断章
「あいつなにやったんだ?」
「なんでも昨日不良連中が学校に来たらしくてさぁ。その全員を病院送りにしたらしいぜ」
「俺遠くからだけどその現場見てたけど、あれはさすがに酷ぇよ」
「マジかよ? そんな危ない奴だったのか」
「あんな奴だなんて思わなかった」
「人間なにするかわかったもんじゃないな」
「俺達もいつ同じめに遭うかわかんねぇぞ」
「ったくなんであんなのと同じクラスなんだよ」
「よく平気で学校にこれるよな」
「いつも刃物とか持ち歩いてるんじゃない?」
「私達も関わんないようにしないとね」
「……」
俺は教室の一番後ろの窓際の席で、クラスメイトたちのそんな会話を聞き流していた。
一週間の停学が開け、久しぶりに学校へ来たものの、そこにもう俺の居場所はなかった。
俺は「不良達を問答無用でボコボコにし、病院送りにした危ない奴」というレッテルを貼られていた。
きっと俺が今更なにを言ったところで誰も聞く耳を持たないだろう。それどころか会話すらできないと思う。
なので俺はもう真実を話すことすら諦めていた。話したところでやっぱり避けられはするだろうし。
俺はこの変わってしまった環境の中で過ごしていくしかなかった。
世界は、ほんの些細なことで牙を剥く。それが善意の結果だとしても……