断章
「お前はなぜ強くなりたいのだ?」
そう祖父は聞いてきた。それに対して僕は、
「大事な人を護るために! その人が、悲しい思いをしないで、笑って毎日を過ごせるように。そのために、僕は強くなりたい! 誰にも負けないくらい強く!」
胸に秘めた思いの丈を、祖父に対してぶつけた。
もうあの子に悲しい思いはさせたくなかった。あの子の泣いている顔を見たくなかった。情けない僕を見せたくなかった。あの子に誇れる自分になりたかった。
そのためにも僕は強くならなきゃいけない。誰よりも強く。
「生半可な気持ちじゃあやっていけないぞ。それこそ、死ぬ気でやらなければな……。その覚悟が、お前にあるか?」
祖父の鋭い、それだけで人を殺せそうなほどに鋭い眼光に射竦められ、僕は後退りそうになった。いつも穏だった祖父が、そのときばかりは鬼か悪魔のように見えた。
けど、だけどっ! それでも僕は、
「強くなりたい!」
震える足で、いまにも逃げたしたい衝動にかられながも、それでも一歩、足を前に出して僕は祖父にそう告げた。
「ふむ……よかろう。ならばお前の覚悟、しかと見届けさせてもらおう」
そうして僕……俺の新たな生活が始まった。