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十三話

 朝食を食べた後、一息ついてから俺たちは(余裕をもって)家を出た。

 通学中は昨日と変わらず好奇の視線があったが昨日程ではなかった。その分嫉妬の視線が増えたが……。

 まぁ気にしてもしょうがないので無視して進むことにした。

 途中、昨日と同じように大和……となぜか千里までがやってきた。何気なく理由を聞いたところ……「別にいいでしょ」とのことでした。

 千里の家はここからはそこそこ離れている。わざわざこっちまで来ると逆に遠回りな気もするが、本人が別にいいと言っているので俺も特に追及はしなかった。

 その後俺達は四人で学校へ行き、昇降口で逢と別れ、自分達の教室に向かった。

 ホームルームまで時間があるので三人で雑談を交わし、担任教師が教室に入ってきたところでお開きになった。



 退屈な授業を話し半分で聞き流し、時折窓から外の風景をぼんやりと眺ていた。


 そのまま最近の自分について少し考える。


 学生警察ガードに入り、俺の力を人を護るために使ってほしいと言われたこと。その事について……

 確かに俺が強さを求めた最初の理由は、大事な人を護りたいと思ったからだった。

 だが俺の手に入れた力は、本当に護るための力なのだろうか?

 俺自身、人を護るような人間なのか?


 答えは否だろう。


 二年前のあの日。俺は自分の中の黒い感情に気づいた。

 いや、それは黒では無いかもしれない。人を殴り、蹴り、蹂躙することに快楽を感じるわけではないのだ。

 むしろ何も感じない。そう……感じないのだ。


 そこにあったのは『無』だ。


 あの時、人に暴力ちからを行使している間、何も感じず、何も考えず、ただただ人を痛めつけていた。


 すべてが終わった後、返り血で紅く染まった俺を見て誰かが言った。


「悪魔だ……」と。


 その場にいた観客の中に、争いの発端になった女の子がいた。


 彼女は俺を見て泣いていた。


 それはこの場の状況に恐怖したのか、あるいは俺自身に恐怖したのかはわからない。

 でもその時俺は思った。

 俺の力は護る為の力じゃないのだと……



「ククッ……」

 そんな俺に街を護れ? とんだお笑いぐさだ。

 俺は思わず自重の笑みを漏らした。



「夕霧! お前は授業中になにをニヤニヤしてるんだ。笑ってる暇があるなら前に出てこの問題を解け」

 笑っているところを数学教師に目敏く発見された。

 おい、いまそういうシーンじゃねぇから! 結構シリアスな場面だから!


 などと言える訳もなく、俺は仕方なく席をたった。

 クスクスと笑うクラスメイトの間を進んで黒板の前にいった。そして俺は問題を前にして悩んだ。


(まったくわかんねぇ……)

 俺には問題の意味が全く解らなかった。


「これまだ習ってなくね?」

「……今さっきやったばかりだろう」

「…………ばんなそかな」

 俺が授業を聞いてなかった間に随分進んだみたいだ。


「はぁ……もういい、席に戻れ……」

 呆れた教師に言われ、俺は自分の席へ戻った。





 自分の席につく際、さっきまでの続きで、ふとあることを思い出した。

 つい最近、俺に「ありがとう」と言った少女のことを……


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