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かの竜は正義で、悪で  作者: dragon
全テノ始マリハココニアリ
2/8

一翔 転生申込

『かの竜は正義で、悪で』ここにて開幕!!

下手でゴメンナサイ・・・

 俺という存在はこの世界にとってはいかに矮小なんであろうか。俺など存在しなくともこの世界は何も変わらず回り続ける。俺はこの世界を回転させる小さな螺子にさえなれない、宙を漂う塵のような存在。そんな風に達観した振りをして、神の視点からこの世界を見たようなそんな感想を妄想してみる。

 考えても何一つ意味のない思考。それを分かったうえで評論家のように頭の中で語っていた。理由らしい理由もない。唯の現実逃避。


「あ、こりゃもう駄目だ。俺には勝てない強敵だ。最後の大問なだけあってちっとも歯が立たない……!」


 あと少しという訳でもなく、問題を解く糸口さえ掴めない。その所為か、いつもは言わない芝居めいたセリフが出てきた。思考も問題を解くための物ではなく、傍から見れば阿保なものだったところからして、まったくもって問題を解く気がないのが分かる。


「くそっ。どうやったら解けんだよ、まったくもって意味解らん。宿題って何、美味いのかぁ!?」


 俺は放り投げた。手に持っていたペンと共に、なけなしのやる気もどこか地の果てまで投げ飛ばした。少なくとも今日中には帰ってくることはないだろう。両手を天井に向けて思いっきり伸ばし、ずっと椅子に座っていたせいで凝った体の筋を伸ばしていく。


「ふぁぁ……。もう疲れた、脳味噌が沸騰した。というか眠い。何も考えられない」


 勉強を放り出したとたんに今まで何処にあったのかと思うほどの、自覚していなかった疲労がどっと溢れ出てきた。ということで俺は己の欲望に従い寝ることにした。丁度疲れが言い訳になるだろう。……外にはお日様がさんさんと照っていたが俺は夜型だ。思い立った日が吉日と言わんばかりに、ふらふらとした足取りで部屋の隅に畳まれていた布団を大雑把に敷き、楽な姿勢で横になる。部屋の外から俺を呼ぶ怒鳴り声が聞こえた気もしたが、無視する。


「おやすみーぃ……」


 そして数秒もしないうちに、夢の中へと沈んでいった。


******************************************************************************


 確か、俺は夢の世界に旅立ったはずだ。うん、そのはずだ。

 だったらなぜ俺はキンピカなだだっ広い部屋の中で、またキンピカだけどふかふかな椅子に座っているのだろうか。余りにもギラギラと眩しすぎて、目が痛いぐらいだ。さっきまではたんまりと在った睡眠欲がなくなっているが、目や頭が痛いからこれが夢の訳がないし、ましてや俺の願望の訳がない。これは言い切れるぞ、絶対に違う。

 とりあえず、この非常識な場所になぜ俺がいるのか。そもそもここはどういう所なのか、などと謎は尽きない。でもどこか楽観的に考えている俺がいるようで、焦りや動揺が自分の中から一切感じられない。まるで俺がもう一人いるかのような感じだ。とはいってもこのままでは駄目だということ位は分かっている。こういう時はこの状況を分かっていそうな奴に聞くのが最善の方法だと思う。ましてや目の前に俺のことを見てニコニコと笑っている奴がいると来れば話を聞かないという選択肢はない。という訳で自分の意思に従い口を開く。


「此処は一体どこで、お前は一体何者だ。俺は確か自室で寝たはずだぞ? こんな所に来た記憶はない。もし誘拐なら身代金を要求しても家には何もないぞ?」


 よくもまあ、すらすらとそんなセリフが出てきたもんだと自分に少し驚いた。それに対して俺の視線の先にいる人物は苦笑し、


「やっと僕と目を合わせてくれたか。見えていないのか少しひやひやしたよ。あと、そんなに高圧的にならなくとも質問には答えてあげるよ。まずは自己紹介……と言いたい所なんだけど、生憎僕には名前がなくてね。あえて名乗るとすると神様かな。神の頂点に君臨する最高神さ。ついでに君を呼んだのも僕で、ここは僕のプライベートルーム。一応言っておくけど、お金なんて求めてないよ? 僕が欲しいのは君そのものだからね」


 その青年はそういうと、こちらに微笑みかけてきた。気持ち悪い。神様やら最高神やらは胡散臭いが、とりあえずこいつの趣味が絶望的によろしくないことがよーく解った。つまりだ、悪趣味ってことだ、うん。だというのに、この自称神様というだけあって、絶世といって言っていいほどイケメンフェイスにイケメンボイス。もう爆発しろとか考える気が萎えるほどの完璧度だ。だが天二物を与えず、というだけあって美的感覚がもう死んでる。ざまあと思ってしまった俺は悪くない。

 とまあ、いろんな感情が篭った視線で改めてそいつを観察してみると、俺の椅子の何倍もギラギラゴテゴテとした椅子に座り、白っぽい少し長めの金髪、耳には地肌が見えないほどピアスをつけている。はっきり言ってちゃらい。チャラ過ぎる。なのにイケメン。しかし身に纏っている服は古代ローマ人が着ているようなゆったりとしたやつを身にまとっていた。しかも色は純白で、キンピカだらけの中で逆に目立っている。


「……君、僕の美的感覚が死んでいるとか思ったね! 何故なんだ、何故こんなにも美しく輝く金の素晴らしさが分からない!? 僕の部下も皆が皆悪趣味だと思っている! 僕は残念でならないよ……。確かにね、僕は神の中でも特殊な方だけどここまで酷く言われることはないんじゃないかなあ。美形だとかそんな理由で爆発しろとか、ざまあとかとか思われちゃうとか悲しすぎる……。神様は全員美形なのに、逆に僕が人間に二物を与える側なのに……。僕は神様なのに」


 自称神様がさめざめと泣いている中、俺はとても驚いていた。俺の心の中を見透かされたのだ、驚きもするだろう。色々と人間離れしたことをしているので、少しぐらいは神と認めてもいいだろう。とはいってもこんなふざけたヤツが最高神ということは絶対に信じないが。俺の中の神様像が崩れ落ちる。しかし何故そんな天上の存在である神様が俺をここに呼び寄せた? 俺にそれほどの価値があるとは到底思えない。となると何か嫌な予感しかしないが、自分であれこれ考えたところで答えが出る訳でもない。だから手っ取り早くそれを知る当事者に聞くことにした。


「おい(自称)神様。そんなことはどーでもいいから、一体俺に何のようだ。俺は神様に呼ばれるようなことは何もしてないし、するつもりもない。いくら考えても俺には見当もつかない」


 俺の疑問に神様ははっと腕に埋めていた顔を勢いよく振り上げ、仕舞ったというような表情をした。神様なんなら忘れるなよ、しかも嘘泣きだし。そして初めて会った時のようにニコニコと満面の笑みを浮かべて、まるで無垢な子供のように爆弾を放った。


「ああ、ごめんごめん。前置きなんて君にとってはいらないだろうから率直に言うね。僕の娯楽の為にちょっくら異世界に転生してくんない?」


 は?


「い、今なんていった? もう一回言ってくれないか」


「解った。何回でも言ってあげよう。僕の娯楽の為にちょっくら異世界に転生してくんない?」


「ちょっ、ちょっと待て!? 一体何の話だ? 転生!? 俺がか? 何で俺なんだ俺の意志はどこ行った、そもそもなんでお前の為なんだぁ!?」


 今までそれなりに落ち着いていた俺でもこれには流石に狼狽えた。というよりも神様だなんだといわれて何の反応もなかった俺もどうかと思うが。いや、そういう事ではなくいきなり転生だといわれて……ああ、頭の中がこんがらがってるんだ。少し深呼吸をしようか。


「すーぅ、はーぁ。すーぅ、はーぁ。よし、詳しく簡潔に俺が納得できるように説明しろ。その上で俺は拒否してやる」


「えー、それは困るよ。でも確かにちょっと言葉が足らなかったね。これから一つ一つ説明していこう。そしてそれを全部聞き終えてから身の振り方を判断してくれてかまわないよ。僕は確かに神様だけどそれを強制するほどの術を持っていないから」


 少し寂しそうにしながらも慈愛に満ちた表情で答えた。それはこいつの神様らしい初めての姿だった。……ギャップが凄くて少し顔を赤くしたのは一生の恥だ。そしてゆっくりと丁寧に転生に関する理由の経緯を教えてもらった。


 神様の話を要約すると、

1、人間だったり世界の管理だったりで、無限と言えるほどの沢山で毎日の仕事に疲れた神様は、娯楽としてだれか転生をさせ観察することにした。


2、そこで、俺の住む世界から

  『神様を楽しませる、転生を望んでいる、今の世界に未練がない』

  という条件で検索してみると、ダントツで俺が当てはまったらしいのだ。


3、転生については最低限どころか、かなりサポートしてくれるらしい。もちろん神様が楽しめるという理由だけど。



 ということらしいが、なんだか条件というのが俺的にはしっくりこない。転生はファンタジーが好きな人は誰もが夢見るだろうし、かくいう俺も例外ではない。だけどそこまで本気で願っているわけでもない。もっと狂信的な人もいるだろうし、これについては結構微妙だと思う。俺は根っこの部分では現実主義者だから、非現実的なことは好きだが本気になったことはないんだから。そして未練というところは、ないといえばない。でもそこまで自分のいる環境が嫌がっているわけでもない。敢えて言うのならば何一つ変わらない世界に嫌気が差したとか、平和な場所で生きている人間の戯言ぐらいか。となると、残りは神様の娯楽という点になるのだろうが……。


「その通り! そこだけ異常なほど高い数値を叩き出していたんだ。もちろん、残り二つも結構な高数値だったけどね。たぶん深層意識の中でそう願っていたんじゃないかな?」


 ……本人からの裏づけが取れたし、きっとそういうことなのだろう。というか、俺の台詞取られた。もし転生するなら心を読めるようにしてもらおうかな。とは言ってもそうなることは絶対にないだろうけども。そう、もしもの話なんだ。断じてに羨ましいわけではない。


「で、どうする? 行く気になった? ねえねえ、はやく!」


 子供のように急かす神様。イケメンだから似合うかもしれないが、こいつについてはちゃらさと化学反応を起こして、あり得ないほど気持ち悪くなった。そんなことを頭の隅で考えながらも転生について悩む。転生というものに割と心惹かれてはいるが、踏み切ることはできない。さっきまでの心境を考えると素直に頷くのも癪に障る。ということで今のところ5:5で均衡を保っているが、裏を返せば決断することが出来ないと言うことだ。うーん、と唸っていると止めと言わんばかりに神様が、


「んー、じゃあ本当は人知を超える力(チート)を幾つかをあげる予定だったんだけど、このままでは転生してくれなさそうだからちょっと奮発して、もっと凄い能力を君にあげよう! そうだね、何があったかなぁ。君の好みに合わせるとすると竜化(トランス ドラゴン)とかどう?」


竜化(トランス ドラゴン)。その単語だけで全てを理解することは不可能だ。しかしその単語に宿る魔力は俺の心を引き寄せてやまない。内容を聞かずとも壮大な能力だということは安易に想像できた。というかそうでなきゃ許さない。驚きが体の中を出口を求めて駆けずり回り、そして勢いよく飛び出ていった。


「と、竜化(トランス ドラゴン)!? なんだそれは、俺の心震わせる! 一体何なんだその能力は、俺に早く教えてくれっ!」


「ふふふ、凄い食いついたねえ。これは最高神である僕が君に与えられる能力の中でも、とっておき中のとっておきのものさ! 簡単に説明するとドラゴンとなることができる能力。今なら少しランクは下がるけど、僕が与えられる限りの人知を超える力を付けてなんと! 代金は僕を楽しませることだけ! 超大特価だよ。これでもう、転生しないって選択肢はなんじゃないかい?」


 なにっ! ド、ドラゴンになれるだと! 色々と想像していたがこれ程とは思ってもいなかった。俺は今日……いや、今まで生きてきた中で一番の驚愕を味わったのだ。となると俺がとるべき行動は一つしかないじゃないか。だって心のメーターが転生側に振り切ったんだもの、12:-2で超えちまったぞ! 当たり前だけど一応左側が転生ね。ドラゴンなんて男、いや人類全てのロマンだろ。そうに決まっている、異論は認めない。それに俺がなれるって……。神様の手の平で踊ることになろうがそれはあまりにも些細なことだ。という訳で、もちろん即決。



「のってやろうじゃねえか。その提案によ!」



こうして俺は、異世界に転生することになったのだ。


俺は宇宙に漂う塵から、世界の中核を担う存在になるなどと知らずに……。




やっとかけたー!

このまま続けられるといいなー。


転生とか異世界とかそこまで好きじゃないのにドラゴン大好きと言う矛盾……


8/4 大幅に改定

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