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第捌章~敗者の務め~

第捌章~敗者の務め~


~生徒会室~

朋和は生徒会室にいた。

新生徒会長に受け渡す準備をしていたからだ。

朋和は試合に負けたら生徒会長の権限を受け渡す…そう言った。

自分でも後悔している。

それに…海人には思い出させられた。

護ること…。

自分が誰を、何を護りたいか。


~回想~


朋和には妹がいた。

生まれつき体が弱く起き上がることすらできない妹だ。

朋和は昔その妹を嫌っていた。

自分と同じ血が流れているのになぜ彼女はあんなに体が弱いそのせいで自分の名誉が落ちる。

そういったひねくれた考えを持っていた。

でも、彼女はそれに気づいているのか定かではないが必ず朋和に言ったことがある。

『Dream no small dreams for they have no power to move the hearts of men.』

彼女は生まれつき体が弱くほとんど本を読むことしかなかった。

そんな彼女が朋和に言ったのは『Dream no small dreams for they have no power to move the hearts of men.』。

意味は『小さい夢を見るな人の心を動かせないから』といったものだ。

この言葉はもとはここじゃ知られていない国の詩人で小説家が残した言葉だ。

朋和は最初どうでもよかった。

夢なんて簡単に叶うものそう思っていた。

いや、思わずにはいられなかった。

朋和は生まれつき身体能力も高く人一倍何でもできた。

練習しなくてもルールさえわかれば何でもできたしそれに失敗することがなかった。

何をしても結果は成功なのだ。

そんな自分はいつしか上に立つべきだと思った。

そう思って夏の大会までに強くなろうと朋和は決意した。

でも、それと同時に妹の様態が悪くなった。

医者の話では長くないそう言われた。

朋和はその時こう思った。

(やっと、邪魔ものがきえる)

でも、彼の考えはすぐに一変した。

それは彼女の荷物を整理していた時のこと…。

彼女の日記を見つけた。

朋和はその日記の中身を見た。

日記は特に変哲もなかった。

でも、週の初めだけ書いてあることや文字数が違かった。

そこに書いてあったのは朋和にあてての想い…だった。

その日に朋和がしたこと朋和が話したことそれを書き残していた。

それを見ていると看護婦さんが通りかかり朋和に言った。

「彼女…お兄さんが来るとすごく笑って頑張るんですよ。

 諦めていたリハビリだって頑張って耐えるんです。

 それに彼女は毎日言うんですよ…お兄ちゃんは凄いんだって…。

 自分のことのように言うんです。

 本当にいい子ですよね」

昔の朋和ならどうでもいいですんだ。

でも、今の朋和にはそれは出来なかった。

初めて失敗したと気づいた。

今まで自分が妹にあたってきた態度がどれほどひどいものだったかを…。

朋和は涙が止まらなかった。

今まで失敗したことのない朋和にはある意味一番嫌な失敗だ。

自分は何もできない。

妹すら護ることが出来ない。

いや、妹の期待に応えることができない。

それが悔しかった。

そうしたら体が勝手に動いた。

彼女を護るために治癒のことについて学んだ。

妹は日に日に体調が悪くなっていく。

朋和は籠った。

治癒の魔法を何でもいいから使えるようになりたかった。

1週間くらいだろうか…。

その日の夕方に朋和に連絡が来た。

『今夜が峠だ』

それを聞いて朋和はいてもたってもいられなかった。

走った。

病院まで、電車も使わず、車も使わず、走りながら何度も言った。

「妹を助けて」と叫ぶように言い続けた。

そして、病院についた。

あたりは真っ暗だ。

嫌な予感がした。

朋和は疲れている体を無理やり押し込め走った。

体の節々が激痛を訴える。

でも、あきらめきれなかった。

やっと、やっと気づいたのに護るものがなにか気づいたのに失うわけにはいかなかった。

病室についた。

そこにはたくさんの人がいた。

朋和はその人たちを無視して魔法を使った。

何度も、何度も、何度も、何度も。

諦めず治癒の魔法を使い続けた。

けれど彼女に異変はなかった。

苦しそうにして、本当に後がない…そう思った。

朋和はこれが最期なのは嫌だった。

何度も使った。

あきらめないで…何度も…。

朋和が気づくとベットの上だった。

朋和は走った。

妹の病室に…。

すると、そこには泣いている母と父が見えた。

朋和は何もできなかった自分を悔もうとしたとき…上から声が聞こえた。

「お兄ちゃん?どうしたの?」

朋和は嬉しくて…嬉しくて涙が止まらなかった。

声が裏返って久しぶりに泣いた。

朋和は気づくと妹と話していた。

今までのことこれからのこと。

朋和は初めて護りたいものができた。

それが嬉しかった。

なにか暖かかった。

ココロがあったかくなった気がした。

それ以来朋和は毎日通うようになった。

生徒会長の特権を利用して…。


~廊下~

朋和は海人の教室の前で覚悟をした。

もう、自分は会長じゃない。

一般生徒だと。

でも、それは二度と妹に会えないことを意味する。

妹に会うには時間が必要だ。

そのためには時間を作ることが必要なのだが一般生徒は規則で学校外に出ることを基本的に許可されない。

外に出るためには許可を取らなければいけないのだがとるためには実績も必要だし時間もかかる。

それに、多くて外出時間は3時間ほどしか取れない。

なぜなら護衛対象者がいるからだ。

一般生徒には必ずいないといけない。

ちなみに、会長はいなくてもよいことになっている。

そのため外出時間は指定はされない。

しかし、一般生徒では必ず3時間程度だ。

朋和の妹のいる病院は往復でどんなに早くても3時間半はかかる。

そのため、絶対に許可されない。

それに、朋和の妹は朋和の魔力で命を取り留めている。

つまり、一定期間魔力の補給がなければ死んでしまう。

かわりはいない。

この魔法はかなりの高等な技術が必要とされる。

これ以上の…妹をなおす魔法もあるがそれは使える人はいないと聞く。

正直打つ手なし。

今頃海人に頼んだところでいいと言われるとは思わない。

それに、約束は絶対だ。

本当に自分をくやんだ。

でも…なぜか涙は出なかった。

ドアを開けた。

まだ、教室では授業の真っ最中…。

この教室には新しい先生が着任したと聞く。

今見たところその先生はいないみたいだが教室にはもう何人かはお嬢様がいる。

普通に考えて夏の新人戦が終わってからお嬢様たちは決めるのだがたまに模擬戦でも決める人もいる。

この教室にも比較的に多くお嬢様がいるみたいだ。

そのなかで朋和は言った。

「私は、これより生徒会長の座を九十九 海人に受け渡す」

教室は静かだった。

何人か驚いた顔をしたがみんなそれぞれ思うことがあるのだろう。

いや、海人の強さをみたら普通にそう思うはずだ。

「海人君、立ってくれないか?」

朋和は自分の生徒会長の証をだした。

それと同時に海人は席をたった。

海人は無言でこちらをみていた。

「いいか?この証は大切なものだ絶対に無くさないように。

 それと、この書類は私が君に生徒会長の座を受け渡すという証だ。

 これは再発行できないから絶対に汚すなよ。

 まぁ…校長先生のほうに報告してあるから大丈夫だと思うが…」

朋和はすべてを説明し終わった後すべてを渡した。

そして、ドアに手をかけた。

「では」

そう言って朋和は教室を出ようとしたとき海人が呼び止めた。

「まて」

その行動に朋和だけではない教室のみんなが驚いていた。

もちろん、それは希海たちも一緒だ。

「てめぇーこんなの押し付けんなよ」

海人はそう言って証を投げ返し書類をびりびりに破いた。

そして言った。

「お前には護るものがあるんじゃないのか?」

そう言って朋和の肩に手を置いて言った。

「お前には何かやらないといけないことがある。

 俺と一緒だ…俺はこの地位でもできる。

 お前にはできないことだろ?

 お前にできることを頑張れよ」

海人のその言葉に驚いた朋和は言った。

「なぜ…それを?」

朋和の質問に後ろでニコニコしているやつがいた。

そいつは模擬戦の終わった後海人に質問した人。

つまり、梓乃だった。

「俺のダチに情報系に強い奴がいてな。

 そいつが全て俺にだけ話した。

 …だからよ何か手伝えることがあったら言えよ?」

朋和は泣いていた。

はじめて人に頼ることができた。

そして何より今まで自分と同じ立場で見てくれる人がいなかった。

嬉しかった。

でも、約束は約束だ。

それにこんなにいい奴が生徒会長になったらここはもっといいところになる。

朋和はなんとなくそう思った。

「でもな…約束は護らないといけないからな」

朋和がそういうと海人は笑った。

そして、言った。

「お前が俺と約束したのはお前が負けたら俺らもその妹に会わせるだろ?」

朋和は言葉を失った。

妹は友達をほしがっていた。

海人の言っていることは俺らが友達になるということだ。

嬉しすぎて朋和は涙が止まらなかった。

そして、そのあと朋和は言った。

「ありがとう…親友」

そして右手を出した。

「おう!!」

海人はそれに合わせ手をだし手の甲と手の甲を合わせた。

そして、この日同時にある計画が遂行されようとしていた…。

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