第四幕:獅子の巣と黄泉の道
やあ、君。そこには闇が待ち構えていた。ギルガメッシュはシャムハトと共に獅子の巣に潜り込んだ。
屈んで、ほぼ這うようにしてね。
ここを襲われでもしたら、ギルガメッシュがいくら強くても、
抵抗しきれなかったろう。
シャムハトは穴に怯えて、
彼の腕を強く掴んでた。
まるで彼の腕の一部だった。
第三幕では、試練を乗り越え続ける二人の様子を見た。こんなの、ボクなら神さま頼りなんだけど、ギルガメッシュは、自分の力で乗り切って行く。
詩を覚えているかい?
獅子の巣がある。
この先には黄泉の道
迷宮のごとき闇の道だ
闇の中での生き物
囁きに沈黙をもって応えよ
語ることは迷う道だ
この暗闇の先には黄泉の道があった。
外とは違い、
陽の光さえ届かない。
闇の中の闇だ。
ボクらの目は一切役立たない。
闇の中に音として反響した。
囁き声は、跳ね返り、前よりも大きな声で戻ってきた。
どの道が正解なのか、
ボクには分からない。
何が待ち構えているかもね。
もしもギルガメッシュが、
ちゃんとした道を、
見つけられなかったら?
その時は、君、四つん這いになって
手探りしながら出口を探そうぜ。
おやーーシャムハトが喋っている。
「聞こえる...聞こえる。エンキドゥが呼んでる...」とギルガメッシュに呼びかけていた。
「......」と、詩の中で沈黙しろと言ってるから、彼はシャムハトに返事をしない。
彼女の不安は、もう限界だった。
ーー彼の腕から身体を離すと、
両手で彼を打ち始めた。
何度も、何度もさ。
狂気は高まり、
彼女を別の生き物にかえた!
喘ぎながら、彼に平手打ちをした。
やがて疲れて、高笑いをしたかと思うとかけだした。
闇の中で、彼女の笑い声が反響して、そこに道ができていった。
子鹿が細い足で、道を跳ぶように進む。
狂った頭の方が、きっと考えるよりも、闇の中では都合が良かったんだ。
彼は彼女を捕まえようとした。
だけど、虚空を掴むだけだった。
彼は本気でシャムハトを殺そうかと考えた。
だけど、今の彼はエンキドゥだ。
ーー優しくするべきだった。
彼女が不安なら、
ーー抱きしめ返すべきだった。
彼は不老不死になりたい。
詩は本物だ。
獅子の巣がある。
黄泉の道に違いない。
彼に課せられた試練は本物だ。
彼はもう死に怯えることはない。
「エンキドゥ!そこにいるのね!」
彼女が叫んだ。遠ざかっていく。
彼の知性も叫ぶ。
『ーーたかが、女だ、放っておけ!』
ーーギルガメッシュは、口を開いた。
「行くな、シャムハト!
ーーボクはここだ!」
彼の叫びは闇をも切りさく。
闇に響く声と共に、ギルガメッシュは、いやエンキドゥは、走った。
ただ、彼女を追った!
尖った岩壁に、皮膚を切られても構わずに、手足を振って追いかけた。
足音めがけて走った。
今までの苦労なんて考えず、
彼はシャムハトを追いかけていく。
闇の奥に青白い光があった。
優しい光が、彼を待っていた。
少なくとも、彼はそう思った。
光の先には、ほのかな光の輪郭をまとった裸のエンキドゥが、シャムハトに抱きしめられていた。
彼は薄笑いを浮かべて、ギルガメッシュを見ていた。
(こうして、第四幕はエンキドゥと共に幕を閉じる)




