は公の場ですのでご容赦ください。その時が来ればできる限り砕けた口調を意識いたしますので」
「長い話に付き合わせて悪かったな。ゆっくりと休むがよいぞ。試験は明日できるよう手配しておく。あと、こちらに来るときにいた使用人がおぬしの専属使用人だ。そいつらを好きに使うとよいぞ。おぬし用の部屋ができるまで今使っている客室を使うとよい。よい夢を見るとよいな」
やーっと戻ることができるよ。ま、そこそこ有意義な話だったからつまらなくはなかったな。食堂を退室し、先ほどのメイドに導かれて部屋に戻っていく。疲れていたから(精神的に)ふかふかなベットにダイブ。メイドたちが風呂に入ろう的なことを言っているけど、眠いと一蹴する。すぐさま心地よい闇の中へと吸い込まれていった。
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確か、俺は夢の世界に旅立ったはずだ。うん、そのはずだ。
だったら俺はなぜ、キンピカな部屋の中でまたキンピカな椅子に座っているのだろうか。
コレ、初めてここに来た時も思っていたなー。懐かしい。数日前のことなのに遠い昔のように感じる。
とりあえず目の前の男に話しかける。
「・・・迦楼羅、どうして俺はここにいるんだ」
目の前の男、迦楼羅が笑いながら答える。
「開口一番にそれはないよー。僕に会いたいとか思わないの?分かった分かったから!そんな怖い顔しないで!えーと何言おうとしたんだっけ・・・そうそう、いやーあっち行ってそうそう地位を手に入れるとか・・・ねえ?僕でもここまで早い展開には驚いたよ。僕の目には狂いがなかったことがさっそく証明されたね」
「いや、ただ流れるままに進んだだけだ。それよりもここに呼んだということは何か用があるんだろ、早く言え」
「僕、神様だよ?あの王よりずっと地位が上だよ?なのにこんな扱いなんて・・・。ハル君ヒドイっ!」
イケメンチャラ男がぶりっ子・・・。只々思うことは一つ。
「そんなことしても気持ち悪いだけなんだよッ!ンなことしてないで早く言え!」
「きゃーこわーいってもうふざけないからそんなに殺気出さないで!ハルを呼んだのはホントは意味ないんだけど・・・だからどうして帰ろうとするかな。結構傷ついたよ。ほら嫌な顔せずに椅子に座ってよ。よし、あえて話すとするなら君からの要望かな。覚えてるでしょ、恋の問題で嘆いていたの」
「そういえばそんなことを思ったりもしたな。通常に戻すことはできるのか?」
「結果だけを言えばほぼ不可能だ。理由としてはハル、君の心の問題だ。君は自分を竜として見てしまっている。人は仮の姿と考えているんだよ。今日の脳内を見ていてもその考えは透けて見えていた。しかも不老が影響している。君は自分が人じゃないことがばれるのを恐れている。そのきっかけが不老だということも分かっているからこそ、恋ができない。いや、できないんじゃなくて恐れているだけなんだよ。自分でも分かっているはずだ。君は意外に冷酷だから。臆病でもあるがね。ハルの心が、考えが変わらない限り一生独身だよー」
・・・そういうことか。確かにそういう一面はあった。でもここまで酷かったとは。こいつは俺の心を見透かす。まるで俺自身を見ているかのような気分に陥る。・・・そう感じるだけだがな。あんな奴と俺が同じなわけがない。
「ありがとうな。自分のことを知ることができたよ。だからといってここに呼んで欲しくはなかったが。なんか神経を逆なでするんだよ、お前もこの部屋も。いくら万能になった俺でも自分には勝てないんだな。たぶんこの問題は解決しない。俺の心に届く言葉がない限り。その時は来るのかな」
自虐的に呟く。俺はもう、普通には戻れない。その代償が感情の欠落というところか。戻った時こそ、俺は人として生きることができるんだろうか。まだわからない。
「よし、もうここに用はないよね。ほら、現実では朝になってメイドたちが起こしに来たよ。ちょっと時間のスピードをいじくちゃいました♪」
「なっ!おい、俺が休む時間がないじゃないか!体は寝ていれば回復するが、精神は別だ!というかここに来た時点で余計に膨れ上がったし」
「え、明日が楽しみじゃないの?折角ハルのために時を歪めたんだよ」
「迦楼羅ー!俺の心分かるだろ!休息を求めていることもわからないのか!?ぜっっったいわざとだろ!」
拝啓、王様。
良い夢どころか悪夢を見てしまいました。この悪夢から逃れるにはどうしたらいいでしょうか。
まあ、新しい自分を知ることができたのでよかったことは良かったのですが・・・。
でもそれを認めるのは少々癪です。でもどうせ覗かれてしまうんでしょうが。
次はそれが訪れないことを切実に願います。
王家の由来は活動報告にて