第壱拾弐章~始終 トモダチ~
第壱拾弐章~始終 トモダチ~
~???~
「で?
あいつはどうしているんだ?」
死銃は自分の銃を手入れしながら言った。
「そうだねぇ。
1つだけ言えるのわぁ……そろそろ決着がつくということだけ」
ドールはくすくす嗤っていた。
そして、不気味な人形を撫でた。
「ですが、お嬢様もしも無限の魔力所持者が死んでしまうようなことがあったら……」
執事服を着た容姿は青年霧崎 刀は心配そうな顔をした。
ドールはそれを見て嗤いながら言った。
「あはははっ、大丈夫よぉ。
彼は負けることはないわよぉ。
私にコロサレルんだから」
そう言って今度は人形を振り回した。
人形は時々表情が変わったかのように見えるときがある。
ちなみに今は憂いの目をしている。
その様子を見て刀は安心したような顔をした。
「分かりました。
では、私は何もしないでいいんですね?」
ドールは頷いた。
それを見て刀はそのまま立ち去った。
そして、死銃は自分の銃の手入れを終わらせドールに言った。
「俺は敵とみなしたらお前も狩るからな」
「じょぉーとぉー」
ドールは笑顔で答えた。
そしてドールは嗤った。
一方そのころ海人は………………。
「懺悔とツグナイの時間だ」
海人は口ではこう言っていたが内心最悪だった。
この状況は7年前の事件によく似ている。
それに、麗華もいる。
あの時麗華もいた。
7年前に状況が似すぎていた。
それは海人だけでなく浩太や励にも最悪な事件だ。
励と浩太は今こそいないが現れたらおそらくあいつに飛び掛かるだろう。
海人もそうだった。
内心あいつに飛び掛かりたかった。
でも、耐えた。
それでは昔よりひどいことになる。
7年前の事件のあと生き残ったのは海人、麗華、浩太、励の4人だ。
海人の幼馴染の両親は最初こそ一命を取り留めたが死んでしまった。
海人にとっては7年前の事件は人生の中で最大の失敗だと思っていた。
だからこそ今その事件を終わらせたかった。
昔とは違うやり方で。
だから、海人は決断した。
海人は撃った。
銃弾はまっすぐ2人を打ち抜いた。
2人は前に倒れかけた。
それと同時に励が劇場の後ろから出てきた。
そして、ファイアーボールをクルセイダーと名乗った男に放った。
『な???!!!!』
男は驚いて避けることはおろか抵抗することもできなかった。
そして数秒遅れて浩太が現れた。
「2人を護れ……エーテルバリアァァアァ」
浩太は2人が倒れないようにバリアを貼った。
おかげで2人はバランスを崩したが撃たれた以外の傷はなかった。
その行動はクルセイダーだけじゃなく周りの人間も驚愕した。
海人はクルセイダーではなく2人を撃った。
2人はまだ撃たれたところを抑えているし血だって出た。
海人はゆっくりクルセイダーに近づいた。
クルセイダーは焦っていた。
『何故だぁ……あの2人は貴様の知り合いのはずだ。
おかしい、おかしい、おかしいおかしいおかしいおかしい!!』
「おかしいのはお前の頭だ」
海人はクルセイダーの真ん前に立って言った。
「お前が7年前の様にしたいんならもっと別の方法をとるんだったな。
今の俺にはそれは意味ないぜ?」
海人はクルセイダーに銃を向けた。
『こんなはず、では、ない……のに!!!!!』
さっきまでの態度とはうってちがい完全に平常心ではなかった。
もはやなんといってるか聞き取るのが難しくなってきた。
『キサマラ、イキテカエレルトオモウナヨ』
クルセイダーはまるでいかれた人形の様だった。
そして、それを見た校長はすかさず魔法でクルセイダーを捕縛した。
「流石にお縄についてもらうよ」
そう言って校長はクルセイダーを連れて行った。
その様子をそこにいた全員が見ていた。
また、海人のやったことも見ていた。
海人はゆっくり2人に近づいた。
2人は下を向いていた。
海人は話しかけた。
「終わったぜ。
とりあえず、終演ってところかな?」
海人は自分の武器を腰にしまいそして手を広げていた。
海人はなるべく空気をよくしたかった。
しかし、2人は下を向いていた。
海人は小さくため息をついて覚悟した。
仮にも女子のしかも身内の足を打ち抜いたのだ。
これがどういう意味か海人もわからないわけではなかった。
海人は目をつぶって言った。
「すまんな」
すると、2人は立ち上がった。
海人は覚悟をした。
しかし、帰ってきた言葉はものすごく優しいものだった。
「何、謝ってるんですか?
兄さんは私たちを『護った』でしょう?」
麗華は笑っいながらそう言った。
そして、希海はこういった。
「『護る』って言って何もできない奴よりかは数倍マシよ?
それに、私たちの命は支障なし……だもんね」
2人はそう言うと海人にまっすぐな視線を向けた。
海人は数歩後ろに下がった。
「でもよ、俺は護らなくてはいけない人を傷つけた」
海人がそう言うと麗華と希海は笑った。
それは嫌な笑いとかではなく何か面白いものを見た幼児のように無邪気なものだった。
そして2人は同時に同じ言葉を言った。
「「私は大丈夫。
だって、海人が護ってくれたから……私たちはちっとも……。
傷ついてなんかいないよ?」」
その言葉は、海人に深く強く響いた。
それはあの時の様だった。
初めて親友にあった時のあの感覚に。
『おひめさまをまもるて』と言われたあの日のように。
海人は自然と泣いていた。
頬を水が伝った。
だが、それについて言うやつは誰もいなかった。
そして、この空気を浩太が壊した。
「さぁ~て、打ち上げますか!!」
それはある意味浩太の考えの良さかもしれない。
普段は空気が読めない浩太だが根っこの部分ではすげぇいい奴なのだ。
海人と励はそう思っている。
そして、海人は静かに言った。
「俺の周りにはなんでこう……いいトモダチが多いのか不思議だぜ」
その言葉を聞いて励、浩太、希海、麗華は微笑みそしてこういった。
「「「「だってさ」」」」
「海人だから」「海人だぜ」「海人だからね」「兄さんだからです」
答えにはなっていなかった。
でも、海人は嬉しかった。
そして、海人は笑った。
それは最高の笑顔だった。
【全ての終わりが今でありそして今からが始まりだ。
時は満ちた……今からが最高の劇だ】
琺瑯者は静かにそしてどこか面白そうに言った。
そしてその琺瑯者の横には1人の女の子がいた。
その子は顔は仮面でおおわれている。
髪は長く茶髪だ。
そして、琺瑯者は言った。
「さぁ、行こうか***ちゃん」
それは、海人たちにとってまたも地獄に等しいことだった。