episode1-1 ハラハヘル
翌朝のことである。
目を覚ました俺を待っていたのは信じられないようなできごとだった。
昨日セットした目覚まし時計よりも早く目が覚めてしまったらしく、俺は寝ぼけ眼のままトイレへと向かった。
いつもと同じように自分の部屋を出て階段を下りる。
長年住んでいる家だけあって、寝起きの曖昧な視界でも容易にトイレまでたどり着くことができる。
違和感は用をたそうとズボンを下ろした次の瞬間だった。
自分のモノを見て目を疑った。
・・・寝ぼけているのだろうか?
目をこすりもう一度自分のモノを確かめる。
違う!?
明らかに昨日までの自分のそれではない。
何がなんだかわからなくなった俺は洗面所へ一目散に向かった。
「・・・誰だ!?」
鏡にはそこにうつっているはずの自分の顔はなかった。
いや、
「俺だ・・・」
そう、それはまぎれもなく自分自身の顔。
ただ今よりもっと子どもの頃の・・・。
「はるー?起きたのー?」
リビングから声が聞こえる、母親の声だ。
とりあえずこのおかしな状況を母さんに説明・・・って、なんて説明すればいいんだ?
俺が説明してほしいくらいなのだが。
仕方なくそのままリビングへと向かう。
「母さ・・・」
言いかけて固まった。
若い。
母さんが若返っていた、10歳くらい。
『ある朝起きたら母親が若返ってました!』
えっ?これなんて怖い話?
ということは、俺も10歳ほど若返ったってことか!?
むしろここが10年前だとすれば説明がつく。
・・・いや、つくわけがない。
そんなオカルトあってたまるか。
「なーに口開けたまま固まってるの?早くご飯食べないとソラちゃん来ちゃうよ」
そう促されるままに食卓につく。
こんな状況でも腹は減るのだから不思議でならない。