十六話
逢を軽くからかった後、俺は彗華のもとへ向かった。
結局俺がどうなるかを聞きに、だ。
彗華のもとへ行くと、そこには真治と先ほど俺と勝負していた山寺もいた。
山寺は何か言いたそうな顔をしていたが結局何も言ってこなかった。
そんな山寺を真治がニヤニヤと笑って見ていた。
二人の様子を少し疑問に思ったが俺は無視して彗華に話しかけた。
「そんで? 結局俺はどうなったんだ? 入ると言う話が無くなったのなら俺は有難く帰らせてもらうが?」
俺の言葉に逢がまた何か言いたそうな顔をしていたが気にしないことにした。
「そのことだがな、どうやら山寺君も君の学生警察入りを了承してくれたようだよ」
「えっ?」
驚いて声を出したのは俺ではなく逢だった。
俺は特に反応せず、質問だけを返したの。
「どういうことだ? 俺は勝負には負けたはずだが?」
「もともとこの勝負は勝ち負けではなく君の技量を確かめるためのものだ。君の技量が高ければたとえ負けたとしてもそれは問題ではない」
「俺は一方的に負けたとしか思えなかったが……」
「それでも山寺君が君の技量を認めたのだから問題ないだろう?」
俺は山寺の方へ顔を向けた。
「ふん。別に僕は君を認めたわけじゃない。それでも僕の攻撃をあそこまで防げたことは少しばかり評価に値する」
山寺は不機嫌そうにそう言った。
全然褒められてる気がしないんだが……
「まぁ何にせよよかったじゃねぇか! これでお前も正式に学生警察の一員だ!」
真治が嬉しそうにそう言ってバシバシと肩を叩いてきた。
いてぇから……
「良かったですね先輩」
逢もそう言って微笑んできた。
「……良かったのかねぇ」
俺はまだこの面倒臭い生活が続くのだなと思って溜め息をついた。
あの後、改めて自己紹介終えた俺達は見回りに出ていた。
逢は俺の自己紹介がおきに召さなかったらしく、グチグチと文句を垂れている。
「なんですかあの自己紹介は? ふざけてるんですか?」
「いやいやどこがだよ、完璧だっただろ?」
「『俺だ、よろしく』のどこが完璧なんですか? もっと他に言うことあるでしょう」
「言いたいことを簡潔にまとめたんだよ」
「まとめ過ぎです! はぁ……まぁ今更先輩に言ったところでどうしようも無いのはわかってますけどね」
逢は溜め息をつきながら失礼なことを言っていた。
「でも良かったですね。学生警察を辞めずに済んで」
「別に俺は辞めても良かったんだが……」
「またすぐそういう……でもどうして山寺さんは先輩が学生警察に入るのを認めたんですかね? 先輩負けたのに……」
「さぁな。大方彗華になんか言われたんじゃねぇの? つかいちいち負けたことを盛り返すなよ、俺が傷ついたらどうするんだ」
「先輩がそんなので傷つくようには思えませんが」
最近俺に対して厳しくないか? 最近って言っても会ったのはついこの間だが。
だが本当のところ俺にも何でかはわからない。実際俺は山寺ってやつに無惨に負けたわけだし。
まぁ今更気にしたところでどうしようもないだろうけど。どっちにしろ入ることになっちまったんだから。
そう思うと途端に足が重くなった気がした。
「何してるんですか先輩? 早くいきますよ」
「はぁ……」
何度か往復していて気づくことがあった。
「なぁ、今日ちょっと変じゃないか?」
「先輩はいつも変ですよ」
「俺じゃねぇよ……。街の様子だよ街の。なんかやけに柄の悪い奴が多くねぇか?」
「……言われてみれば確かに……」
逢も回りの様子を見て納得したようだ。
「でも特に何か問題を起こしてるわけじゃないですし大丈夫じゃないですか?」
「まぁそうなんだが……」
どうにも嫌な感じだ。
逢の言う通り特に問題を起こしてるわけじゃない。
だが街を歩くそいつらからはどこか殺気だった雰囲気が漂っている。何かを警戒しているような……
「気にしすぎですよ。ここ二、三日は特に大きな問題も起きてないですし、もし何かあれば私達学生警察がいます。問題ないですよ」
そう言って逢はまた歩き出してしまった。
だが俺にはどうしても街の様子が気になってしまった。