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二十五話

 俺は気配を消しつつ、真っ直ぐ入り口には向かわずに迂回してビルへと近づいた。そのままビルの側面へと移動し、そこにある窓からビルの中を確認する。

 使われていないビルなので当然電気など点いているはずもなく中は薄暗かったが、かろうじて外からの光で中の様子は確認できた。

 ビルの中は何も無く、ただ広い空間があるだけだった。人の姿も確認できない。どうやら逢の予想は杞憂だったようだ。

 そのまま視線を横へとずらしてみると、奥に扉があるのが確認できた。たぶんあの奥に上へと続く階段があるはずだ。

 窓から顔を離し、ビルの正面――入り口へと向かった。

 入り口は硝子の自動扉だったが、半開きになっていて丁度人一人が通れるようになっていた。

 人がいないのは分かっているので躊躇無く中へと入り、そのまま奥の扉へと向かった。

 扉の向こうに人の気配が無いのを確認し、なるべく音をたてないように扉を開ける。

 案の定扉の向こうは階段になっており、そのまま上へと行けるようになっていた。


(軽く偵察するつもりだったが一応もう少し見とくか……)

 そう考え、注意を払いつつ階段を上り二階へと向かった。

 二階は一階とは違い、いくつかの部屋に別れていた。

 人の気配がないのを確めつつ一部屋ずつ確認していく。

 部屋のなかにはテーブルや椅子があり、その上に食べ物や飲み物のゴミなどが散乱していた。十中八九『阿魏斗』の連中のものだろう。いくら使われていないとはいえやりたい放題だな。

 二階にあるすべての部屋を確認したがここも一階同様人の姿はなかった。


(あとは三階だけか……)

 慎重に階段のを登り、扉の前まで来た。

 そのまま扉を開けようとした寸前――扉の向こうから声がするのに気づいた。多分『阿魏斗』の奴だろう。

 俺は扉に耳を近づけて中の音を聞き取ることにした。




「しかしホントにあいつら目障りっすね。元々暁人さんの下にいたっつーのに勝手に出て行って、しかもちゃっかり自分たちの領域テリトリーまで作っちゃって」

「まぁそれもこれも全部恭さんの差し金みたいだしな」

「そう! それっすよ! そもそもなんでその人ここ抜けたんすか? 俺その辺全然知らないんすけど」

「それは――」

「あいつが俺を裏切った、それだけだ」

「暁人さん……」

 いまの声が周防暁人か。てことはやっぱりここにいるのは『阿魏斗』の幹部で間違いないということか。


「そんなくだらないことを話すためにお前らを集めたわけじゃねぇ」

「じゃあどんな用なんです? まさか俺らの顔が見たいって理由じゃないでしょうね」

「気色悪いこと言ってるとぶっ飛ばすぞ。いいから黙って聞いてろ。それとおい、そこのぶっ飛んでる馬鹿を起こせ」

「うす。……聖夜さん、暁人さんが怒ってますよ。早く戻ってきてください」

「……ひひ。なぁ~んだよりゅうちゃ~ん。俺と一緒に空飛びたいのかよ~くひ。あ~でも~高く飛びすぎるとぉ~酸素が薄くなっちゃうからぁ~気をつけないとねぇ~きひひ」

「なに言ってんですか聖夜さん、わけわかんないですよ」

「ふひ、ひひ。あ~雲はやっぱり綿飴だったんだなぁ~」

「はぁ、暁人さん駄目です。完全にイッちゃってます」

「ったく、相変わらずのハーブ中か。まぁいい、その馬鹿はほっとけ。それよりも今日お前らを集めたのは他でもない、例の作戦について話すためだ――」

 とそこで、耳をそばだてて会話を聞いていると突然ポケットの中で携帯が振動し始めた。

 取り出して見てみると逢からの着信だった。向こうで何かあったのか?

 とりあえず考えても仕方ないので電話に出ようとした時、階下から足音と声が聞こえてきた。


「ったくみんな人使いが荒いんだよなぁ。一人で六人分の買い出しとかやめてほしいぜ。あ、俺の分入れたら七人か」

 どうやら買い出しに行かされてた奴がいたみたいだ。

 俺は隠れようと咄嗟に辺りを見回したが最悪なことに隠れられるような場所が見当たらない。

 仕方なく俺は強行策に出ることにした。

 素早く下の踊り場まで移動し、上がってくるやつを待つ。


「あークソ、重いっつーんだよ」

 だんだんと足音が近づいてくる。

 五歩、四歩、三歩、二歩、一歩――


「――っ!?」

 零と同時に素早く身を晒し、上がってきた奴が驚きに声を発する前に素早くそいつの口を塞ぎ、そのまま鳩尾に二発拳を叩き込んだ。


「うっ――」

 崩れ落ち、その場に膝をついたそいつにすかさず手刀を打ち込み完全に昏倒させる。


「悪いな、お前に恨みはないがこっちも仕事なんでな」

 いつまでもここにいても仕方ないので、今気絶させた男と荷物を抱えて俺は二階の適当な部屋へと移動した。

次話21日3時に投稿します

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